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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第五話 次は絶対いける

「今月も、グランディアの劇団のオーディション、応募したから」


 楽屋で、あたしはノエルに、そう報告した。


「何回目ですか、それ」


「さあ。もう数えてないわ」


 これまで送り続けた応募書類は、軽く二桁を超えている。だが、返事が来たことは、一度もなかった。



 数日後、ようやく一通の返信が届いた。


『この度は、ご応募いただきありがとうございます。誠に残念ながら、今回はご期待に添えない結果となりました』


 あたしは、その一文を、何度も読み返した。


「……これ、褒めてるんちゃう?」


「え?」


「『ご期待に添えない』って、つまり、あたしの実力が、向こうの期待を超えすぎてたってことよね」


「それ、逆じゃないですかね……」


「逆じゃないわ。読み方の問題よ」


「その読み方、まるで赤信号を『止まれ』じゃなくて『情熱の色』って読むようなもんですよ」


「情熱的でええやん、それ」


「よくないですよ」



 その夜、あたしは映え板に、こんな投稿をした。


『今日もオーディション落ちました。でも次は絶対いけると思う』


 コメントは、すぐについた。


『これ何回目の「次は絶対」ですか』

『毎回言ってません?』

『応募し続けるメンタル、逆に尊敬します』


「そういうポジティブさこそ、勝利者の資質ってものよ。名前の通り、あたしにはいつだって勝利が約束されてるの」


『それはそう』

『そこは認める』

『いっそお笑い芸人のオーディション受けたら受かる気しかしません』


「誰がツッコミ待ちやねん!……って、今の切り返し、我ながら完璧やったやろがい!」


『今のツッコミ、テンポ良すぎません?』

『女優より向いてる説、浮上』


 女優としての評価ではなく、笑いの才能を褒められている。それでも、あたしは、それを「才能を認められた」の一種として、都合よく受け止めることにした。



 翌日、座長のバロウが、少し呆れたような顔で、こんなことを言ってきた。


「お前、またグランディアの劇団、応募したのか」


「してますけど」


「まあ、その意欲は買うけどな」


「でしょ?」


「意欲だけは、な」


「それ、まるで的の外側だけ完璧に狙えてる矢みたいな言い方ですね」


「言い得て妙だな、それ」


「褒めてないですよね」


「バロウも見てなさい。いつか絶対、あたしは首都グランディアの舞台に立つから」


「はいはい」


 バロウは、そう言いながら、次の準備に戻っていった。


 あたしは、その背中を見ながら、心の中で、もう一度誓った。


 次こそ、絶対にいける。

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