買い物
第四話 買い物
暑い。
クーラーが恋しい。
千葉道場の軒下で、直人は上半身裸のまま風に当たっていた。
そこへ、さな子が外へ出かけようとしてやってくる。
「さなちゃん。どこ行くの?」
さな子が眉を寄せる。
「直人さん。さなちゃんはやめてください」
その表情が、また可愛い。
「うちに入り浸ってるんだから、入門すればいいのに」
「んー」
直人は柱にもたれた。
「やっぱり僕のベースは、合気道でいたいのよ」
「合気道……」
「それにさ」
直人は道場の中に並ぶ木刀や刀を見る。
「刀って、やっぱり物騒じゃん」
さな子はしばらく黙って直人を見た。
「……今さらですか?」
「今さらです」
「ふふ…」
さな子が軽く笑う。
「買い物?」
「ええ」
「なら、荷物持ち」
直人は軽く身支度をすると、すぐに立ち上がった。
「あっ、別にいいのに……」
「遠慮しない」
直人は笑った。
口実のデートだ。
これは悪くない。
――と、思った。
帰り道。
直人の両手には野菜。
肩には米。
さらに味噌と酒まで抱えていた。
「……さなちゃん」
「なんですか?」
「これ、一人で持って帰るつもりだったの?」
さな子は不思議そうに直人を見る。
「ううん」
「だよね」
「直人さんがいたから」
「…………」
直人は、自分が抱えている大量の荷物を見る。
もう一度、さな子を見る。
さな子は涼しい顔で歩いている。
「遠慮がない」
「遠慮しないでって言ったの、直人さんですよ」
「そうだけどさあ……」




