IF 「時が止まったかのような世界で」
灰色の世界は何もかもが自由だ。走っている車もなければ、歩いている人もいない。時に追われる事もないから何をしても良い。社会の当たり前の営みから大いに外れた無秩序な世界。
突然だが、人は一人では生きられないという。なぜならば、弱いからだ。弱いから誰かを求め、自分の足りない部分を補い合う。それがこの社会の当たり前であり営みだ。
けれど、今、この世界で一人となった私は何一つ不自由なく暮らせている。元々、殆どの時間を一人で過ごしてきた。だから、直ぐに受け入れられるのかもしれない。むしろ、学校と言う檻の中に閉じ込められる事がなくなったから日々を自由に生きる事が出来る。
もちろん、食事は必要だから今、まさに突如として無人となったコンビニに押し入っては菓子パンやおにぎりの一つを頂戴しているわけだが。コンビニ内は薄暗い。全てが灰色。防犯カメラは作動しているのか分からず、常に人が立っているレジ内にも人の姿はない。そこは依然にも入った事があるが無人ではなく有人レジにも関わらず、だ。当たり前が崩れた日常。例え、バールのようなもので窓の一つを割って、ガラスが飛び散ったとしても警察が来ることもなく誰にも咎められることもなく。手に持っているパンの賞味期限も果たして意味は為すのか。奥に見える時計すらもずっと止まっているのに。
自動ドアを手で無理やりこじ開けて外に出た。どんよりとした空。仮に晴れていたとしても私にはもう判別することは出来ない。コンビニの裏、路地裏に行ってしゃがみ込む。
先程、拝借したモノを口に一口、含む。もしゃもしゃと口に入れた後、飲み込む。なぜなら、人にとって食事は必要だから。
いや、必要?
それは、本当?
そこで私もいつもの当たり前に毒されていた事に気づく。食事が必要なのは生き物ならば当然の事だろう。なら、今の私は。この世界で、一人で生きる私は?
手じかにあった何やら尖った石を掴む。一切の迷いもなく自分の首を切る。致命傷。血が流れ、出ない。出ていたとしてもそれが血なのかは果たして私には分からない。そうだ。私はもう人ではない。
私は思う。完璧な存在とは人とあらず。一人でも、一つの存在でも生きられる者だと。何をするわけでもなく、何が必要なわけでもなく生きられる存在であると。確かにそんな存在であれば、鬱陶しい欲求や邪な気持ちに支配されずに済む。自立をした存在だ。
首と体。二つに分かれた首の方にある私の顔が薄く笑う。そして、次の瞬間には何事もなかったかのように二つがくっつき再び私という形を作る。そのまま路地裏を背に歩き出す。
そうか。そうか。私はもう人ではないのか。この存在が何と呼ばれる存在なのか分からない。でも、そんなのどうでも良い。呼び名など周りが勝手に決めるもの。周りがいなければ意味がないのだから。手に持った鋭利な小石を強く握りそして、握りつぶす。パラパラと小石が落ちる。
きっとこんなものに頼らなくても私は満たされる。
さて、何をしようか。
とりあえず、この道に沿って歩いて行こうか。
電車のレールが続く砂利道。そこの線路を伝って歩いて行く少女の姿。その少女はこの世界でたった一人。唯一の存在。




