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勝利を約束された女  作者: 中原九尾


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第十一話 ノエルが慕う理由

「ヴィクトリアさん、今日も素敵です!」


 いつものように、ノエルが目を輝かせながら、あたしを持ち上げてくる。


「でしょ。分かってるじゃない、ノエルは」


 あたしは、当然のようにそれを受け止めていたが、ふと、気になったことがあった。


「そういえば、ノエルって、なんでそんなにあたしのこと持ち上げてくれるの」


「え、それは、ヴィクトリアさんが素敵だからです」


「それはそうだけど、他の劇団員は、もうちょっと普通に接してくるでしょ。ノエルだけ、ずっと熱量高いわよね」


 ノエルは、少し照れたような顔をした。


「実は、あたし、入団する前、一度だけヴィクトリアさんの舞台、観たことあるんです」


「え、そうなの?」


「はい。まだ入団志望する前、他の劇団のオーディションに何回も落ちて、辞めようかどうか迷ってた時期で」


 ノエルは、少し遠い目をしながら、続けた。


「その時、たまたま銀月座の舞台を観に来て。ヴィクトリアさんが、セリフ噛んで、客席にキレて、それでも堂々と続けてる姿、観てて」


「あー、あれね」


「あの時、なんか、失敗しても堂々としてていいんだって、思えたんです」


 あたしは、少し面食らった。


「別に、あれは失敗を堂々と受け止めてたわけじゃなくて、ただキレてただけなんだけど」


「それでも、です。あの日から、あたし、ヴィクトリアさんみたいになりたくて、この劇団を志望したんです」


 あたしは、その言葉に、なんとも言えない気持ちになった。


(あたしみたいに、って、あたしの何を目指してるのかしら)


 だが、それを口には出さず、あたしは、いつも通りの調子で返すことにした。


「まあ、あたしを目指すなら、いい心がけよ」


「ですよね!」



 その日の帰り道、あたしは、ノエルの話を、少し反芻していた。


 あたしは、ただ、自分の信じる自分を、貫いてきただけのつもりだった。それを、真正面から「憧れ」として受け止められると、正直、いつもとは違う種類の気恥ずかしさがあった。


 だが、同時に、少しだけ、誇らしい気持ちもあった。


 どんな理由であれ、あたしの舞台を見て、何かを持ち帰ってくれた人間がいる。それだけは、疑いようのない事実だった。


「まあ、こういうのも、悪くないものね」


 あたしは、そう小さく呟きながら、いつもより少しだけ、軽い足取りで帰路についた。

ちょっとキャラ紹介的なエピソードを2話ほど挟もうと色々考えたところ、全然違う作風になってしまった気がします。

次から軌道修正します。

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