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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第三十三話 新人・ミア

「今度、新しい劇団員が入る」


 稽古前、バロウから、そう聞かされた。


「へえ、どんな子や」


「18歳だそうだ。今日から来る予定」



 その日の稽古場に現れたのは、気の強そうな目をした、小柄な少女だった。


「はじめまして。ミアです」


 挨拶は、そつなくこなしていたが、その視線は、どこか刺々しかった。


「よろしくな、ミア」


 あたしがそう声をかけると、ミアは、あからさまに眉をひそめた。


「別に、あなたに気を遣ってもらわなくて大丈夫です」


「気を遣ってないけど」


「フン」


 その反応に、あたしは、少し困惑した。



「あの子、なんか、あたしのこと嫌いなんかな」


 休憩中、あたしはアメリアに、そう相談した。


「そう見えるわね」


「まるで、初対面で猫にシャー言われた気分やわ」


「相変わらず、例えが的確なような、そうでもないような」



 だが、稽古を重ねるうち、あたしは、少し違和感を覚え始めた。


「ミア、その動き、もうちょい――」


「言われなくても分かってます」


 そう言いながらも、ミアは、あたしのアドバイス通りに、動きを修正していた。


「素直やん」


「素直じゃないです。たまたま同じこと考えてただけです」


「たまたまにしては、タイミング良すぎるやろ」


「うるさいです」



 ある日、ミアが、あたしの舞台を、こっそり袖から観ているのを見かけた。


「見てたんか、あたしの舞台」


「べ、別に、見てたわけじゃないです。ただ、通りかかっただけです」


「通りかかって、なんで五分もそこに突っ立っとるんよ」


「た、たまたまです!」


 その慌てぶりに、あたしは、思わず笑ってしまった。


「なんか、面白い子やな、あんた」


「面白くないです! というか、あんたの舞台なんて、興味ないですから!」


「今、五分間、食い入るように見とったやんか」


「見てません!」



 その日の帰り際、ミアは、小さな声で、こう言った。


「……その、入団を決めたの、あなたの舞台を、前に一度観たからです」


「へえ」


「べ、別に、あなたに憧れてたとかじゃないですから! ただ、こんな滅茶苦茶な人でも看板張れるなら、私でもやれると思っただけです!」


「それ、実質、褒めてくれとるんちゃう?」


「褒めてません!」


 そう言い残し、ミアは、逃げるように帰っていった。


 その一部始終を、少し離れた場所で見ていたアメリアが、近づいてきた。


「ノエルの他に、あなたの信者が増えてよかったじゃない」


「何が信者じゃ! あれは、ただのツンデレってやつやろ!」


「詳しいのね、そういうの」


「常識やろ、これくらい」


「にしては、ちょっと嬉しそうな顔してるけど」


「嬉しくなんかないわ!」


 あたしは、その後ろ姿を見送りながら、なんとなく、これからの日々が、また賑やかになりそうな予感がしていた。

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