第二十三話 アメリアの見立て
稽古終わり、あたしは、思い切ってアメリアに相談を持ちかけることにした。
「なあ、あたし、ああいう洗練された見た目になりたいんやけど、自分でやるとどうも、うまくいかへんくて」
「あの映え板の投稿、ネタじゃなくて、真面目にやってたの?」
アメリアが、心底驚いた顔で、そう聞き返してきた。
「真面目にやっとったわ! 誰があんな量の情報量、ネタで着けるんよ!」
「ネタだと思って見てた人、結構いたと思うわよ」
あたしは、少し落ち込んだ。
*
「金フクの、あの上品な感じ。見れば洗練されてるって、あたしにも分かるんよ」
「でしょうね」
「けど、自分でやろうとすると、なんであんな風になるんかが、まったく分からへん」
アメリアは、少し考えるような顔をした。
「それ、まるで、味の違いは分かる舌してるのに、自分で作った料理は無条件で美味しいと思っちゃうタイプってことじゃない」
「……それ、めっちゃ的確や」
あたしは、思わず感心してしまった。
「舌は正常なのに、作り手としての腕だけがズレとる、ってことか」
「そういうことね」
「その例え、あんた、天才なんちゃう」
「あなたの影響かもね」
*
「じゃあ、具体的にどうしたらええんよ」
あたしがそう尋ねると、アメリアは、あたしの全身を、じっと見つめた。
「ヴィクトリアって、スタイルはいいんだから、もっとシンプルにまとめて、体の線が出るような服にしたら?」
「体の線……」
「装飾で誤魔化すんじゃなくて、そのままの形を見せる方が、あなたには合ってると思う」
「うーん、それはそれで、スケベどもの視線が鬱陶しそうやな」
「見られるのも、女優の仕事のうちでしょ」
「それはそう、なんやけど」
あたしは、少し複雑な気持ちになりながらも、その提案を受け入れることにした。
*
数日後、あたしは、アメリアの助言通り、装飾を一切排した、体の線が出るシンプルなドレスを着て、映え板に投稿した。
『今日はシンプルに』
コメントは、すぐについた。
『別人かと思いました』
『これは素直に綺麗です』
『引き算、完全にマスターしましたね』
絶賛の嵐だった。だが、あたしは、その反応を見ながら、なんとも言えない気持ちになっていた。
「……なんか、腑に落ちへんな。まるで、自分では絶対辿り着けへんかった山頂に、他人の背中に乗せられて連れてこられた気分やわ」
褒められているのに、素直に喜べない。自分の言葉で、その違和感をうまく言い当てられたはずなのに、それがかえって、あたしの気持ちを、ますますもやつかせていた。




