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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第十四話 座長の目算

「なあ、バロウ」


 閉演後、片付けをしながら、あたしはふと尋ねてみた。


「この劇団、いつから始めたん?」


「もう十五年くらいになるかな」


「そんな長いこと、よう続けてこれたな」


「まあ、色々あったよ」


 バロウは、そう言いながら、懐かしそうな目をした。


「最初は、俺一人で始めたようなもんでな。客もろくに入らない時期が、何年も続いた」


「へえ」


「潮目が変わったのは、お前が入ってきてからだよ」


「え、あたし?」


 あたしは、思わず声を上げた。


「お前が舞台でセリフ噛んで、客席にキレる。あれが、口コミで広がってな。おかしな評判だったけど、とにかく、客が来るようになった」


「それ、あたしの演技力が評価されたってわけやないやん」


「まあ、そうだけど」


「そうだけどて」


 バロウは、少し苦笑した。


「でも、結果的に、この劇団を今も続けられてるのは、お前のおかげでもある。それは、事実だから」



 その言葉に、あたしは、なんとも言えない気持ちになった。


「なあ、バロウは、あたしの演技、本当はどう思ってるん」


「正直に言っていいか」


「言うて」


「演技力だけで言えば、アメリアの方が上だと思ってる」


「うっ」


「でも、客を惹きつける力は、お前の方が圧倒的にある。それは、演技力とはまた別の才能だ」


「それ、まるで、教科書には載らへんけど、伝説として語り継がれるタイプの武将、みたいな言い方やん」


「言い得て妙だな」


「褒めてるようで、微妙に貶してるやん、それ」


「褒めてるつもりだけどな」



 その夜、あたしは、少し複雑な気持ちを抱えたまま、劇場を後にした。


 演技力では評価されていない。だが、それとは別の何かで、この劇団を支えている。その事実を、どう受け止めればいいのか、正直、まだよく分からなかった。


 だが、少なくとも、バロウが、あたしをただの客寄せパンダとしか見ていないわけではない、ということだけは、なんとなく伝わってきた。


「まあ、伝説として語り継がれる女優として、これからも生きていくか」


 あたしは、そう小さく呟きながら、いつもより少しだけ、軽い足取りで帰路についた。

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