雑話【とある木菓子商の手記】
薔薇ノ國、北方には宗主里の苹果の里。そこから南に進むと桃・梅・杏・李などが見えてくる。さらに下ると桜桃・木苺などが見え、さらに南方の蜜柑ノ國方面には、花梨と枇杷の里がある。
やはり北に行くほど上等な果物が多い……がしかし桃はどうにかなるまいか。痛みやすくて輸送もままならない。かつて出回っていた苺のようだ。苺は木に実らないから、果物の紛い物なのは言うまでもない。腐りやすいのもその証拠だ。その点、桃は確かに果樹に実るから果物ではある。が、腐りやすい点はやはり神の意思を順当に受け継いでいないと言える。
それに比べて苹果や梅などは、やはり格が高い。さまざまに加工もできて保存も簡単だ。これは、神の意志の実践を忠実に出来ている証明であろう。
彩果姫の寿命は、長くても四十いかないと聞く。もし子が産まれれば、それと同時に命は尽きるそうだが、であれば能力の高い姫は使えるだけ使ってから子を産ませたほうが得なのではないだろうか。もし能力のない子が生まれてしまったら商売も上がったりだ。今度、なるべく果樹園を増やしていただくように上申しておこう。
そういえば、李の里が里狩りにあったようだ。李は酸っぱく甘味が薄くて、杏ほどに小ぶりだ。しかし、杏は生薬になる。薬にもならぬ李はとてもじゃないが、果物とは言えない。桃に似ているから縁起物として仕入れちゃみたが、鳴かず飛ばずだった。好きこのむのは、あの里の田舎者たちだけだ。桃のなり損ない、と言ったところか。
さてあの土地は、どの里が利用するのだろうか。願わくは、輸送が楽になるから桃あたりがきてくれれば助かるのだが。とは言え、あそこの姫は高慢過ぎる。他の里では数人の姫がやっているところ、一人でも相当な産出をできる力を有し、その果実も木菓子らしく糖度が高い……これは確かに秀でていよう。が、あの無駄に高い気位が全てを台無しにしている。いつか自分の首を苦しめることだろう。早く代がわりして欲しいものだ。




