第五十二話 見せ場、争奪戦
「脚本、練り直してきたわ」
アメリアが、そう言って、稽古場に、新しい台本を配った。
「見せてもらうわ」
あたしは、早速、台本に目を通した。そして、すぐに、一つの違和感に気づいた。
「あたしの見せ場、ここだけ?」
「バランス考えたら、それくらいが適正よ」
「三十分中、あたしのセリフ、五個しかないやんか!」
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「もっと、あたしのシーン増やしてほしいんやけど」
「増やしたら、他の人の見せ場が減るでしょ」
「それは、まあ、そうやけど」
「あなた、フェスの主旨、忘れてない? 劇団全体のバランスを見せる場よ」
「分かってるけど、あたしの本能が、増やしてほしいって叫んでるんよ」
「本能に台本変える権限、ないから」
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「私も、意見あります!」
ノエルが、勢いよく、手を挙げた。
「私のシーン、もっと感動的にしてほしいです! 客席、泣かせたいです!」
「うちの劇団、そもそも泣かせる方向性で成功したことないやろ」
「今回こそ、いけると思うんです!」
「その自信、どこから来るんや」
「勘です!」
「勘て!」
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「私は、特に主張ないです」
ミアが、そう、あっさりと言った。
「ミア、あんたは、もっと自分の見せ場、主張してもええんやで」
「別に、目立ちたいわけじゃないので」
「そういうとこも、あんたらしいわな」
「らしいって、何ですか」
「地味に、いつも冷静なとこ」
「地味は余計です」
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「まあ、みんな、それぞれ言いたいことあるみたいだけど」
アメリアが、少し呆れたように、そう言った。
「結局、私が全部聞いて、うまくまとめるしかないんでしょうね」
「頼りにしてるわ、アメリア」
「頼りにしてるにしても、もう少し自分たちで折れる努力してほしいんだけど」
*
結局、その日の会議は、あたしの見せ場を、当初より少しだけ増やし、ノエルの感動シーンを、コメディに寄せる形で落ち着かせることになった。
「これで、みんな、納得や」
「納得したのは、あなただけな気もするけど」
「細かいこと気にすなや」
「気にしないと、また同じことの繰り返しになるでしょ」
アメリアの、その正論に、あたしは、何も言い返せなかった。
「まあ、でも」
アメリアが、少し柔らかい表情で続けた。
「あなたが見せ場欲しがるのも、それだけ本気だからでしょ。それは、悪いことじゃないと思うわ」
「なんや、急に優しいやんか」
「珍しくね」
その一言に、稽古場に、また、笑いが起きた。
こうして、フェスに向けた台本は、みんなの主張が入り混じった、なんとも賑やかな形で、無事に決まることになった。




