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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第十五話 外部講師の洗礼

「今度、外部の特別講習、一緒に受けない?」


 アメリアが、珍しくそう誘ってきた。


「え、あんたと?」


「たまには、外の空気吸うのもいいでしょ」


 あたしは、少し迷ったが、自分の演技をさらに磨く機会だと思い、参加することにした。



 当日、講師を務めるのは、首都グランディアでも活動歴があるという、初老の演出家だった。


「では、まず簡単な発声練習から」


 あたしは、堂々と、腹の底から声を出した。


「もっと感情を乗せて」


「乗せてます!」


「乗せすぎです」


「え?」


「感情の量が、シーンに対して明らかに過剰です。もう少し、抑えて」


 あたしは、少しむっとしたが、ひとまず言われた通りにしてみた。


「……まだ、多いですね」


「これ以上抑えたら、無、になりますけど」


「その無、を、まず一度経験してみてください」


 その場にいた他の受講生たちが、小さく笑った。



 休憩中、アメリアが、あたしにそっと声をかけてきた。


「大丈夫?」


「大丈夫やない。まるで、火を消せ言われて、灰にされてる気分やわ」


「例えが極端すぎるでしょ」


「極端な指導受けたから、極端に返してるだけや」


 一方、アメリアは、講師から「安定感がある」「感情の抑え方が上手い」と、素直な評価を受けていた。


「あんたは、褒められてばっかりやん」


「そうでもないわよ。もっと踏み込んでほしいとも言われたし」


「贅沢な悩みやな、それ」



 午後の実技では、二人一組での即興演技が課された。あたしとアメリアの組み合わせになった。


「じゃあ、些細な喧嘩のシーンを、即興でやってみましょう」


 あたしは、思い切り感情を爆発させる演技を始めた。


「なんであんたはいつもそうなんよ!」


「ちょっと、台本にない関西弁、出てるけど」


「これがあたしの喧嘩スタイルや!」


「即興でも、キャラは保って」


 講師が、少し困った顔で見ていた。


「……悪くはないですが、あなたの中の『素』が、演技の途中で顔を出しすぎますね」


「それ、悪いことなんですか」


「舞台上では、時に困りますね。でも」


 講師は、少し考えるような間を置いてから、続けた。


「その『素』の勢い、嫌いじゃないです」


 あたしは、思わず聞き返した。


「え、それって」


「悪くはない、という意味です。ただ、制御を覚えると、もっと武器になる」



 その日の帰り道、あたしは、アメリアに、その言葉を反芻しながら話した。


「制御を覚えたら武器になるって、つまり今は、狙いも定めずに、力任せに振り回してる剣ってことよね」


「まあ、物騒な例えだけど、そうとも言えるわね」


「でも、いつか制御覚えたら、まるで聖剣やん、あたし」


「聖剣て、自分で言う?」


「誰が魔剣じゃ!」


「まあ、聖剣か魔剣かは、これからの磨き方次第ってことね」


「なんか、微妙に嬉しいような、腹立つような」


「両方受け止めればいいんじゃない」


 あたしは、その日習ったことを、頭の中で何度も繰り返しながら、家路についた。今日のところは、素直に、次にも活かそうと思っていた。

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