第三話 水着、なぜか笑われる
夏を迎え、あたしは、満を持して水着姿を映え板に投稿することにした。
鏡の前でポーズを何パターンも試し、一番セクシーに見える角度を見極める。腰に手を当て、流し目を作り、口元は少し開き気味に。
「これを見てシコるがいい、凡夫どもが」
自信満々にそう呟き、投稿ボタンを押した。
『今年も夏が来たわね♡』
*
コメントは、すぐについた。
『ポーズ、なぜか格闘家っぽいですw』
『流し目のつもりが睨んでるように見えます』
『これは色気より圧が強い』
「……は?」
あたしは、思わず自分の投稿を見返した。何度見ても、あたしとしては、この上なくセクシーなポーズのつもりだった。
『次の大会、応援してます』
『どの階級で出るんですか』
「なんの大会やねん! エントリー費用いくらすると思ってんねん!」
『あ、素で返信きたw』
『大会出場、否定しないんだwww』
コメント欄は、ますます謎の盛り上がりを見せていった。
*
翌日、ノエルが、恐る恐る話しかけてきた。
「ヴィクトリアさん、あの投稿、なんか格闘技の話で盛り上がってましたね」
「あれは、あたしのセクシーさが、変な方向に誤解されてるだけよ」
「そう、なんですかね……」
「絶対そう。あたしほどスタイルいい女、そうそういないんだから」
「まるで、お見合い写真として撮ったのに、格闘技雑誌の巻頭ページに使われてる気分ってことですかね」
「せっかくの見合い写真、なんでそんな筋肉質な雑誌に載らなあかんのよ!」
「たとえ話ですよ、落ち着いてください」
*
一方、通りかかったアメリアが、ちらりとあたしの映え板を覗き込んで、小さく笑った。
「ヴィクトリア、格闘技、始めたの?」
「せんわ!」
あたしは、思わず声を荒げた。
「その反射神経、格闘家っぽいけど」
アメリアは、それだけ言って、涼しい顔で去っていった。
*
その夜、あたしは、もう一枚、追加で水着写真を投稿することにした。今度は、もっと分かりやすく、色気を強調したポーズだ。
結果は、変わらなかった。
『二段目の構え、綺麗ですね』
『フォームが安定してる』
「なんでよ!」
あたしは、鏡に向かって、そう叫んだ。
だが、フォロワー数もLIKEの数も、着実に増えていた。
(まあ、理由はどうあれ、注目されてるってことよね)
あたしは、そう自分を納得させることにした。




