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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第二話 これが最先端

「今日のコーデ、見て見て」


 楽屋で、あたしはノエルに、今日の私服を披露した。柄物のシャツに、派手な色のスカーフを何重にも巻き、さらに大ぶりのアクセサリーを、これでもかというほど重ねづけしている。


「……あの、それは、何かの舞台衣装ですか?」


「私服よ。最先端のコーデってやつ」


「そうなんですね……」


「これね、いうなれば、クローゼットの中で戦争が起きて、生き残った奴らだけが今ここに集結してるようなものなの」


「戦争、ですか」


「そう。柄物とスカーフとアクセサリー、それぞれ一歩も譲らなかった結果、全員着ることになったの」


「休戦してほしかったですね、その戦争」



 その日、共演のアメリアが、珍しく声をかけてきた。


「ヴィクトリア、そのスカーフの巻き方、面白いわね」


「でしょ? これ、まるで蛇がとぐろ巻いてるみたいでしょ。獲物を逃さん、女の色気ってやつよ」


「そう……蛇なのね」


 アメリアは、それだけ言って、そのまま去っていった。



 その夜、あたしは新作のネイルを施し、映え板に投稿した。


 左右で色も形も、微妙に違うデザインだった。


『新作ネイル♡ 攻めてみました』


 コメントは、すぐについた。


『左右で施術者変わりました?』

『冒険者の剣と盾みたいですねw』


「誰がSランク戦士じゃ!」


 あたしは、思わずコメント欄に、そう返信してしまった。


『Sランクとは一言も書いてないwww』

『まって自分で言っちゃった』

『ヴィクトリアさんの自己評価の高さよ』


『これ、じゃんけんで例えるなら、片方がグーで片方がパー出してる状態ですよね』


「それやったら、あたしの両手だけで二連勝確定ってことやろがい!」


『じゃんけんは相手いてこそでは』

『自分の中で完結する勝負、最強すぎません?』


「あー、また分かってへんコメントばっかりや」


 あたしは、思わずそう漏らした。だが、すぐに気を取り直す。


「まぁ、このセンス、あんたらにはまだ早いってことやろ」



 翌日、劇団の裏方であるガスが、珍しく話しかけてきた。


「そのネイル、片方だけ長さ違うけど、大丈夫か」


「あ、これはデザインよ。攻めた非対称ってやつ」


「まるで、片方だけ靴下履き忘れて出社した日みたいだな」


「例えが妙にリアルなんよ!」


 ガスは、それ以上何も言わず、いつも通り、黙々と作業に戻っていった。


 あたしは、その反応を見て、なんとなく満足していた。


(ガスも、あたしのセンスに何も言えないくらい、圧倒されてるってことね)


 実のところ、ガスがどんな顔をしていたのか、あたしはあまりよく見ていなかった。

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