↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称・看板女優の私、ヤジには関西弁でツッコミ、SNSでは毎日コメント欄で漫才。女優のはずが芸人枠でした ~名前の意味は「勝利」~  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/65

第五十二話 見せ場、争奪戦

「脚本、練り直してきたわ」


 アメリアが、そう言って、稽古場に、新しい台本を配った。


「見せてもらうわ」


 あたしは、早速、台本に目を通した。そして、すぐに、一つの違和感に気づいた。


「あたしの見せ場、ここだけ?」


「バランス考えたら、それくらいが適正よ」


「三十分中、あたしのセリフ、五個しかないやんか!」


*


「もっと、あたしのシーン増やしてほしいんやけど」


「増やしたら、他の人の見せ場が減るでしょ」


「それは、まあ、そうやけど」


「あなた、フェスの主旨、忘れてない? 劇団全体のバランスを見せる場よ」


「分かってるけど、あたしの本能が、増やしてほしいって叫んでるんよ」


「本能に台本変える権限、ないから」


*


「私も、意見あります!」


 ノエルが、勢いよく、手を挙げた。


「私のシーン、もっと感動的にしてほしいです! 客席、泣かせたいです!」


「うちの劇団、そもそも泣かせる方向性で成功したことないやろ」


「今回こそ、いけると思うんです!」


「その自信、どこから来るんや」


「勘です!」


「勘て!」


*


「私は、特に主張ないです」


 ミアが、そう、あっさりと言った。


「ミア、あんたは、もっと自分の見せ場、主張してもええんやで」


「別に、目立ちたいわけじゃないので」


「そういうとこも、あんたらしいわな」


「らしいって、何ですか」


「地味に、いつも冷静なとこ」


「地味は余計です」


*


「まあ、みんな、それぞれ言いたいことあるみたいだけど」


 アメリアが、少し呆れたように、そう言った。


「結局、私が全部聞いて、うまくまとめるしかないんでしょうね」


「頼りにしてるわ、アメリア」


「頼りにしてるにしても、もう少し自分たちで折れる努力してほしいんだけど」


*


 結局、その日の会議は、あたしの見せ場を、当初より少しだけ増やし、ノエルの感動シーンを、コメディに寄せる形で落ち着かせることになった。


「これで、みんな、納得や」


「納得したのは、あなただけな気もするけど」


「細かいこと気にすなや」


「気にしないと、また同じことの繰り返しになるでしょ」


 アメリアの、その正論に、あたしは、何も言い返せなかった。


「まあ、でも」


 アメリアが、少し柔らかい表情で続けた。


「あなたが見せ場欲しがるのも、それだけ本気だからでしょ。それは、悪いことじゃないと思うわ」


「なんや、急に優しいやんか」


「珍しくね」


 その一言に、稽古場に、また、笑いが起きた。


 こうして、フェスに向けた台本は、みんなの主張が入り混じった、なんとも賑やかな形で、無事に決まることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。