第五十八話 金翼座からの招待状
「あんたに、正式な話があるんやけど」
セレナが、珍しく、改まった様子で、あたしの前に立った。
「なんや、そんな深刻な顔して」
「今度の金翼座の新作、あなたに、客演で出てほしいんですの」
「……は?」
あたしは、思わず、二度、聞き返した。
「あんたのとこから? あたしに?」
「ええ。真面目な話ですわ」
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「なんでや。あんたのとこ、格式高い劇団やろ。あたしみたいなんが出て、大丈夫なんか」
「フェスでの反応、見て、確信しましたのよ。あなたの空気、うちの劇団に、新しい風を入れてくれると思って」
「新しい風て、あたし、竜巻レベルの風やと思うけどな」
「竜巻でも、たまには必要な時がありますわ、ホホホ」
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その話を、稽古場に戻って、みんなに報告した。
「金フクから、正式に客演の誘いが来たんよ!」
「え、あのセレナさんからですか!」
ノエルが、驚いた様子で、そう声を上げた。
「あんたも、いい加減、セレナさんて呼ぶの慣れてきたな」
「本人には、さすがに金フクとは呼べないので」
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「あの劇団、格式高いんでしょ。大丈夫なの、あなた」
アメリアが、少し心配そうに、そう尋ねてきた。
「分からんけど、セレナが呼んでくれたんやから、応えたいわ」
「その意気込み、いいと思うわ。でも、失敗したら、それはそれで、記事のネタになりそうね」
「なんで、もう失敗前提なんよ!」
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「私が、衣装、もう一度チェックしましょうか」
ミアが、そう申し出てきた。
「金翼座の舞台、格式高いですし。ボタン取れる、とかは、絶対避けたいですよね」
「頼むわ、ミア。あんたの裁縫技術、もうすっかり劇団の必需品やな」
「そんなに頼りにしなくていいです」
「今更、遠慮されても困るんよ」
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客演当日、あたしは、金翼座の稽古場で、初めて、その劇団員たちと、正式に稽古を共にした。
「よろしくお願いします」
あたしが、少し緊張した様子で、そう頭を下げると、金翼座の劇団員たちが、意外にも、温かく迎えてくれた。
「セレナさんから、色々聞いてます。楽しみにしてました」
「あの、あたし、いつもの調子で大丈夫なんか?」
「もちろんです。むしろ、それが観たくて」
その言葉に、あたしは、少しだけ、肩の力が抜けた気がした。
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稽古の合間、セレナが、あたしに、そっと近づいてきた。
「緊張してますの?」
「まあ、少しはな」
「大丈夫。あなたらしくやれば、それでいいんですわ」
「あんたに言われると、なんか、説得力あるな」
「当然ですわ。誰よりも、あなたの舞台を見てきましたもの」
その一言に、あたしは、少し、胸が熱くなるのを感じた。
「あんた、ホホホ言わへんかったな、今」
「あら、失礼、ホホホ」
「今更取り繕っても遅いで」
あたしたちは、そのやり取りに、揃って笑った。
こうして、あたしは、金翼座の舞台に、正式に立たせてもらうことになった。




