第五十一話 興行街、フェス化計画
「なあ、これ見てみ」
稽古前、バロウが、一枚の企画書を持ってきた。
『フェリシオン興行街 合同フェスティバル企画』
「フェス?」
「興行街の劇団、全部集めて、大規模な合同興行やろうって話が出てるらしい」
「全部て、金翼座も?」
「そこも含めて、だな」
あたしは、その規模の大きさに、思わず、身を乗り出した。
「これ、参加するしかないやんか!」
*
早速、参加する劇団の代表者が集まる会議が開かれた。あたしも、銀月座の代表として、その場に出席した。
「今回のフェス、各劇団、持ち時間三十分ずつで、それぞれの見せ場を披露する形式で」
主催者の説明に、あたしは、早速、頭の中で構想を膨らませ始めた。
(三十分、あたしなら、余裕で伝説の三十分にできるわ)
*
「セレナも、来とったんか」
会議の後、あたしは、金翼座代表として来ていたセレナに、声をかけた。
「ええ。うちも、参加させていただきますわ」
「これ、劇団同士の真剣勝負みたいなもんやな」
「あら、その気概、嫌いじゃありませんわ、ホホホ」
あたしたちは、そのやり取りに、揃って笑った。
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「今回の演目、どうするか、みんなで考えよか」
稽古場に戻り、あたしは、劇団員全員に、そう呼びかけた。
「私、思いつきました! 巨大な龍のオブジェを、舞台上に出しませんか!」
ノエルが、目を輝かせながら、そう提案した。
「予算オーバーだ」
ガスが、即座に、そう却下した。
「まだ何も言うてへんのに!」
「お前らの『すごいアイデア』は、大抵、予算オーバーになる。経験則だ」
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「私が、脚本を練り直しましょうか」
アメリアが、冷静に、そう申し出た。
「頼むわ。あたしの案やと、たぶん、暴走するやろうから」
「自覚あるのね」
「自覚あるとこが、あたしの強みや」
「その強み、今回だけは封印してほしいんだけど」
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「私も、何か手伝います」
ミアが、そう言うと、あたしは、少し意外な気持ちになった。
「ミアが、自分から手伝うって言うの、珍しいな」
「別に、暇だったからです」
「その言い方も、もうお決まりのパターンやな」
「決まってません」
その様子に、稽古場の空気が、いつも通り、賑やかになっていった。
*
「まあ、色々騒がしいのが、うちの劇団らしさやな」
あたしは、そう呟きながら、企画書に、あらためて目を通した。
『フェリシオン興行街合同フェスティバル』
この規模の興行に参加できるのは、これまでの積み重ねがあってこそだった。
「せやけど、これも、良い機会かもしれんな」
首都から見に来てもらう、という目標には、まだ程遠い。だが、フェリシオンの中で、銀月座の名前を、もっと広く知ってもらえる機会には、なるかもしれない。
あたしは、そんなことを考えながら、企画書を、そっと胸に抱えた。
こうして、銀月座は、フェリシオン興行街を巻き込む、大きなフェスへの参加を決めることになった。




