第二十六話 今年こそ
「今年こそ、首都に行くわ」
年明け、あたしは、決意を新たに、映え板にそう投稿した。
『今年の抱負:首都グランディア進出。勝利の女、今年こそ本気出します』
コメントは、すぐについた。
『あけましておめでとうございます!』
『今年もよろしくお願いします!』
『去年も同じこと言ってませんでした?』
「……は?」
あたしは、思わず自分の投稿履歴を遡ってみた。
去年の同じ時期、たしかにこう書いてあった。
『今年の抱負:首都グランディア進出。今年こそ本気出します』
「ほぼ一言一句同じやんか!」
あたしは、思わずそう打ち込んでしまった。
『一昨年もほぼ同じでしたよ』
『まるで、正月の恒例行事みたいになってますね』
『初詣より先に、この投稿見る派です』
「誰が正月の恒例行事じゃ! おせちと一緒にすな!」
*
翌日、稽古場で、あたしはノエルに、この件を愚痴った。
「フォロワーが、去年の投稿掘り返してきてな」
「あー、ありましたね、去年も同じような抱負」
「あんたまで!」
「いや、覚えてるものは覚えてますよ」
「まるで、毎年同じ宝くじ買い続けてる客みたいな言われようや」
「その例え、的確すぎて何も言えないです」
*
その日の帰り、あたしは、開き直って、こんな投稿をすることにした。
『去年も同じこと言ってたかもしれないけど、それだけ本気ってことなの』
コメントは、すぐについた。
『それ、もう三年連続言ってません?』
『本気の定義、緩くなってません?』
『来年も見に来ます』
「来年も見に来る前提で話すな!……いや、来てくれるんはありがたいけど!」
あたしは、そう突っ込みながらも、内心では、少し複雑な気持ちになっていた。
*
その夜、あたしは、一人、部屋で、今年の抱負について、あらためて考え直してみることにした。
「今年こそ、って、もう何回言うたんやろな」
数えてみると、思いのほか多い回数、同じ言葉を繰り返してきたことに気づいた。
「でもまあ」
あたしは、小さく呟いた。
「言い続けとったら、いつかは本当になるかもしれへんし」
その考えを、そのまま、追加で投稿することにした。
『何回でも言うわ。今年こそ』
コメントは、すぐについた。
『その諦めの悪さ、嫌いじゃないです』
『毎年恒例、応援してます』
「誰が諦め悪いんじゃ! これは執念や、執念には敬意を払え!」
そう言い返しながらも、あたしは、そのコメントに、少しだけ、救われる思いがしていた。




