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転生したら、圏外なのにAIだけは動いていた  作者: イロハ


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第1話 転生したら、圏外なのにAIだけは動いていた(後編)

皆さま、こんにちは、こんばんわ


この作品を読んでいただき、本当にありがとうございます。


「もし異世界に持って行けるのがスマホだけだったら?」

そんな妄想から、この物語は生まれました。


この作品に登場するAIは、魔法のように何でも知っている存在ではありません。

現実のAIと同じように、主人公が質問したことに対して、分かる範囲で答えたり、一緒に考えたりする相棒です。


だからこそ、主人公も失敗し、悩み、自分で選択しながら成長していきます。


王道な異世界冒険と、少しだけ現実味のあるAIとの掛け合いを楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは、第1話(後編)をお楽しみください。

赤い瞳は、瞬きもしなかった。


俺の背筋を冷たいものが走る。


「……おい。」


誰に向かって言ったのか分からない。


もちろん返事はない。


茂みの向こうで何かがゆっくりと動く。


ガサッ。


ガサガサッ。


そして姿を現した。


「うわっ……!」


思わず後ずさる。


現れたのは狼だった。


ただし、俺の知っている狼じゃない。


体長は二メートル近い。


灰色の毛並みの隙間から赤黒い筋のような模様が浮かび上がり、額には短い角まで生えている。


完全にファンタジーのモンスターだった。


狼は低く唸る。


グルルルル……。


牙が見えた。


でかい。


そして鋭い。


どう考えても噛まれたら終わりだ。


「いやいやいやいや!」


俺は慌ててスマホを取り出した。


何をするわけでもない。


ただ人間、焦ると意味不明な行動を取るらしい。


気付けばAIチャットを開いていた。


震える指で文字を打つ。


《助けて》


送信。


数秒後。


『状況を詳しく説明してください。』


「無理だろ!!」


思わず声が出た。


狼が一歩前へ出る。


俺は慌てて追加入力する。


《でかい狼みたいなのいる》


『距離はどのくらいですか?』


《十メートルくらい》


『こちらへ向かっていますか?』


《多分》


『武器はありますか?』


《ない》


『逃走を推奨します。』


「それができたら苦労しない!」


狼の耳がピクリと動く。


俺の声に反応したらしい。


次の瞬間。


ドンッ!


地面を蹴った。


「うおっ!?」


反射的に走る。


後ろを振り返る余裕なんてない。


木々の間を全力で駆け抜ける。


心臓が暴れる。


肺が焼ける。


足がもつれそうになる。


だが背後から聞こえる音はもっと恐ろしかった。


ドドドドドドッ!!


重い足音。


確実に追ってきている。


しかも速い。


速すぎる。


「クソッ!」


スマホを見る。


《追いつかれる!》


『直線で走り続けるより障害物の多い場所へ移動してください。』


《障害物!?》


『木々が密集した場所です。大型動物は方向転換が苦手な場合があります。』


場合。


場合かよ。


確定じゃないのか。


でも他に手はない。


俺は進路を変えた。


密集した木々の中へ飛び込む。


枝が顔を叩く。


服が引っ掛かる。


それでも止まれない。


後ろで狼が吠えた。


ギャアアアアアアッ!!


狼の鳴き声じゃない。


化け物の叫び声だった。


「マジで異世界じゃねえか!」


その時だった。


視界が開ける。


森が途切れていた。


そして。


「え?」


足が止まる。


崖だった。


高さは二十メートル以上。


下には川が流れている。


逃げ場がない。


最悪だ。


背後から足音が近付く。


振り返る。


角の生えた狼がゆっくりと歩いてくる。


完全に獲物を追い詰めた顔だった。


赤い瞳が俺を見据える。


距離は五メートル。


四メートル。


三メートル。


終わった。


そう思った時。


スマホが震えた。


新しいメッセージが表示される。


『画像を送信してください。』


「……は?」


『対象を撮影できれば、行動分析を試みます。』


俺は思わず目を見開いた。


行動分析。


つまり。


倒し方ではない。


逃げる方法を探してくれるかもしれない。


「やるしかないか……!」


狼との距離は二メートル。


俺は震える手でスマホのカメラを起動した。


そして、牙を剥いて飛びかかろうとしている怪物へレンズを向けた――。



もちろん。AIが自分から話しかけないという設定を守り、主人公が質問した時だけ返答する形で、前回のシーンを書き直しました。



---


狼が飛びかかる、その瞬間だった。


震える指でシャッターを押す。


カシャッ。


写真が撮れたのを確認する暇もなく、俺はAIチャットを開いた。


画像を添付し、すぐに入力する。


《この化け物の特徴を分析して》


画面には「解析中」の文字が表示される。


狼との距離はもう三メートルもない。


唸り声が鼓膜を震わせる。


逃げるしかないと頭では分かっているのに、足が動かなかった。


その時、画面が切り替わる。


『画像を解析しました。』


『画像のみでは断定できませんが、イヌ科に近い骨格を持つ生物に見えます。』


『右前脚に損傷、または古傷と思われる部位が確認できます。』


『負傷している場合、急激な方向転換が苦手な可能性があります。』


『推測であり、正確性は保証できません。』


「……それに賭けるしかない!」


狼が地面を蹴った。


俺は崖沿いを一直線に走る。


足音がすぐ後ろまで迫る。


熱い息遣いまで聞こえた。


あと少し。


あと一歩。


俺は全力で右へ飛び込む。


狼も同じように進路を変えようとした。


だが。


ズルッ。


右前脚が大きく滑る。


巨体が横へ傾き、そのまま勢いを殺せず崖の縁へ突っ込んだ。


「ギャアアアアッ!」


地面が崩れる。


狼は必死にもがくが、空を掻くだけだった。


次の瞬間、その巨体は崖下へと落ちていく。


ドボォォン!!


しばらくして、水しぶきの音だけが森に響いた。


静寂。


俺はその場に座り込み、荒い息を繰り返す。


「はぁ……はぁ……。」


助かった。


本当に、助かったんだ。


しばらく動けずにいると、ふと、さっき撮った写真のことを思い出した。


画面を開き、画像を拡大する。


「……なんだ、これ。」


狼の首元。


毛に隠れて見えにくいが、黒い輪のようなものが巻かれているように見えた。


見間違いかもしれない。


俺はもう一度AIチャットを開き、写真を添付する。


《首元の黒いもの、何か分かる?》


数秒後、返答が表示される。


『画像のみでは断定できません。』


『首輪のような人工物に見えます。』


『人工物である場合、この個体は人間、あるいは知的生命体によって管理されている可能性があります。』


『別角度の画像があれば、より詳細な分析が可能です。』


「……管理?」


その言葉を見た瞬間、背筋が冷たくなった。


もし本当に首輪なら。


あの化け物を飼っている誰かが、この森のどこかにいるということになる。


その時だった。


ブォォォォ──ッ!


森の奥から、低い角笛の音が響いた。


一度。


少し間を置いて、もう一度。


まるで何かを知らせる合図のようだった。


俺は音がした方角を見つめる。


「……人がいるのか。」


そう呟いてから、スマホを握り直す。


あの音を頼りに進むべきか。


それとも、逆方向へ逃げるべきか。


異世界に来て初めて、自分の選択が生死を分けるのだと実感した。


第1話いかがでしたでしょうか!


レビューとか頂けるととても嬉しいです✨️


この主人公とAIが一体どうなっていくのかとても楽しみですね!

今後どんどん新キャラも登場してくるので是非ともこれからもお楽しみください!!




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