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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第二十九話 アメリアの両親、来訪

「今度の休み、うちに来ない? 両親が遊びに来てて、あなたに会いたがってて」


 稽古終わり、アメリアが、そう誘ってきた。


「え、あんたの家に、ご両親が?」


「うん。前の劇団辞めた時、結構心配かけたから。今、楽しくやってるとこ、見せたいのよね」


「いいわよ。行くわ」



 当日、アメリアの部屋を訪ねると、こぢんまりとした居間に、朗らかそうな夫婦が座っていた。


「いらっしゃい! アメリアがいつもお世話になってます!」


 出迎えてくれたアメリアの母親は、想像以上に朗らかな人だった。


「お世話になってるというより、お互い様みたいなものです」


「アメリア、前の劇団にいた頃は、帰省するたびに、げっそりした顔してたのよ」


「まるで、干からびた植木鉢みたいな顔をしていた、ということですか」


「その例え、失礼すぎるでしょ」


 アメリアが、思わず突っ込んだ。


「でも今は、会うたびに楽しそうに、あなたの話ばっかりしてて」


「え、あたしの話?」


「うん。今日はこんなボケしてた、とか、今日はこんな例え言ってた、とか」


「なんや、あたし、ネタとして消費されとるやんか」


「消費してるわけじゃないわよ」


「まあ、消費されとる分には、光栄なことやけどな」



 食事の席では、アメリアの父親も、興味津々な様子で話しかけてきた。


「君が、噂の看板女優かい」


「噂って、どんな噂ですか」


「舞台でセリフ噛んでキレる子、って」


「その噂しか広まってへんのかい!」


「あと、映え板で、格闘技扱いされてた子、とも聞いたよ」


「なんでそこまで詳しいんですか!」


 アメリアが、堪えきれずに笑い出した。


「両親とも、あなたの話、しっかり予習してきてるみたいね」


「予習の対象があたしの黒歴史て、まるで、贈り物選ぶときに、わざわざ一番趣味悪いのだけ選んでくるみたいな話やんか」



 食事も終わり、帰り際、アメリアの母親が、あたしにそっと声をかけてきた。


「アメリアのこと、これからもよろしくね」


「こっちこそ、いつも世話になってます」


「あの子、あなたといると、本当に楽しそうなの」


 その言葉に、あたしは、少し照れくさくなった。


「まあ、これからも、あたしのボケに付き合わせますわ」


「お手柔らかにね」


 アメリアが、そう苦笑しながら見送ってくれた。


 帰り道、あたしは、今日一日を振り返りながら、なんとなく、温かい気持ちになっていた。


 もっとも、その温かさも、翌日には、いつも通りのやかましい日常に、あっという間に塗り替えられることになるのだが。

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