鷲の波状攻撃
「——隙が大きいやんね、長崎」
具志堅の感情を排した声がリングに響く。
力武の圧倒的な熱量に押されているかに見えた沖縄ペアだったが、その瞳は一度として揺れなかった。具志堅の視線が射抜いたのは、力武の影で機を伺っていた小柄な菊池だった。
「沈め、小さいの」
具志堅の合図と同時に、我那覇が巨躯を揺らして前に出た。力武の突進をその身で受け止め、物理的な「壁」となって二人の連携を分断する。
一瞬の孤立。
「——逃がさんばいッ!!」
菊池が反射的に左を振るうが、具志堅の『島風』はその拳が届くよりも早く、大気の揺らぎさえ利用して菊池の死角へと滑り込んだ。
「チェックメイトだ」
高速ストレートが、紫色の閃光となって菊池の顔面を真っ向から貫く。それと寸分違わぬタイミングで、壁となっていた我那覇が体を入れ替え、岩のような拳を菊池の無防備な脇腹へ抉り込んだ。
上を具志堅、下を我那覇。完全同期された二つのエネルギーが、菊池という一つの「点」に集中する。
「ガハッ……あ……ッ!!」
菊池のウォッチが異常な警告音を発した。
『致命的同期衝撃を検知。寿命、緊急喪失——マイナス一年、二年、三年!』
菊池の身体はくの字に折れ曲がり、床に叩きつけられた。ウォッチの表面がひび割れ、青白い寿命の光が霧のように漏れ出す。
「菊池ィィィィッ!!」
我那覇を振り払った力武の咆哮が、アリーナに響いた。
だが、倒れた菊池はピクリとも動かない。
観客席で拳士は、思わず立ち上がっていた。
「……嘘だろ。あの菊池が、一瞬で……」
伊勢谷が血の滲む唇を噛み締めながら、黙って力武を見ていた。
リング上に立ち尽くす力武の前に、二羽の鷲がゆっくりとその翼を広げた。




