第六十三話 みんな集合
「今日は、久しぶりに、みんなでゆっくり過ごそうと思って」
あたしは、稽古場に、いつもより豪華な差し入れを用意して、そう宣言した。
「珍しいですね、こんなの用意するの」
ノエルが、驚いた様子で、そう言った。
「たまには、これくらいの余裕、見せたいやんか」
「その差し入れ代、大丈夫なんですか」
ミアが、冷静に、財布事情を心配してきた。
「そこは、聞かんとこ」
「聞かないと不安になるやつです、それ」
*
しばらくすると、セレナも、顔を出してくれた。
「お邪魔しますわ」
「よう来てくれたな」
「せっかくのお誘いですし」
「差し入れ目当てとちゃうんか」
「それも、否定しませんわ、ホホホ」
*
「今日は、色々な話しよか」
あたしが、そう言うと、バロウと、ガスも、その場に加わった。
「主要な面子が、こうやって揃うのも、久しぶりだな」
バロウが、そう呟いた。
「これまで、色々あったからな。一度、こうやって、みんなで振り返るのも、悪くないやろ」
「悪くないな」
ガスも、珍しく、素直に、そう頷いた。
「ガスさんまで素直になると、逆に不気味です」
ミアが、そう突っ込んだ。
「お前が言うか」
「私は元から素直です」
「今の返し自体が、一番不気味だぞ」
*
「振り返ると、本当に色々あったわね」
アメリアが、そう言うと、みんなが、それぞれの思い出を、口々に語り始めた。
「私は、初めて舞台に立った時のことが、一番印象深いです」
ミアが、少し照れくさそうに、そう言った。
「あの時、あんた、めっちゃ緊張しとったな」
「今更、言わなくていいです」
「今更やからこそ、言うんよ」
「その理論、いつも都合よすぎませんか」
*
「私は、ヴィクトリアさんの舞台を初めて観た時のことです」
ノエルが、そう言うと、あたしは、少し照れくさくなった。
「あの時から、もう、随分経ったな」
「本当に。あの時のヴィクトリアさんも、今のヴィクトリアさんも、変わらず素敵です」
「素直に言われると、なんか、こそばゆいわ」
「素敵っていうか、変わらず騒がしい、って意味だと思いますけど」
ミアが、すかさず、そう補足した。
「なんで補足するんよ、余計なことを!」
*
「私は、初めてここに来た時のことね」
アメリアが、そう切り出した。
「前の劇団で、ボロボロになってた頃に、あなたがいきなり例えツッコミしてきて」
「あー、あん時な」
「正直、最初は、なんて劇団に来たんだろうって、少し後悔したわ」
「今、初めて聞いたわ、それ!」
「でも、すぐに、ここでよかったって思えた」
「もっと早く言うてくれ、その台詞!」
「今更やからこそ、言うのよ」
「今、あたしの理論、逆に使われたやんか!」
その様子に、稽古場に、笑いが起きた。
*
「私は、あなたが初めて、うちの稽古場を使ってくれた時のことですわ」
セレナが、そう言うと、あたしは、少し思い出し笑いをした。
「あん時は、まさか、こんな関係になるとは思わへんかったわ」
「私も、そうですわ」
二人で、しばらく、その頃の話に、花を咲かせた。
*
「まあ、色々あったけど」
あたしは、その場にいる全員を、あらためて見渡しながら、そう呟いた。
「こうやって、みんなで集まれるのが、一番、幸せなことなんかもしれんな」
「急に、しんみりしたこと言いますね」
ミアが、そう突っ込んだ。
「しんみりしたついでに、もう一言、ええか」
「なんですか」
「これからも、よろしゅう頼むわ、みんな」
「もちろんです!」
ノエルが、真っ先に、元気よくそう返した。
「差し入れ、次はもっと豪華にしてくださいね」
ミアが、すかさず、そう付け加えた。
「厚意を金額で測るなや!」
その一言に、稽古場が、また、賑やかな笑いに包まれた。
あたしたちの、賑やかな一日は、まだ、しばらく続いていくのだった。




