表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『寿命の拳(からくり・ボクシング)』  作者: 水前寺鯉太郎
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/54

宿命の頂上決戦

二一〇〇年十一月末。広島グリーンアリーナ。

 超満員の観客席の片隅で、拳士は顎を固定する包帯の上から、苦々しくリングを見つめていた。隣には全身を湿布の臭いで包んだ伊勢谷が、無表情に座っている。二人のウォッチが刻むのは、敗北によって削り取られた「数年」という短すぎる余生だ。

 「……見ていろ、小松原くん。僕たちが届かなかった『零コンマ一秒』の先で、何が起きるのかを」

 「決勝戦。……長崎、始めようか」

 青コーナー。具志堅が静かに「左」を構える。一分の乱れもない。

 対する赤コーナー。力武が不敵な笑みで生身の拳を突き出した。

 「よかよ、ワシ野郎。……その綺麗な羽ば全部毟って、佐世保のドブ川に沈めてやるたい」

 ゴングが鳴った。

 開始一秒。拳士を二度沈めたあの閃光が、力武の顔面を真っ向から捉えた。

 「ガッ!!」

 だが、力武は倒れなかった。首の筋肉を岩のように硬直させ、衝撃を「正面から受け止めた」のだ。

 「……遅か。拳士のカウンターの方が、まだ『重さ』のあったばい」

 力武の瞳に、凶々しい赤光が宿る。

 そこからは、システムと物理の削り合いとなった。具志堅が零コンマ一秒の隙を突いて十発の「点」を打てば、力武はそれを肉体で耐え凌ぎ、たった一発の「面」の暴力でアーマーをひしゃげさせる。伊勢谷がはじき出す予測データは、両者の異常なエネルギー消費によって刻一刻と書き換えられていった。

 「……拳士。あいつらを見て、何を思う」

 背後から竹原が静かに声をかけた。

 「具志堅は『最適解』だ。力武は『不条理』だ。……その答えが分からん限り、お前は一生、その特等席から降りられんぞ」

 リング上では、具志堅の「双位・カウンター」に対し、力武が「相打ち前提の頭突き」でシステムをバグらせようとしている。

 拳士は、握りしめた拳が白くなるのを自覚した。

 「……俺は……」

 包帯の下で、低く呻く。

 「俺はあいつらを、特等席で見学するためにここに来たんじゃねえ……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ