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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第八話 西の血

「今日、久しぶりに一緒にお昼行かない?」


 珍しく、アメリアの方から、そう誘ってきた。


「あら、あんたから誘うなんて、明日は槍でも降るのかしら」


「降らないわよ、別に」


 あたしたちは、近くの食堂で、向かい合って座った。


「私、これにするわ。野菜多めのやつ」


 アメリアは、メニューを見て、迷わずそう決めた。


「あたしは、この肉たっぷりのがっつり系にするわ」


「美容のこと、あんまり考えてないのね」


「食べたいものを食べて何が悪いの」


「まあ、それもヴィクトリアらしいけど」



 料理を待つ間、アメリアが、ふと思い出したように言った。


「そういえば、ヴィクトリアって、出身どこなんだっけ」


「西の方よ。ちょっと田舎の」


「西かあ。なんか、納得するわね」


「何が」


「その、すぐボケたり、突っ込んだりするところ」


「あー、それはあるかもね。うちの地元、お笑いの本場みたいなとこあるから」


「本場なの?」


「本場よ。子供の頃から、会話の中でボケを入れない人間は、逆に薄情だと思われる土地柄なの」


「薄情って、大げさじゃない」


「大げさではないわ。挨拶の延長線上に、ボケが存在してるの」


 アメリアは、少し呆れたように笑った。


「西の人って、会話にボケ入れないと気が済まないの?」


「気が済まないというか、入れないと死ぬわ」


「死ぬは大げさでしょ」


「大げさじゃないの。呼吸みたいなものだから」



 料理が運ばれてくると、アメリアは、あたしの皿を見て、少し眉を上げた。


「本当に、こってりしたのにしたのね」


「言ったでしょ、食べたいものを食べるって」


 運ばれてきた肉料理を前に、あたしは目を輝かせた。分厚い肉が、皿からはみ出さんばかりに盛られている。


「見なさいよ、この肉。まるで、女優の抑制なんて知らんとばかりに主張してくる感じ」


「主張しすぎでしょ、その肉」


「主張するくらいがちょうどいいの。控えめな肉なんて、肉じゃないわ」


「野菜にも失礼な理論ね、それ」


「あたしにとっては、野菜は前菜、肉こそが本編なの」


「そんなに肉ばっかり食べてるから、胸もそんなに主張してくるのね」


「誰が乳牛じゃ!」


 アメリアが、思わずといった様子で笑い出した。


「何笑とんねん」


「その優先順位、女優としてどうなのよ」


「美容より、目の前の飯」


「女優である前に、人間だから」


「それ、なんかいい感じにまとめたつもりでしょ」


「バレた?」


 あたしたちは、そのまま、特にオチもなく、食事を続けた。


 こういう時、無理に締めのボケを入れないところも、アメリアと一緒にいる時の、数少ない気楽さだった。

「西の人は会話の中にボケを入れる」のくだりは、私の知り合いの関西人女性がそう言っていたので、おそらくそういう文化の地域が日本にもあるのでしょう。

偏見ではございません。

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