第六十二話 首都からの手紙
「ヴィクトリア、また手紙来てるぞ」
バロウが、一通の手紙を、あたしに手渡した。
「今度は何や」
「差出人、これ確か、首都の劇団じゃないか」
「え!?」
あたしは、思わず、手紙を、勢いよく開けた。
*
『拝啓 ヴィクトリア様。記事を拝見し、大変興味を持ちました。今後、機会があれば、劇団の様子を伺いたく存じます』
「……これ、どういう意味や」
「様子を伺いたい、ってだけで、具体的な話は、何もないわね」
アメリアが、冷静に、その内容を分析した。
「せやんな……なんか、期待させて、あっさり終わる文章やわ」
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「まあ、それでも、首都の人が興味持ってくれたのは、事実やろ」
あたしは、少し複雑な気持ちを抱えながら、そう呟いた。
「一歩前進、ってことじゃないですか」
ノエルが、そう励ましてくれた。
「せやな。焦らんとこ」
「その落ち着き方、前と比べて、成長感じます」
ノエルが、そう、感心したように言った。
「今、素直に褒めてくれたな」
「あ、いえ、そんなつもりじゃ……でも、本当にそう思ったので!」
「よけい照れるやんか、その慌て方」
*
「以前のあたしやったら、これだけで、大喜びして、翌日には現実に打ちのめされとったやろな」
あたしは、自分の変化を、少し振り返った。
「その自己分析、正しいと思うわ」
アメリアが、あっさりと同意した。
「同意するの早すぎるやろ!」
「否定できる要素、特になかったから」
*
「まあ、この手紙は、そのまま、ありがたく受け取っておくとするわ」
あたしは、その手紙を、丁寧に折りたたんだ。
「次に繋がるかどうかは、また、その時の話やな」
「気負わなくなりましたね、本当に」
「気負ったところで、結果が変わるわけやないしな」
その言葉に、みんなが、少し驚いた顔をした。
「なんか、今日のヴィクトリアさん、いつもよりちょっと大人っぽいです」
ノエルが、そう言うと、あたしは、途端に、いつもの調子に戻った。
「せやろ! あたしは、いつでも大人の女やからな!」
「今の一言で、台無しになりましたね」
ミアが、冷静に、そう突っ込んだ。
稽古場に、また、いつも通りの笑いが起きた。
首都からの手紙は、まだ、何かを確約するものではなかった。だが、それでも、あたしは、今の自分の在り方に、以前ほどの焦りを感じなくなっていることに、気づいていた。




