惨敗
第九話 惨敗
それから何度か打ち合った。
結果は、直人の惨敗だった。
最初の一本こそ取ったものの、その後は同じようにはいかなかった。
「ほんとに強い人には、不意打ちしかできないですね」
直人は苦笑しながら、桂に笑いかけた。
桂も笑った。
「しかし、さっきのは驚いた」
「さっきの?」
「いなくなったときだよ」
桂は木刀を持ったまま、直人の動きを思い返すように首を傾げる。
「横へ抜けたのかと思ったら、ほとんど後ろじゃないか」
「はい」
「どうやるんだ?」
直人の顔が少し嬉しそうになる。
「それはですね。軽く振ってください」
二人がもう一度向かい合う。
さっきまで稽古をしていた門人たちも、何事かと集まってきた。
「いきますよ」
桂が軽く木刀を振る。
直人は自分の木刀を、その剣に軽く当てた。
カン。
「ここで剣筋を確認するんです」
「剣筋を?」
「はい」
直人は桂の木刀に触れたまま、
「それで、右足を大きく一歩踏み出して――」
すっ、と前へ出る。
「そのまま」
身体をくるりと回した。
次の瞬間。
直人は桂の、ほとんど背後に立っていた。
「で、この流れのまま」
こつん。
木刀を桂の背中に当てる。
「こうです」
「おおっ」
周りの門人から声が上がった。
桂も振り返り、目を丸くしていた。
そしてすぐに笑う。
「おもしろい」
直人の木刀を指差した。
「僕にもやらせろ」




