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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第四話 アメリアという女

 銀月座の看板女優は、あたし。そう思っているのは、たぶん、あたしだけではない、はずだ。


 共演のアメリアは、あたしと同期で入団した女優だった。物静かで、あまり自分から前に出るタイプではない。だが、なぜか、客からの評判も、劇団内での扱いも、いつの間にかあたしと肩を並べるくらいになっていた。


(まあ、あたしのライバルとして、それなりに認められてるってことよね)



 ある日の稽古終わり、アメリアが、珍しく話しかけてきた。


「ヴィクトリア、今度の新作、主演どっちがやるか、まだ決まってないのよね」


「そんなの、あたしに決まってるでしょ」


「そう? バロウさん、まだ迷ってるみたいだけど」


「あんたと張り合うつもりはないけど、実力差は、犬と猫くらい離れてるから」


「それ、どっちがどっちなの」


「もちろん、あたしが犬」


「犬でいいの、それ」


「忠実で、賢くて、愛される。犬の方が良いに決まってるでしょ」


「その理屈だと、私が猫ってことになるけど」


「猫は猫で、それはそれで需要あるから安心して」



 数日後、主演が発表された。結果は、アメリアだった。


「な、なんでよ!」


 あたしは、思わず素で叫んだ。


 バロウが、少し困った顔で説明した。


「今回の役、客に媚びない静かな演技が求められる役でな。お前だと、どうしても目立ちすぎる」


「それ、あたしの魅力ってことちゃうん?」


「まあ、そういう見方もできるけどな」



 その夜、あたしは、アメリアの楽屋に、思い切って乗り込んだ。


「あんた、あたしより演技うまいと思ってるん?」


「思ってないわよ、別に」


「じゃあ、なんで選ばれたんよ」


「求められてる役柄が違うだけ。ヴィクトリアの持ち味は、こういう静かな役には向いてないってだけ」


「持ち味て、具体的にどういうことよ」


「客席をどうしても沸かせちゃう感じ、かな」


「それ、まるで花火に『音出さんとって』言うてるようなもんやん」


「例えるならそうかもね」


「例えられても困るんよ!」


「客席がどっと沸くの、演出じゃ出せない味だから。あれは、あれで、才能だと思ってるけど」


 アメリアは、そう言うと、興味を失ったように、鏡の前で化粧を直し始めた。


「……花火は花火で、音を出してこそ意味があるってことよね」


「そうね」


 あたしは、その背中に、何と言い返せばいいのか分からず、しばらく立ち尽くしていた。


(褒められた……のよね、今の)


 結局、その日、あたしは、何とも言えないモヤモヤを抱えたまま、楽屋を後にした。

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