第4話 銀髪の弓使いに出会った時は?
皆さま、こんにちは、こんばんは。
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!
前回は、レンたちが狼の群れに追い詰められる中、森の奥から現れた銀髪の弓使い・リシアたちの援軍によって、なんとか危機を乗り越えました。
そして今回からは、異世界で初めて「人の集落」へ向かいます。
とはいえ、レンにはまだ言葉が通じません。
AIも、話しかけない限り何も教えてくれない、現実的な相棒のままです。
異世界なのに、コミュニケーションはゼロからのスタート。
果たしてレンは、この世界で居場所を見つけることができるのでしょうか。
それでは、第4話をお楽しみください!
狼たちは突然現れた援軍に動きを止めた。
その隙を逃さず、ガルドの剣が閃く。
「ハァッ!」
鋭い一撃が狼の首を裂いた。
続けて槍が突き出され、もう一匹が地面へ倒れる。
森の左右から矢が降り注ぐ。
狙われる場所は、どれも首だった。
銀髪の少女は迷いなく弓を引き、放つ。
一本。
また一本。
放たれるたびに狼が倒れていく。
まるで最初から弱点を知っていたかのような正確さだった。
残った狼たちは低く唸り、仲間の死体を一瞥すると、一斉に森の奥へ駆け去っていく。
静寂が戻った。
「……助かった。」
全身から力が抜ける。
気付けば足が震えていた。
ガルドが剣を鞘へ納め、俺の肩を軽く叩く。
何かを話しかけている。
表情を見る限り、心配してくれているらしい。
「……ありがとう。」
当然、言葉は通じない。
それでもガルドは少し笑い、軽く頷いた。
その時だった。
コツ、コツ――。
革靴が岩を踏む音。
銀髪の少女がこちらへ歩いてくる。
近くで見ると、俺と同じくらいの年齢だった。
風になびく銀髪。
透き通るような青い瞳。
華奢な体つきとは裏腹に、背負った弓には無駄な装飾が一切ない。
実戦のためだけに使い込まれた武器。
そんな印象だった。
少女は俺の目の前で立ち止まる。
そして、じっと俺を見つめた。
「…………」
気まずい。
何か話しかけられている気はする。
少女が口を開いた。
「────。」
知らない言葉。
意味は一つも分からない。
「……ごめん。分からない。」
俺が困って首を横に振ると、少女も小さく首を傾げた。
言葉が通じないことは理解したらしい。
その視線が、ふと俺の手元へ向く。
スマホ。
黒い板のようなそれを、不思議そうに見つめている。
しまった。
さっき戦闘中に何度も取り出していた。
怪しまれて当然だ。
俺は慌ててポケットへしまう。
その瞬間。
周囲の弓兵たちがわずかに身構えた。
空気が張り詰める。
(やばい……。)
武器だと思われたかもしれない。
俺はゆっくり両手を上げる。
何も持っていないことを示すためだ。
少女はしばらく俺を見つめたあと、小さく息を吐いた。
弓を下ろす。
周囲の兵たちも緊張を解いた。
助かった……。
その時、ガルドが少女へ何かを話し始めた。
俺を指差しながら、狼の方角を示す。
身振り手振りで必死に説明している。
さっき俺が何か叫んだこと。
狼の攻撃を知らせたこと。
そんな話をしているのだろう。
少女は黙って聞き、最後に小さく頷いた。
そして俺の前へ歩み寄る。
右手を胸に当て、静かに口を開いた。
「リシア。」
名前だ。
「……リシア?」
少女は頷く。
俺も胸に手を当てる。
「レン。」
リシアは少しだけ発音を真似した。
「……レン。」
思わず笑みがこぼれる。
異世界へ来てから初めて、自分の名前が誰かに伝わった。
その安心感は思っていたよりずっと大きかった。
リシアは俺を見つめたまま、小さく手招きをする。
どうやら「来い」ということらしい。
ガルドも笑いながら頷いている。
行くしかない。
この世界のことは何一つ分からない。
頼れる相手もいない。
それなら今は、この人たちについていこう。
俺はポケットの中のスマホを軽く握りしめる。
聞きたいことは山ほどある。
でも、それは一人になってからだ。
そう思いながら、俺はリシアたちの後を追って歩き始めた。
リシアたちの後を歩く。
狼との戦いが終わったというのに、誰一人として気を抜いていない。
戦士たちは剣を握ったまま周囲を警戒し、弓兵たちは森の奥へ鋭い視線を向けている。
俺だけが隊列の真ん中だった。
(……これ、守られてるよな?)
少し考える。
(いや、護送されてる可能性もあるな。)
笑えない。
異世界一日目で不審者扱いは、さすがにスタートダッシュが悪すぎる。
しばらく歩くと、リシアが足を止めた。
こちらへ振り返り、自分の胸へ手を当てる。
「リシア。」
「リシア。」
俺が復唱すると、彼女は小さく頷いた。
続いて、大柄な男を指差す。
「ガルド。」
「ガルド。」
ガルドは豪快に笑いながら胸を叩く。
どうやら正解らしい。
今度は槍を持った男。
「ダン。」
「ダン。」
さらに弓兵。
「エイル。」
「エイル。」
(よし。)
(まだ覚えられる。)
(あと二十人くらい増えたら、たぶん詰む。)
名前を呼ばれた本人たちは、少し嬉しそうに笑った。
言葉は通じなくても、名前だけは伝わる。
そのおかげか、さっきより空気が少しだけ柔らかくなった。
――ガサッ。
草むらが揺れた。
一瞬で全員の表情が変わる。
ガルドが剣を抜く。
リシアは弓を構え、矢を番える。
早い。
あまりにも早い。
俺も慌てて身構えた。
草むらから飛び出してきたのは――鹿だった。
鹿は俺たちを見るなり驚いて走り去っていく。
静寂。
ガルドたちは何事もなかったように武器を収めた。
俺だけが心臓をバクバクさせている。
(寿命縮むって……。)
そのまま三十分ほど歩いただろうか。
森が途切れ、視界が開けた。
高い木の柵。
見張り台。
煙突から煙が上がる木造の家々。
畑では何人もの人が作業している。
「村……。」
異世界へ来て初めて見る、人が暮らす場所だった。
少しだけ胸が熱くなる。
(やっと人里だ。)
(これで屋根のある場所で寝られる。)
(頼むから風呂もあってくれ。)
そんな期待を抱きながら門をくぐる。
そして次の瞬間。
村人全員の視線が俺へ集まった。
シーン……
子どもが母親の後ろへ隠れる。
老人が目を細める。
買い物帰りらしい女性は立ち止まり、籠を抱えたままこちらを見ていた。
「……。」
(空気が痛い。)
(転校初日の自己紹介でも、ここまで見られたことないぞ。)
リシアは気にする様子もなく歩き続ける。
俺だけが居心地悪そうに後ろをついていく。
やがて、一番大きな木造の建物へ案内された。
中から白髭を生やした初老の男が現れる。
ガルドが男へ何かを説明し始めた。
何度も俺を指差し、狼が来た方向を示している。
初老の男は俺を見ては話を聞き、また俺を見る。
その表情は難しそうだった。
(……絶対、俺の話してるよな。)
(「こいつどうする?」って会議が始まってる気がする。)
俺はそっと建物の陰へ移動する。
誰も見ていないことを確認して、ポケットの中でスマホを開いた。
画面をなるべく隠しながら、小さな声で話しかける。
《今の俺、どれくらい怪しい?》
すぐに文字が表示された。
『推測です。』
『非常に怪しいです。』
「即答かよ……。」
思わず小さくツッコむ。
《そんなに?》
『見慣れない服装。』
『身元不明。』
『未知の物品を所持。』
『警戒される要素が複数あります。』
「満点じゃねぇか……。」
ため息をつき、スマホをポケットへしまう。
結局、変に動かないのが一番だ。
そう腹をくくった、その時。
「レン。」
名前を呼ばれた。
顔を上げると、建物の入口でリシアがこちらを見ている。
さっき自分で教えてくれた俺の名前を、ちゃんと覚えてくれたらしい。
その表情は相変わらず無愛想だったが、不思議と敵意は感じなかった。
俺は一つ深呼吸をする。
そして、ゆっくりと建物の中へ足を踏み入れた。
異世界で初めて、人の暮らしの中へ入る瞬間だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第4話いかがでしたでしょうか!!
レビューとか頂ければ嬉しいです!!
最近暑すぎて小型扇風機をようやく買いました笑
あれが無いともう夏は越せません。。
皆さんも暑さには気を付けてくださいね!
それでは次回第5話もよろしくお願いします!




