第四十三話 来てもらう作戦、開始
「よし、あたしも本格的に、来てもらう作戦、始めるで」
あたしは、稽古場で、一人、拳を握りしめた。
「作戦て、具体的に何するんですか」
ノエルが、不安げに尋ねてきた。
「まず、映え板で、首都のフォロワー増やすんよ」
「それは分かりますけど、方法は?」
「首都でバズってそうなハッシュタグ、片っ端からつけたるわ」
*
その夜、あたしは、投稿に、思いつく限りのハッシュタグを詰め込んだ。
『今日の稽古終わり♡ #首都グランディア #女優 #銀月座 #勝利の女 #フェリシオン #お笑い #関西弁 #看板女優 #憧れ #夜景 #グルメ #カフェ巡り』
「これで、首都の人にも届くはずや」
コメントは、すぐについた。
『ハッシュタグ、詰め込みすぎでは』
『欲張りセットみたいになってます』
『関連性、半分くらいないですよね』
「うるさいわ! 数打ちゃ当たるんよ!」
*
翌日、稽古場で、あたしは、次なる作戦を、アメリアに相談した。
「今度は、首都の有名人に、こっそりコメント送ろうと思うんよ」
「それ、ただの迷惑行為じゃない?」
「違うわ、あくまで、丁寧にお伺い立てるだけや」
あたしは、その場で、首都の有名俳優のアカウントに、コメントを打ち込んでみせた。
『初めまして。フェリシオンで頑張っている女優です。よければ、いつかこちらの舞台にも足をお運びください』
「まあ、これくらいなら、常識の範囲内ね」
「せやろ」
だが、返信は、一向に来なかった。
「……既読すらついてへんな」
「まあ、有名人に、無名の地方女優が急に絡んでも、普通は反応しないでしょうね」
「厳しい現実、突きつけてくるやん」
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数日後、あたしは、次の一手として、街頭での自主的な宣伝活動を思いついた。
「これ持って、街で配ってくるわ」
手作りのビラには、こう書かれていた。
『銀月座のヴィクトリアです。いつか首都から観に来てもらえるよう頑張ってます。応援よろしくお願いします』
「これ、チラシっていうより、選挙演説みたいですね」
ノエルが、そう突っ込んだ。
「志は同じようなもんやろ」
「規模が全然違います」
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結局、その日の街頭活動でも、大きな反応は得られなかった。
「今日も、あんまり効果なかったな……」
あたしは、少し肩を落としながら、稽古場に戻った。
「まあ、地道にやるしかないでしょ、こういうのは」
アメリアが、そう慰めてくれた。
「地道て、一番苦手なやつやんか」
「知ってるわよ、それくらい」
*
その夜、あたしは、これまでの奮闘を、正直に映え板に投稿した。
『首都から見に来てもらえる女優目指して、色々頑張ってます。今のところ成果ゼロです』
コメントは、すぐについた。
『正直すぎる報告』
『ハッシュタグ大作戦、あれは無理があったと思います』
『でも、その頑張り方、嫌いじゃないです』
「誰が無理があったんじゃ! いや、まあ、無理があったかもしれんけど!」
あたしは、そう言い返しながらも、少しも成果の出ない自分の作戦の数々に、思わず笑ってしまった。
だが、この空回りした奮闘ぶりが、思わぬところで、次の展開を呼び込むことになるとは、この時のあたしは、まだ知らなかった。




