↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称・看板女優の私、ヤジには関西弁でツッコミ、SNSでは毎日コメント欄で漫才。女優のはずが芸人枠でした ~名前の意味は「勝利」~  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/65

第四十四話 取材が来るらしい

「ヴィクトリア、妙な連絡来てるぞ」


 稽古前、バロウが、少し戸惑った顔で、あたしにそう告げた。


「妙な連絡て?」


「映え板経由で、地方文化を紹介する雑誌の記者から、取材依頼だそうだ」


「え、取材!?」


 あたしは、思わず、声を上げた。


「なんであたしに?」


「例のハッシュタグ大作戦とか、街頭ビラ配りの件、どっかで話題になってたらしい」


「あの空回りの数々が、まさかの成果に?」


「成果と呼んでいいのか、微妙なとこだけどな」


*


 取材当日、やってきたのは、若い記者だった。


「今日は、よろしくお願いします。フェリシオンの地方劇団文化について、色々伺えればと」


「はい! なんでも聞いてください!」


 あたしは、いつになく、気合いの入った様子で、取材に臨んだ。


「まず、この劇団の特色は?」


「うちは、演技力よりも、客席との一体感を大事にしているんです。ヤジも含めて、一つの舞台みたいな」


「それは、意図的にやってらっしゃるんですか」


「……最初は事故だったんですけど、今は、まあ、狙っているとも言えます」


「事故、なんですか」


「セリフを噛んだのが始まりで」


 記者は、少し困った顔で、メモを取っていた。


*


「あと、映え板の投稿でも有名だそうですね」


「はい! あれも、狙って書いてるとこと、素で失敗してるとこと、半々くらいです」


「半々、なんですね」


「正直、どっちがどっちか、自分でもよく分からなくなってきました」


 記者は、その正直さに、思わず苦笑した。


*


 取材の途中、記者が、少し踏み込んだ質問をしてきた。


「首都グランディアを目指していると伺いましたが」


「最近、その考え方、ちょっと変わってきたとこなんです」


「と言いますと」


「首都に行くことだけじゃなくて、首都から見に来てもらえるくらい、ここで有名になることも、目標の一つになってきました」


「素敵な目標ですね」


「ですけど、そのための作戦、全部空回りしています」


「え」


「ハッシュタグ詰め込みすぎたり、有名人にコメント送って無視されたり、街頭でビラ配って誰も見向きもしてくれなかったり」


 記者は、その赤裸々な告白に、思わず笑い出した。


「その正直さ、記事にしたら、逆に面白いかもしれません」


「え、そうなんですか?」


「はい。狙ってやってる部分より、その空回りっぷりの方が、読者に響く気がします」


「それ、褒められているのか、貶されているのか、微妙なところですね」


*


 取材を終え、記者が帰った後、あたしは、稽古場のみんなに、この顛末を報告した。


「取材、なんか、しっちゃかめっちゃかやったわ」


「いつも通りですね」


 ノエルが、そう笑いながら言った。


「まあ、記事になるかどうかも、まだ分からんけどな」


「なったら、なったで、また騒がしくなりそうね」


 アメリアが、そう言うと、あたしは、少し得意げに胸を張った。


「騒がしいのが、うちの持ち味やからな」


 その言葉に、稽古場のみんなが、揃って笑った。


 結局、記事になるかどうかも分からないまま、あたしの日常は、いつも通り、賑やかに続いていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。