第2話 異世界の知的生命体と出会った時は?
皆さま、こんにちは、こんばんは。
いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!
第2話からは、いよいよ主人公が異世界で初めて"人"らしき存在と出会います。
ただ、この世界では言葉も文化も何も分からない状態。AIも万能ではなく、分からないことは「分からない」と答える現実的な相棒です。
シリアスな冒険の中にも、主人公とAIのちょっとした掛け合いを楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、第2話をお楽しみください!
角笛の音は、それきり鳴らなかった。
森は再び静まり返り、風が木々を揺らす音だけが耳に残る。
俺は崖の縁から少し離れ、大きく息を吐いた。
「……どうする。」
スマホを開く。
《角笛が聞こえた。近くに人がいるかもしれない。向かうべき?》
数秒後、返事が表示される。
『情報が不足しています。』
『角笛を吹いた存在が友好的である保証はありません。』
『一方で、食料・水・安全な拠点を確保するには知的生命体との接触が必要となる可能性があります。』
『危険と利益を比較すると、慎重に接近する選択肢は合理的です。』
「つまり、『自己責任でどうぞ』ってことか。」
相変わらず正論しか言わない。
でも、その正論のおかげでさっきは助かった。
俺は深呼吸を一つすると、周囲を見回した。
《人が通った跡を見つける方法は?》
『地面が柔らかい場所、折れた草、踏み固められた土を確認してください。』
『人間は同じ経路を歩くことで痕跡を残す傾向があります。』
「テレビのサバイバル番組で見たやつだな。」
スマホをポケットへしまい、地面を注意深く見ながら歩く。
数分後。
「……あった。」
土の上に靴のような跡が残っていた。
しかも一つじゃない。
何人分かは分からないが、複数人が通った形跡だ。
「やっぱり人はいるんだ。」
少しだけ肩の力が抜ける。
文明。
最高。
できればコンビニもあってほしい。
そんな期待をした自分を殴りたくなった。
異世界にコンビニがあるわけない。
ガサッ。
右の茂みが揺れた。
全身が強張る。
「またか……。」
さっきの狼が頭をよぎる。
しかし飛び出してきたのは、犬ほどの大きさの不思議な動物だった。
耳が長く、灰色の毛並み。
ウサギにも鹿にも見える。
「……なんかゲームで見た事あるぞ?」
思わず呟く。
当然、違う。
生き物は俺を見るなり固まり、一瞬だけ見つめ合った。
「頼む、逃げるな。」
次の瞬間。
バッ!
「あっ、やっぱ逃げるよな!」
森の奥へ一瞬で消えていった。
「あの脚力ちょっと分けてくれ……。」
俺が苦笑した、その時だった。
――ガチャン。
金属音。
鎧同士がぶつかったような音が聞こえる。
反射的に近くの木へ身を隠した。
聞き慣れない言葉が耳に届く。
「──────。」
男が二人。
革鎧を着て、槍を持っている。
腰には剣。
背中には弓。
完全武装だ。
俺はそっとスマホを取り出した。
《人を見つけた。でも何を話してるか分からない。》
『音声がないため分析できません。』
「知ってた。」
『音声データがあれば分析を試みます。』
「録音してる余裕あったら苦労しない。」
男たちは俺に気付かず歩いていく。
このままやり過ごせる。
そう思った矢先だった。
一人が突然立ち止まり、地面を指差した。
「……!」
俺の足跡。
「終わった。」
思わず小さく呟く。
完全に探偵モード入ってる。
男は槍を構え、慎重にこちらへ近付いてくる。
「やばい……。」
逃げるか。
出ていくか。
迷っていると、男が大きな声を上げた。
「そこに誰かいるのか!」
意味は分からない。
でも、
「出てこい」
くらいのニュアンスなのは分かった。
俺は観念して両手を上げる。
武器は持っていない。
それだけでも伝わってほしい。
ゆっくり茂みから姿を現す。
男たちの目が見開かれた。
驚いている。
俺も同じだった。
近くで見ると、二人の耳は少しだけ尖っている。
エルフ……ではない。
でも人間でもない。
「異世界来たなぁ……。」
思わず小さく漏れる。
その瞬間。
二人のうち一人が、ゆっくりと剣の柄に手を掛けた。
……終わった。
異世界初日。
狼を崖から落として生還したと思ったら、今度は人に刺されてゲームオーバーとか笑えない。
「ま、待って!」
両手を勢いよく上げる。
もちろん通じるはずがない。
男たちは何かを話し合いながら、警戒したまま近付いてくる。
「……そうだ。」
俺はスマホを取り出した。
その瞬間。
「!」
二人の目つきが変わる。
槍の穂先が完全に俺へ向いた。
「違う違う違う! 武器じゃないから!」
……あ。
今のも当然通じない。
《敵意がないって伝えるにはどうしたらいい?》
数秒後、返事が表示される。
『一般的には、武器を持たないことを示し、急な動きを避けることが有効です。』
『文化が異なるため、成功は保証できません。』
『刺激しないことを推奨します。』
「つまり"頑張れ"ってことね。」
俺はため息をつき、スマホをゆっくり地面へ置いた。
そして両手を上げたまま一歩下がる。
年上らしい男が慎重に近付き、スマホを見下ろした。
「……。」
しゃがみ込む。
恐る恐る指でつつく。
反応なし。
今度は裏返す。
横から見る。
軽く振る。
「いや、携帯ゲーム機じゃないんだけど。」
もちろん伝わらない。
男は首をかしげたまま電源ボタンを押した。
パッ。
画面が光る。
「!!」
男が飛び退いた。
もう一人まで槍を構え直す。
「そんな驚く!?」
俺までびっくりした。
その拍子に、スマホが男の手から滑り落ちる。
「ちょっ!」
ガシッ。
落ちる寸前で男がキャッチした。
……運動神経いいな。
男はしばらくスマホを見つめたあと、恐る恐る俺へ差し出してきた。
返してくれるらしい。
「ありがとう。」
受け取る。
もちろん意味は伝わらない。
でも、さっきより敵意は少しだけ薄れた気がした。
二人は今度は俺の服を見始める。
Tシャツ。
ジーンズ。
スニーカー。
どう考えても、この世界じゃ浮いている。
特にスニーカーをじっと見られると何か恥ずかしい。
「そんなに珍しい?」
男たちは顔を見合わせる。
そして年上の男が自分の胸を軽く叩いた。
「ガルド。」
「……名前か。」
俺も自分の胸を指差す。
「レン。」
男は首をかしげる。
「……レン。」
「そうそう。」
少しだけ笑う。
異世界で初めて会話……いや、会話じゃないけど意思疎通ができた気がした。
するとガルドが俺の肩を軽く叩く。
「お、仲良くなれそうじゃ――」
その瞬間だった。
ギャアアアアアアアッ!!
森の奥から、聞き覚えのある叫び声が響く。
俺の笑顔が一瞬で消えた。
「あ。」
ガルドたちの表情も変わる。
二人は森の奥を見て何か叫んだ。
次の瞬間。
ガルドが俺の腕を掴む。
「え?」
勢いよく引っ張られる。
「ちょっ、痛っ!」
抵抗する暇もない。
《何が起きた?》
『音声のみでは判断できません。』
『走ることを推奨します。』
「珍しく役に立つ!」
俺たちは森の中を走り始めた。
後ろから聞こえてくる。
ドドドドドドッ!
重い足音。
一つじゃない。
二つでもない。
何頭分あるのか分からない。
恐る恐る振り返る。
木々の隙間に、赤い瞳が一つ、また一つと浮かび上がる。
崖から落ちた一匹で終わりじゃなかった。
あの怪物には――群れがいた。
おはこんにちばんわ!!
第2話いかがでしたでしょうか!!
昨日から三連休ですね!皆さんは何してお過ごしになるんでしょうか!
私は友人と呑みに行く予定です♪
酔いが醒めたら異世界転生してないかな……




