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テレパシーの使い方

もう一つの手段であるテレパシーはどちらかが魔法を使える状態・または準備が整っている場合にしか使えない。それに、テレパシーを使うとき、簡単にビビビッと通信できるわけではない。魔法が使える状態であれば、ビビビッとすぐにテレパシーを送れるが、使えない状態だと、まず周りの標識や広告、ポスターから通信がしやすい状況かを確かめる必要がある。


例えば、今私が立っている歩行者道路のすぐ横には、道路に【スピード落せ】と書いてある。この場合、通信環境はあまりよくない。

周りの目に映るポスターなども確認してみる。私は、商店街のほうに見える選挙ポスターに目をやった。【○○を進める。】と書いている。ついでに時刻も確認する。テレパシーを送る間、あまりにも時間がかかると良くない。商店街の時計を確認すると、時刻は22時31分を指している。商店街のに並ぶコロッケの名店の広告が目に飛び込んできた。【出来立て!やけど注意!ゆっくり食べてね】

…。通信環境は好調というわけではないが、ゆっくり、集中してテレパシーを送れば、繋がりそうだ。

おそらくメッセージ的に、火星のみなみが魔法を使える状態なのかもしれない。私たちは、母なる惑星からこのように、地球にある文字などによって指示やメッセージを送ってもらっている。私たちの惑星ではないので、簡単にコンタクトを取ことはできないためだからである。そして、テレパシーを送れる通信環境だったとしても、懸念点がある。

魔法を使えない状態でテレパシーを送る際、少しぼんやりして体をリラックスさせ、自身の意識を3分の1、テレパシーを送る相手に飛ばさなくてはならないのだ。その際にテレパシーを使っていることが敵にばれるなんてことがあったら、すぐに意識を戻したとしても、その一瞬を突かれ、大惨事になってしまう可能性もあるのだ。

しかし、このまま何もしないわけにもいかない。何をしてくるのかわからない、意図が分からないからだ。

……通信環境は確認できた。あとは選択のみ。


私が今ここで、魔法を使える状態になるか、テレパシーを使うか…。


この状況下で、私は決断できないなんてぼやいている暇はなかった。危険を覚悟で、しかし最低限の危険に抑える覚悟のうえで。

私は、ドッペルゲンガーにバレないように、テレパシーで通信を試みた。ゆっくりと深呼吸をし、意識をぼんやりさせる。立体視のトリックアート画像を見る時みたいに、隠された焦点を合わせるように…。


お願い…。誰か、誰か繋がって……!!

目を開いたまま、意識は3分の1を通信相手に飛ばすイメージで。しかし今回は通信環境はまずまずといったところなので、集中力を高く保って。

みなみに通信を試みる。お願い、待っている暇はないの。みなみ…!通じて…!ドッペルゲンガーはまだ、丸山くんに興味津々と言ったところだ。早く…。気付かれる前に。


(…み~のた~めに翼に~な~る♪)


しばらくすると、遠くからみなみの鼻歌らしき声がだんだんノイズなく聞こえてくる。しかし、頭の中でみなみに呼びかけるが、応答はない。もっと集中しないと。ふんわりと頭の上に生えた何本かのコードを一つに束ねるように、集中力を高めた。一瞬だけ、一瞬だけほとんど周りの声も聞こえなくなるくらい、集中………。

呼びかけは、やめずに、意識をみなみにだけ集中。


集中…。


(~の日あの時~あの場所で~き~み~に〜会え〜なかったら…?)


(…ん?誰かいる?)


みなみが私に気が付いたようだ。すぐに私はみなみに状況を伝える。


(みなみ、緊急だからなにも質問せずに聞いて)

(なんだ律樹か。はいはい)


みなみにテレパシーを介してイメージを送った。少しラグはあったものの、思ったよりも早くに返答が来た。


(ふむふむ、とりあえず俺見回り中だから、切り上げてすぐ向かうね。律樹。それまで頑張って)


みなみにイメージを送ったので、すぐに意識をすべて自分に戻す。

途端、どっと疲れが襲ってきた。激しい眠気と脱力感。それもこれも、私がまだこの体に慣れていないことが原因…。

今のやり取りに地球時間でどのくらいの時間をかけてしまったのか、目の前の商店街の時間を確認する。さっき商店街の選挙ポスターを見たとき、ついでに確認した時の時刻は22時31分。今は22時32分を指していた。1分か…。

秒までは確認できなかったため、きっかり60秒もかけてしまったのかはわからないが、最高で60秒は時間がかかりすぎだ。

きっと水星のかけらの魔法使いのツバメなら、調子が悪くても20秒でできたはず。


それにしても、この、おそらく魔物の類。粘土人間とタイプが違うように見える。それとも、粘土人間がこの短期間で進化してしまったのか。そもそもなぜ、丸山くんの姿になることを選択したのか…。いろいろと考えながら、次の動きを考えていると、

一通り丸山くんを観察して満足したのか、ドッペルゲンガーはニッコリと微笑み、丸山くんに対してこう言った。


「代わって!」

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