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14:ミミと妹ナナのポルトー到着&「夏のひまわり大作戦」 【前編】:東の国からの便りと、小さな妹ナナとの出会い

14:ミミと妹ナナのポルトー到着&「夏のひまわり大作戦」

【前編】:東の国からの便りと、小さな妹ナナとの出会い


【AM 08:30 | 港町ポルトー・宿屋「海猫亭」前】


8月上旬。港町ポルトーには、眩しい真夏の太陽が照りつけ、青い海から潮風が吹き抜けていた。


「ふぁぁ〜〜あ……! 今日もぶちええ天気じゃねぇ。お日様がギラギラしとるわ」


ひよりは作業着の袖をまくり上げ、呉弁で伸びをした。 腰の『おみくじ箱』がカコンと心地よい音を立てる。


『ひより様! 本日の気象データ、気温三十二度。絶好の冒険日和にございます!』 竹定規の付喪神・竹千代が、カチリと目盛りを光らせて数値を弾き出した。


その時だった。


「ひよりお姉ちゃ〜〜〜〜ん!!」


港の波止場の方から、聞き覚えのある元気いっぱいな叫び声が響いてきた。 見操ると、大きな猫耳をピンと立て、尾をフリフリと激しく揺らした亜人少女・ミミが走ってくる。


「ミミちゃん! お帰りなさーい!」


ひよりが手を振って駆け寄ると、ミミは勢いよくひよりの腰に抱きついてきた。


「ただいまやき! ひよりお姉ちゃん、会いたかったがやきーっ!」


「うちも会いたかったよ! 東の国からのお手紙で今日帰ってくるって聞いて、待っとったんよ」


ひよりがミミの頭をなでなですると、ミミの少し後ろから、車椅子をゆっくりと押して歩いてくる医療ギルドの職員と、その車椅子の上にちょこんと座っている小さな影が見えた。


「ミミちゃん……あの子が……?」


「うん! あたいの自慢の妹、ナナやき!」


ミミが車椅子の隣へ駆け寄り、誇らしげに胸を張った。


車椅子に座っていたのは、ミミと同じように頭に小さな猫耳を生やした、五歳ほどの小さな亜人少女だった。 くりくりとした栗色の大きな瞳をしているが、肌は少し青白く、小さな手で膝の上のブランケットをギュッと握りしめている。


ミミが優しくナナの肩に手を置いた。


「ナナ、この人があたいの師匠で、世界一優しくて強い冒険者のひよりお姉ちゃんやき! それに、愉快な付喪神のみんなやき!」


「……っ」


ナナはひよりと、その周りに実体化している大きな木製しゃもじの『飯蔵』や、朱色の袴の『紅緒』を交互に見つめると、びくっと身体を強ばらせ、小さな猫耳をパタリと伏せてミミの影に隠れてしまった。


「あ、ごめんねぇ。大きな人らがいっぱいおって、ビックリしちゃったね」


ひよりは呉弁で優しく囁くと、ナナと目線が同じになるように、車椅子の前で静かに膝をついた。


「初めまして、ナナちゃん。天照ひより言います。ミミちゃんから、ナナちゃんのこといっぱい聞いておったよ。ポルトーへようこそね」


ひよりが柔らかい笑顔を向けると、ナナはミミの服の裾をギュッと握りしめたまま、小さな声でつぶやいた。


「……ナ、ナナ……です……。ミミお姉ちゃんのお世話になってます……」


「えらいねぇ、ちゃんとお名前言えたね」


ひよりがニッコリ微笑むと、ミミが少し表情を曇らせて、ひよりに耳打ちした。


「……ひよりお姉ちゃん。東の国のお医者さんに見てもらったがやきけど……ナナの病気、まだ完全には治ってないがやき……」


「そうなん……?」


「うん……お薬で進行は止まったがやきけど、体力が落ちちゅうから、風通しのいい港町で長期の療養と治療を続けなきゃいかんって言われたがやき。だから、ポルトーの医療ギルドに通いながら、しばらくここで一緒に暮らすことになったがやき」


ミミの言葉に、ひよりの胸がギュッと締め付けられた。 五歳という小ささで、つらい病気と闘いながら、遠い東の国から長旅をしてきたのだ。


「そっか……ミミちゃんも、ナナちゃんも、ぶち頑張ったねぇ」


ひよりが呉弁でミミの肩を抱きよせると、リュックの中から、朱色と黄色のモコモコカバーを着たトタン湯たんぽの『ぬくもり』が、ぽんと膝の上に躍り出た。


『ナナ殿。長旅でお疲れでございましょう。私めの温もり、どうぞお受け取りくだされ』


ぬくもりは、人肌と同じくらいの、暑すぎず優しくポカポカとした熱を解き放った。


「うわ……! お湯たんぽさんが喋ったやき!?」 ミミが驚くと、ひよりはぬくもりをそっとナナの手元へ差し出した。


「ナナちゃん、手が少し冷たいねぇ。この『ぬくもり』ね、抱っこするとぶち温かくて、気持ちがホッとするんよ。触ってみるかいね?」


ナナは恐る恐る小さな手を伸ばし、ぬくもりのモコモコカバーにそっと触れた。


「……あたたかい……」


ほんのりと伝わる人肌の温もりに、ナナの緊張していた肩の力がふっと抜け、伏せられていた小さな猫耳がピクッと持ち上がった。


「……ぬくぬくして……きもちいい……」


「ふふっ、良かったねぇ。ぬくもりはね、ナナちゃんが元気になるまで、ずっと側にいてくれるけぇね」


ひよりが優しく頭を撫でると、ナナは小さく「……うん」と頷き、初めてほんのわずかに唇の端を緩めたのだった。


「よーし! ナナちゃんのポルトーでの療養生活、うちも全力で応援するけぇね! まずは『海猫亭』のお部屋に荷物を運んで、ゆっくり休もうかいね!」


「ひよりお姉ちゃん、ありがとうやきーっ!」


真夏の太陽が輝くポルトーの港町で、ミミと小さな妹ナナ、そしてひよりたちの温かな新しいスローライフが、静かに幕を開けたのだった。

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