↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称・看板女優の私、ヤジには関西弁でツッコミ、SNSでは毎日コメント欄で漫才。女優のはずが芸人枠でした ~名前の意味は「勝利」~  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/65

第五十六話 フェス、開幕

 舞台袖から見える客席は、これまでのどの興行よりも、はるかに広く、埋まっていた。


「すごい人数やな……」


 あたしは、思わず、声を漏らした。


「他の劇団のファンも、大勢来てるみたいですね」


 ノエルが、同じく客席を見ながら、そう言った。


*


 最初の出番は、金翼座だった。セレナが、堂々とした立ち振る舞いで、舞台に立つ。


「さすが、あの落ち着き」


 あたしは、その姿を、袖から見守った。演技は、いつも通り、洗練されていて、客席からは、大きな拍手が送られていた。


 舞台袖に戻ってきたセレナが、あたしに気づいて、小さく笑いかけてきた。


「見てましたの?」


「ばっちり見せてもらったわ。さすがやな」


「あなたたちも、頑張ってらっしゃいな」


「言われんでも、やってやるわ」


*


 そして、いよいよ、銀月座の出番が回ってきた。


「よし、いくで、みんな」


「はい!」


 全員の声が、揃って響いた。


 舞台に出た瞬間、あたしは、これまでで一番の緊張を感じた。だが、同時に、これまでの積み重ねてきた自信も、確かにあった。


*


「愛とは、かくも残酷なものね……」


 声は、今日は、しっかりと出ていた。蜂蜜の効果か、あるいは、緊張が、逆に集中力を高めたのかもしれない。


「セリフ噛んでるぞー!」


 客席から、いつものヤジが飛んできた。今日は、銀月座の常連ではなく、他の劇団を見に来た客のようだった。


「噛んでへんわ!誰がやねん!」


 その切り返しに、客席が、どっと沸いた。初めて見る客層にも、いつもの空気が、しっかり伝わっているようだった。


*


 ノエルの感動シーンは、結局、練り直された通り、コメディ寄りの内容になっていた。その一生懸命さが、逆に、客席の笑いを誘っていた。


「泣かせるはずやったのに、笑わせとるやんか」


「これでも、いいと思います!」


 舞台上で、そんな軽いやり取りが交わされ、また、客席が沸いた。


*


 ミアが手がけた舞台美術も、多くの客の目を引いていたようだった。


「あの背景、綺麗ですね」


 そんな声が、あちこちから聞こえてくる。


 舞台袖で、その反応を聞いていたミアは、少しだけ、誇らしげな顔をしていた。


*


 三十分の持ち時間は、あっという間に過ぎていった。最後のシーンで、あたしは、締めの一言を、客席に向けて放った。


「今日は、来てくれて、ほんまにありがとう! 銀月座、これからも、どうぞよろしゅう!」


 その一言に、客席から、これまでで一番の拍手が送られた。


*


 舞台袖に戻ると、劇団員全員が、汗だくの顔で、笑い合っていた。


「やり切ったな、みんな」


「やり切りましたね!」


「私の背景、ちゃんと見てもらえました」


「ミアの絵、めっちゃ評判よかったで」


「べ、別に、それが目的じゃなかったですけど」


 その言葉に、みんなが、揃って笑った。


 こうして、銀月座のフェス出演は、これまでの積み重ねを存分に見せつける形で、幕を閉じることになった。


 だが、この日の反響が、思わぬ形で、この先の展開に繋がっていくことを、この時のあたしは、まだ知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。