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自称・看板女優の私、ヤジには関西弁でツッコミ、SNSでは毎日コメント欄で漫才。女優のはずが芸人枠でした ~名前の意味は「勝利」~  作者: 中原九尾


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第四十八話 記事、掲載されました

「ヴィクトリア、例の記事、載ったぞ」


 ある朝、バロウが、一冊の雑誌を持って、そう駆け込んできた。


「マジで!? 見せて見せて!」


 あたしは、勢いよく、その雑誌をひったくった。


*


 見出しには、こう書かれていた。


『地方が生んだ、規格外の女優――ヴィクトリア、その全貌』


「規格外て、なんかカッコいいやんか!」


 あたしは、思わず、声を上げた。


「まあ、読んでみろ」


 バロウの表情が、どこか意味深だった。


*


 記事の本文には、こう書かれていた。


『彼女の武器は、演技力ではない。舞台上での予測不能なハプニングと、それに対する素の反応こそが、最大の見どころである』


「演技力ちゃう、て言い切られとるやんか! オブラート一枚もかぶせてくれへんのか、この記者!」


 あたしは、少し嫌な予感を覚えながら、読み進めた。


『取材中も、審査員に無理な直談判の推薦状を送った経験談や、水着投稿が格闘技と誤解された逸話など、赤裸々に語ってくれた』


「あたしの黒歴史、全部載っとるやんか!」


*


「見て見て、この部分」


 ノエルが、記事の一箇所を指差しながら、げらげら笑っていた。


『ハッシュタグを詰め込みすぎて、フォロワーに「欲張りセット」と称された投稿は、今も一部で語り継がれている』


「語り継がれとるて! 誰が語り継いどるんよ!」


「記者さんが、しっかり過去の投稿まで遡って調べたみたいですね」


「そこまでする熱意、演技の評価に使ってほしかったわ!」


*


「アメリア、あんたも見て、この酷さ」


「見たわよ。というか、記事の三分の二が、あなたの失敗談で構成されてるわね」


「三分の二て!」


「残り三分の一も、あなたの奇行についてだけど」


「奇行て!」


 アメリアは、そう言いながらも、堪えきれずに笑っていた。


*


「記事の最後、これ見てください」


 ミアが、静かに、その部分を差し出してきた。


『彼女は、本人も気づかないうちに、地方演劇の新しい魅力を体現している。演技の巧拙を超えた、人間くさい面白さこそが、今、多くの人を惹きつけているのだ』


「なんか、最後だけ、急にちゃんとした締めやん」


「褒めてるのか貶してるのか、最後まで分からない記事でしたね」


「褒めてる部分、宝探しレベルの難易度やったやろな、記者さんも」


*


 その日の夜、あたしは、この記事の反応を、映え板でも確認してみた。


『記事読みました! やっぱり、素の反応が一番の魅力ですよね』

『黒歴史特集みたいになってて笑いました』

『演技力より人間力で評価されてる、逆にすごい』


「誰が人間力で評価されてる女じゃ! 演技力の方で評価されたいんじゃ、こちとら!」


 あたしは、そう打ち込みながらも、思わず笑ってしまった。


*


 結局、その記事のおかげで、フォロワー数は、少しだけ増えた。だが、増えた分の大半は、あたしの演技を見に来るというより、あたしの奇行を見に来るファンだったらしい。


「まあ、それでも、来てくれるだけ、ありがたいことやな」


「本当に、ポジティブね、あなたって」


 アメリアが、呆れたように、そう言った。


「ポジティブっていうか、選択肢が他になさそうやからな」


「その割に、開き直り方は堂々としてるじゃない」


「堂々としてなかったら、こんな記事、直視できひんやろ」


 あたしたちは、そのやり取りに、揃って笑った。


 結局、あの記事は、演技力への評価を届けるどころではなく、ただ、あたしの奇行録として、フェリシオン中に広まっていくことになった。

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