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自称・看板女優の私、ヤジには関西弁でツッコミ、SNSでは毎日コメント欄で漫才。女優のはずが芸人枠でした ~名前の意味は「勝利」~  作者: 中原九尾


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第五十八話 金翼座からの招待状

「あんたに、正式な話があるんやけど」


 セレナが、珍しく、改まった様子で、あたしの前に立った。


「なんや、そんな深刻な顔して」


「今度の金翼座の新作、あなたに、客演で出てほしいんですの」


「……は?」


 あたしは、思わず、二度、聞き返した。


「あんたのとこから? あたしに?」


「ええ。真面目な話ですわ」


*


「なんでや。あんたのとこ、格式高い劇団やろ。あたしみたいなんが出て、大丈夫なんか」


「フェスでの反応、見て、確信しましたのよ。あなたの空気、うちの劇団に、新しい風を入れてくれると思って」


「新しい風て、あたし、竜巻レベルの風やと思うけどな」


「竜巻でも、たまには必要な時がありますわ、ホホホ」


*


 その話を、稽古場に戻って、みんなに報告した。


「金フクから、正式に客演の誘いが来たんよ!」


「え、あのセレナさんからですか!」


 ノエルが、驚いた様子で、そう声を上げた。


「あんたも、いい加減、セレナさんて呼ぶの慣れてきたな」


「本人には、さすがに金フクとは呼べないので」


*


「あの劇団、格式高いんでしょ。大丈夫なの、あなた」


 アメリアが、少し心配そうに、そう尋ねてきた。


「分からんけど、セレナが呼んでくれたんやから、応えたいわ」


「その意気込み、いいと思うわ。でも、失敗したら、それはそれで、記事のネタになりそうね」


「なんで、もう失敗前提なんよ!」


*


「私が、衣装、もう一度チェックしましょうか」


 ミアが、そう申し出てきた。


「金翼座の舞台、格式高いですし。ボタン取れる、とかは、絶対避けたいですよね」


「頼むわ、ミア。あんたの裁縫技術、もうすっかり劇団の必需品やな」


「そんなに頼りにしなくていいです」


「今更、遠慮されても困るんよ」


*


 客演当日、あたしは、金翼座の稽古場で、初めて、その劇団員たちと、正式に稽古を共にした。


「よろしくお願いします」


 あたしが、少し緊張した様子で、そう頭を下げると、金翼座の劇団員たちが、意外にも、温かく迎えてくれた。


「セレナさんから、色々聞いてます。楽しみにしてました」


「あの、あたし、いつもの調子で大丈夫なんか?」


「もちろんです。むしろ、それが観たくて」


 その言葉に、あたしは、少しだけ、肩の力が抜けた気がした。


*


 稽古の合間、セレナが、あたしに、そっと近づいてきた。


「緊張してますの?」


「まあ、少しはな」


「大丈夫。あなたらしくやれば、それでいいんですわ」


「あんたに言われると、なんか、説得力あるな」


「当然ですわ。誰よりも、あなたの舞台を見てきましたもの」


 その一言に、あたしは、少し、胸が熱くなるのを感じた。


「あんた、ホホホ言わへんかったな、今」


「あら、失礼、ホホホ」


「今更取り繕っても遅いで」


 あたしたちは、そのやり取りに、揃って笑った。


 こうして、あたしは、金翼座の舞台に、正式に立たせてもらうことになった。

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