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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第二十六話 今年こそ

「今年こそ、首都に行くわ」


 年明け、あたしは、決意を新たに、映え板にそう投稿した。


『今年の抱負:首都グランディア進出。勝利の女、今年こそ本気出します』


 コメントは、すぐについた。


『あけましておめでとうございます!』

『今年もよろしくお願いします!』

『去年も同じこと言ってませんでした?』


「……は?」


 あたしは、思わず自分の投稿履歴を遡ってみた。


 去年の同じ時期、たしかにこう書いてあった。


『今年の抱負:首都グランディア進出。今年こそ本気出します』


「ほぼ一言一句同じやんか!」


 あたしは、思わずそう打ち込んでしまった。


『一昨年もほぼ同じでしたよ』

『まるで、正月の恒例行事みたいになってますね』

『初詣より先に、この投稿見る派です』


「誰が正月の恒例行事じゃ! おせちと一緒にすな!」



 翌日、稽古場で、あたしはノエルに、この件を愚痴った。


「フォロワーが、去年の投稿掘り返してきてな」


「あー、ありましたね、去年も同じような抱負」


「あんたまで!」


「いや、覚えてるものは覚えてますよ」


「まるで、毎年同じ宝くじ買い続けてる客みたいな言われようや」


「その例え、的確すぎて何も言えないです」



 その日の帰り、あたしは、開き直って、こんな投稿をすることにした。


『去年も同じこと言ってたかもしれないけど、それだけ本気ってことなの』


 コメントは、すぐについた。


『それ、もう三年連続言ってません?』

『本気の定義、緩くなってません?』

『来年も見に来ます』


「来年も見に来る前提で話すな!……いや、来てくれるんはありがたいけど!」


 あたしは、そう突っ込みながらも、内心では、少し複雑な気持ちになっていた。



 その夜、あたしは、一人、部屋で、今年の抱負について、あらためて考え直してみることにした。


「今年こそ、って、もう何回言うたんやろな」


 数えてみると、思いのほか多い回数、同じ言葉を繰り返してきたことに気づいた。


「でもまあ」


 あたしは、小さく呟いた。


「言い続けとったら、いつかは本当になるかもしれへんし」


 その考えを、そのまま、追加で投稿することにした。


『何回でも言うわ。今年こそ』


 コメントは、すぐについた。


『その諦めの悪さ、嫌いじゃないです』

『毎年恒例、応援してます』


「誰が諦め悪いんじゃ! これは執念や、執念には敬意を払え!」


 そう言い返しながらも、あたしは、そのコメントに、少しだけ、救われる思いがしていた。

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