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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第十九話 セレナという女

 休演日、あたしが街のカフェでお茶をしていると、一人の女性が、優雅な足取りで店に入ってきた。


 金髪を高く結い上げ、派手な羽根飾りのついた帽子、宝石をふんだんにあしらったドレス。明らかに、只者ではない雰囲気を纏っている。


「あら」


 その女性が、あたしに気づいて、こちらに近づいてきた。


「あなた、銀月座の子よね。噂は聞いてるわ、ホホホ」


「噂?」


「舞台でセリフ噛んでキレる子でしょう。面白い子がいるものね、ホホホ」


 あたしは、少し身構えた。


「あんた、誰よ」


「あら、失礼。私、隣町の劇団『金翼座』で、看板を張らせていただいてる、セレナと申します」


「金翼座って、あの、けっこう大きい劇団の」


「その通り。おかげさまで、客演の依頼も、引く手あまたでしてよ、ホホホ」


 その一言に、あたしの中で、何かが音を立てた。


「客演、余裕なの」


「余裕も何も、選ぶ側ですもの、私」



「まあ、あんたが客演でモテるのは分かったけど、演技の実力は別の話でしょ」


「あら、実力もございますわ。この前など、涙の演技をしたら、客席が一斉にすすり泣いてくれましたのよ、ホホホ」


「うちの舞台なんて、客席が一斉に爆笑してくれるわよ」


「それ、笑わせたくて笑わせてるのかしら?」


「状況によるわ!」


 思わず、素の関西弁で突っ込んでしまった。セレナは、それを見て、上品に、しかしはっきりと笑った。


「あら、面白い子。噂通りだわ、ホホホ」


「馬鹿にしとんのか」


「褒めておりますのよ」



 しばらく、二人の間で、微妙な火花が散った。


「今度、うちの劇団の舞台、観にいらっしゃいな。実力の差、見せて差し上げるわ」


「上等や。あたしも今度、そっち観に行ったる。で、あたしの舞台にも、いつか来てもらうからな」


「楽しみにしていますわ、ホホホ」


 セレナは、そう言い残すと、優雅な足取りで店を後にした。


「なにがホホホじゃ、明け方のフクロウの鳴き声みたいな笑い方しくさって」


 あたしは、その後ろ姿を睨みつけながら、そう独りごちた。


「あの金色のフクロウ、略して金フクには負けてられんな」


 あたしは、次に彼女と会う時のために、何か対策を練らなければと、頭を巡らせ始めていた。

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