第四十八話 記事、掲載されました
「ヴィクトリア、例の記事、載ったぞ」
ある朝、バロウが、一冊の雑誌を持って、そう駆け込んできた。
「マジで!? 見せて見せて!」
あたしは、勢いよく、その雑誌をひったくった。
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見出しには、こう書かれていた。
『地方が生んだ、規格外の女優――ヴィクトリア、その全貌』
「規格外て、なんかカッコいいやんか!」
あたしは、思わず、声を上げた。
「まあ、読んでみろ」
バロウの表情が、どこか意味深だった。
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記事の本文には、こう書かれていた。
『彼女の武器は、演技力ではない。舞台上での予測不能なハプニングと、それに対する素の反応こそが、最大の見どころである』
「演技力ちゃう、て言い切られとるやんか! オブラート一枚もかぶせてくれへんのか、この記者!」
あたしは、少し嫌な予感を覚えながら、読み進めた。
『取材中も、審査員に無理な直談判の推薦状を送った経験談や、水着投稿が格闘技と誤解された逸話など、赤裸々に語ってくれた』
「あたしの黒歴史、全部載っとるやんか!」
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「見て見て、この部分」
ノエルが、記事の一箇所を指差しながら、げらげら笑っていた。
『ハッシュタグを詰め込みすぎて、フォロワーに「欲張りセット」と称された投稿は、今も一部で語り継がれている』
「語り継がれとるて! 誰が語り継いどるんよ!」
「記者さんが、しっかり過去の投稿まで遡って調べたみたいですね」
「そこまでする熱意、演技の評価に使ってほしかったわ!」
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「アメリア、あんたも見て、この酷さ」
「見たわよ。というか、記事の三分の二が、あなたの失敗談で構成されてるわね」
「三分の二て!」
「残り三分の一も、あなたの奇行についてだけど」
「奇行て!」
アメリアは、そう言いながらも、堪えきれずに笑っていた。
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「記事の最後、これ見てください」
ミアが、静かに、その部分を差し出してきた。
『彼女は、本人も気づかないうちに、地方演劇の新しい魅力を体現している。演技の巧拙を超えた、人間くさい面白さこそが、今、多くの人を惹きつけているのだ』
「なんか、最後だけ、急にちゃんとした締めやん」
「褒めてるのか貶してるのか、最後まで分からない記事でしたね」
「褒めてる部分、宝探しレベルの難易度やったやろな、記者さんも」
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その日の夜、あたしは、この記事の反応を、映え板でも確認してみた。
『記事読みました! やっぱり、素の反応が一番の魅力ですよね』
『黒歴史特集みたいになってて笑いました』
『演技力より人間力で評価されてる、逆にすごい』
「誰が人間力で評価されてる女じゃ! 演技力の方で評価されたいんじゃ、こちとら!」
あたしは、そう打ち込みながらも、思わず笑ってしまった。
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結局、その記事のおかげで、フォロワー数は、少しだけ増えた。だが、増えた分の大半は、あたしの演技を見に来るというより、あたしの奇行を見に来るファンだったらしい。
「まあ、それでも、来てくれるだけ、ありがたいことやな」
「本当に、ポジティブね、あなたって」
アメリアが、呆れたように、そう言った。
「ポジティブっていうか、選択肢が他になさそうやからな」
「その割に、開き直り方は堂々としてるじゃない」
「堂々としてなかったら、こんな記事、直視できひんやろ」
あたしたちは、そのやり取りに、揃って笑った。
結局、あの記事は、演技力への評価を届けるどころではなく、ただ、あたしの奇行録として、フェリシオン中に広まっていくことになった。




