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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第二十四話 銀月座、忘年会

「今年最後の公演も終わったし、みんなで飲みに行くか」


 座長のバロウの号令で、その日の夜、劇団員全員での忘年会が開かれることになった。銀月座は、決して大所帯というわけではなく、裏方のガスも含めて、全員で十人ほどの、こぢんまりとした集まりだった。


「今年一年、色々ありましたね」


 乾杯の後、ノエルが、しみじみとそう言った。


「ほんとやな。振り返ったら、あたし、色んなことでやらかしてたわ」


「色々どころじゃなかったわよ」


 アメリアが、苦笑しながらそう突っ込んだ。



「そういえば、覚えてます? 水着投稿で格闘技扱いされてた件」


 ノエルが、思い出し笑いをしながら、そう切り出した。


「言うなや、それ!」


「あと、じゃんけんで二連勝確定してた件も」


「それも言うな!」


「今年のヴィクトリアさん、まるで、一年通してネタの湧き水みたいでしたよね」


「湧き水て!」


 ガスが、珍しく会話に加わってきた。


「否定できないところが、より辛いな」


「お前まで!」


 その場に、笑いが起きた。



 酒が進むにつれ、バロウが、少ししんみりとした口調で言った。


「今年は、お前のおかげで、また客足が伸びたよ」


「まあ、当然やろ」


「当然じゃないよ。お前がいなかったら、うちの劇団、今頃どうなってたか分からない」


 その言葉に、あたしは、少し照れくさくなった。


「なんや、しんみりした空気出すの、やめてくれる? 柄にもない」


「柄にもないのはお互い様だろ」



 その後、話題は自然と、セレナのことにも及んだ。


「そういえば、金翼座のセレナさんとも、なんか妙な関係になってきましたね」


 ノエルが、そう言うと、アメリアも頷いた。


「ライバルなのか、なんなのか、よく分からないわよね」


「あたしは、ライバルやと思っとるけどな」


 あたしがそう言うと、ガスが、ぼそりと呟いた。


「向こうは、たぶん違うと思うけどな」


「え、何がや」


「いや、何でもない」


 あたしは、その意味深な一言に、少し首を傾げたが、それ以上は追及しなかった。



 宴もたけなわになった頃、あたしは、みんなの顔を見渡しながら、なんとなく、感慨深い気持ちになっていた。


 空回りしても、からかわれても、この場所には、ちゃんと自分の居場所がある。


「まあ、来年も、色々やらかすと思うけど、よろしく頼むわ」


「もう、それは分かってるから、安心して」


 アメリアが、そう笑いながら答えた。


「望むところですよ」


 ノエルも、元気よくそう続けた。


 ガスとバロウは、特に何も言わず、ただ静かにグラスを掲げるだけだった。それだけで、十分に伝わるものがあった。


 こうして、銀月座の一年は、いつも通りの騒がしさと、いつも通りの温かさの中で、幕を閉じることになった。

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