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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第三十二話 冒険者ギルドとのコラボ興行

「今度、冒険者ギルドから、コラボ興行の依頼が来た」


 稽古前、バロウが、そう切り出した。


「冒険者ギルドが、なんでうちに?」


「イメージアップ戦略らしい。ギルド、正規雇用じゃないせいで、あんまり評判良くないみたいでな」


「なるほどな」


「で、主演はヴィクトリア、お前にやってもらう」


「あたし?」


「ギルドの業務内容とか、冒険者が町の生活にどう貢献してるか、簡単な資料は渡されてるが、台本はなしだ。アドリブで、うまいこと盛り上げてくれって話でな」


「アドリブて、あたしにちょうどのやつやんか」


「まあ、そう思って引き受けた」



 当日、資料には、こう書かれていた。


『冒険者ギルドは、依頼を通じて企業と冒険者を繋ぐ、地域社会に不可欠な組織です』


「……固いな、この文章」


 あたしは、資料を眺めながら、ため息をついた。


「まあ、これを、うまいこと面白く伝えたらええんやろ」



 本番、あたしは、冒険者役として、舞台に立った。


「今日も、依頼を受けに来たわ」


 ギルド職員役のアメリアが、それらしく応対する。


「本日のオススメ依頼は、こちらになります」


「オススメて、まるで食堂の定食やんか」


 客席から、笑いが起きた。


「依頼を受けることで、地域社会に貢献できるんですよ」


「地域社会に貢献……そうか、あたしも、ついに社会の役に立つ日が来たんやな」


「感慨深そうですね」


「まあ、社会の役に立つっていうか、正直、今日の飯代のためやけどな」


「本音出るの早すぎません?」


 客席が、また沸いた。



 その後も、話は、あちこちに脱線していった。


「ところで、この依頼、報酬はどれくらいなん?」


「それは、ランクによって変わりますね」


「あたし、実はSランクやねん」


「え、そうなんですか」


「嘘やけどな」


「嘘なんかい!」


 アメリアが、思わず素で突っ込んだ。


「まあ、Sランクって、別に伝説の英雄ってわけやないしな。あくまで、ギルドの評価が高いってだけの話やし」


「それ、地味に正確な説明ですね」


「たまには、真面目なことも言うんよ」



 結局、その日の即興劇は、ギルドの業務内容には、ほとんど触れないまま終わった。


 だが、終演後、客席からは、大きな拍手が起きていた。


「面白かったわ、ギルドの人たち」


「冒険者って、身近な感じがするな」


 そんな声が、あちこちから聞こえてきた。



 打ち上げの席で、ギルドの担当者が、満足げにそう言った。


「業務内容は、あんまり伝わらなかった気がしますが……なんというか、親しみやすさは、十分に伝わったと思います」


「それ、ギルドとしては、微妙な結果なんちゃう?」


「いえ、十分満足です。今までの堅苦しいイメージが、だいぶ和らいだので」


「そうか、それやったら、良かったわ」


 あたしは、そう言いながら、内心では、業務内容そっちのけで暴走した自覚があったため、少しだけ、ばつが悪い気持ちになっていた。


 もっとも、結果オーライなら、それでいいかと、すぐに開き直ることにした。

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