第四十四話 取材が来るらしい
「ヴィクトリア、妙な連絡来てるぞ」
稽古前、バロウが、少し戸惑った顔で、あたしにそう告げた。
「妙な連絡て?」
「映え板経由で、地方文化を紹介する雑誌の記者から、取材依頼だそうだ」
「え、取材!?」
あたしは、思わず、声を上げた。
「なんであたしに?」
「例のハッシュタグ大作戦とか、街頭ビラ配りの件、どっかで話題になってたらしい」
「あの空回りの数々が、まさかの成果に?」
「成果と呼んでいいのか、微妙なとこだけどな」
*
取材当日、やってきたのは、若い記者だった。
「今日は、よろしくお願いします。フェリシオンの地方劇団文化について、色々伺えればと」
「はい! なんでも聞いてください!」
あたしは、いつになく、気合いの入った様子で、取材に臨んだ。
「まず、この劇団の特色は?」
「うちは、演技力よりも、客席との一体感を大事にしているんです。ヤジも含めて、一つの舞台みたいな」
「それは、意図的にやってらっしゃるんですか」
「……最初は事故だったんですけど、今は、まあ、狙っているとも言えます」
「事故、なんですか」
「セリフを噛んだのが始まりで」
記者は、少し困った顔で、メモを取っていた。
*
「あと、映え板の投稿でも有名だそうですね」
「はい! あれも、狙って書いてるとこと、素で失敗してるとこと、半々くらいです」
「半々、なんですね」
「正直、どっちがどっちか、自分でもよく分からなくなってきました」
記者は、その正直さに、思わず苦笑した。
*
取材の途中、記者が、少し踏み込んだ質問をしてきた。
「首都グランディアを目指していると伺いましたが」
「最近、その考え方、ちょっと変わってきたとこなんです」
「と言いますと」
「首都に行くことだけじゃなくて、首都から見に来てもらえるくらい、ここで有名になることも、目標の一つになってきました」
「素敵な目標ですね」
「ですけど、そのための作戦、全部空回りしています」
「え」
「ハッシュタグ詰め込みすぎたり、有名人にコメント送って無視されたり、街頭でビラ配って誰も見向きもしてくれなかったり」
記者は、その赤裸々な告白に、思わず笑い出した。
「その正直さ、記事にしたら、逆に面白いかもしれません」
「え、そうなんですか?」
「はい。狙ってやってる部分より、その空回りっぷりの方が、読者に響く気がします」
「それ、褒められているのか、貶されているのか、微妙なところですね」
*
取材を終え、記者が帰った後、あたしは、稽古場のみんなに、この顛末を報告した。
「取材、なんか、しっちゃかめっちゃかやったわ」
「いつも通りですね」
ノエルが、そう笑いながら言った。
「まあ、記事になるかどうかも、まだ分からんけどな」
「なったら、なったで、また騒がしくなりそうね」
アメリアが、そう言うと、あたしは、少し得意げに胸を張った。
「騒がしいのが、うちの持ち味やからな」
その言葉に、稽古場のみんなが、揃って笑った。
結局、記事になるかどうかも分からないまま、あたしの日常は、いつも通り、賑やかに続いていくのだった。




