冒険者編 ポルトー2:潮風の冒険者ギルドと港町の試練
ひよりの冒険者編の始まりです。よろしくお願いします
学園を卒業したので、丁寧語ではお話ししません!
登場人物等も方言で物語が進んでいきます。
間違った方言も多数あると思いますのでごめんなさい!
これからもよろしくお願いします
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
これからもよろしくお願いします。
第1章:朝の「潮風の錨亭」と荒くれ者の洗礼
【AM 08:30 | 冒険者ギルド「潮風の錨亭」】
昨夜の「赤甲鎧タイタンタイ」の大宴会でポルトーの街中に名(と大食漢ぶり)を轟かせたひよりであったが、翌朝はキリリと気持ちを切り替え、冒険者ギルド「潮風の錨亭」を訪れていた。
「ふぁ〜あ……よく寝たぁ。今日はポルトーでの初依頼じゃね! どんな面白い仕事があるかいねぇ」
背中のリュックを揺らし、呉弁の鼻歌まじりで掲示板へ向かおうとしたひよりの前に、ドシンと巨大な影が立ちふさがった。
見上げると、そこには潮焼けした肌に豪快な刺青を入れ、眼帯を嵌めた大柄な男と、その脇を固める二人のベテラン冒険者たちが立っていた。いずれも荒波を潜り抜けてきた海賊さながらの威圧感を放っている。
「おいおいおい、見ねえ面だばって、なんだそのちんちくりんは? 陸上がりの甘ちゃんが、ポルトーのギルドでヘラヘラ遊んでんじゃねぇぞ」
突如として投げかけられたのは、独特ななまりの津軽弁風のダミ声だった。
「なんじゃ、お前さん? 打ち首にされたいんか? 九州の海で修羅場くぐってきた俺たち『黒潮の錨団』の前に立ち塞がるとは、よほど死にたいと見えるのう!」
もう一人の薩摩・博多混じりの九州弁を喋る大男が、身の丈ほどもある大斧を床に叩きつける。ズガァン! と重い音がギルド内に響き渡り、周りの新人冒険者たちが悲鳴を上げて退散した。
ひよりは思わず後ずさりしかけたが、両手を腰に当てて胸を張った。
「なんねあんたら! うち、ちゃんとギルドの依頼を受けに来ただけじゃけぇ! 通してつかぁさい!」
「ハッ! 『通してつかぁさい』だぁ? 威勢だけは一人前だばって、度胸試しも受けてねえ奴をこの掲示板に近づけるわけにはいかねぇんだよ!」
ギルドの酒場全体が、荒くれ者たちの下品な笑い声と不穏な空気に包まれる。
第2章:『おみくじ箱』の託宣と開戦
【AM 09:00 | ギルド中央ホール】
「ひより様、あまりの無礼、この紅緒が一刀のもとに削ぎ落としましょうか!」
リュックの脇で神刀・紅緒が鞘をカチリと鳴らす。しかし、ひよりは腰の『おみくじ箱』を取り出した。
「待って紅緒、まずは『おみくじ箱』に聞いてみようかい!」
ひよりがシャカシャカと勢いよくおみくじ箱を振ると、中から童の姿の付喪神・おみくじ箱がひょっこり顔を出し、カコンと木札を吐き出した。
『ひより様、本日の運勢は【小吉】!『刃を抜くことなかれ。柔軟なる技と計算にて、荒波を静めよ』にございます!』
「なるほど! 相手を傷つけずに参参らせりゃあええんじゃね!」
「あんだと? 傷つけずにだぁ? 馬鹿にしやがって! 叩き潰してやるばい!」
九州弁の男が咆哮し、巨大な大斧を豪快に振りかざして突進してきた。津軽弁の男も素早い身こなして短剣を構え、側面から挟み撃ちを狙う。
「ひより様、指示を!」
文机の硯水が耳元で静かに囁く。
『ひより殿、竹千代殿と糸吉殿の出番です。相手の死角と突進速度を正確に割り出しなされ』
「頼んだよ、竹千代! 糸吉!」
第3章:間合いの天才・竹千代と、因果を断つ糸吉
【AM 09:15 | ギルド内の攻防】
「三十センチの領域、我が絶対の支配下なり!」
竹定規の付喪神・竹千代が、シャキーンと実体化した。手に持った三十センチの竹尺をスッと掲げ、襲い来る荒くれ者たちの動きを一瞬で見切る。
「敵甲(九州弁の大男)、突進速度毎秒四メートル! 大斧の振り下ろし角度、右四十五度! ひより様、そのまま『後方へ二一・五センチ』回避してください!」
「あいよっ!」
ひよりが指示通りにちょこんと後ろへ足を引くと、ドガァァン! と大斧が床の石畳を砕いたが、ひよりのつま先からわずか「一ミリ」手前で空を切った。
「なっ……!? なぜ避けられた!?」
「左側より短剣の刺突! 攻撃到達まであと〇・三秒! 糸吉殿、目標のベルトおよびズボンのサスペンダー!」
「了解チョキ! 一発でピンチにしちゃうよ!」
裁縫用糸切りバサミの付喪神・糸吉がチョキチョキと軽快な音を立てて空を舞った。手に持った鋭利なハサミから「因果の粘着糸」が高速で繰り出される。
刃が相手に触れることはない。ただ、津軽弁の男の腰回りを走る糸が一瞬でズボンの帯とサスペンダーだけを精密に切断した。
「ぬあああっ!? な、なんだば大火事だばって!?」
パッと服の固定を失った津軽弁の男のズボンが、膝までズリ落ちた。
「ぶはっ! 派手なパンツはいとるんねぇ!」
ひよりが大爆笑すると、ギルド内のギャラリーからも「ギャハハハ!」「見ろよあのパンツ!」と爆笑が巻き起こった。
「おのれぇぇぇ! 舐めるなよお前ぇぇぇ!」
顔を真っ赤にした大男が再び大斧を横に薙ぎ払う。
「敵の攻撃軌道、完全に予測済み。糸吉殿、次は大斧の柄と手甲の接続部を束縛!」
「チョキチョキッ! 特殊結び・身動き封じ!」
糸吉が繰り出した透明な糸が大男の手首と大斧、そしてギルドの太い木柱を一瞬で複雑に絡め取った。大男がどれだけ力を込めても、糸はビクともせず、逆に自分の巨体が柱にピッタリと貼り付けにされてしまう。
「な、なんだこの糸は!? 抜けん! 動けんたい!」
第4章:ひよりの一言とギルドの喝采
【AM 09:30 | 決着】
わずか数十秒の出来事だった。 ひよりは一切の武器を抜かず、指一本触れることもなく、港町のベテラン冒険者二人を完全に無力化して見せたのだ。
「ふぅ……間合いの計算も、糸吉のハサミ技も完璧じゃったね! 竹千代、糸吉、ありがとね!」
付喪神たちが「カチリ」「チョキッ」と誇らしげに音を立てて道具の姿へ戻っていく。
ひよりは、柱に縛り付けられて顔を真っ赤にしている九州弁の男と、ズボンを押さえてモジモジしている津軽弁の男の前に歩み寄った。
「あんたら、強いのは分かるけどね、新人いじめなんかしたってちっとも格好ようないよ。うちらはみんな、同じ冒険者じゃろ? 仲良く協力した方が、美味しいお酒も飲めるし、ええ仕事もできるんじゃないんかいね?」
ひよりがニッコリと呉弁で微笑むと、二人組みはぐうの音も出ず、恥ずかしそうに下を向いた。
「……ぐぬぬ。降参だばい。俺たちの負けだ……」 「降参たい……まさかこんな小さな女の子に、手も足も出んとはな……」
その瞬間、静まり返っていたギルド内に、雷のような大歓声と拍手が巻き起こった!
「凄えぞお嬢ちゃん! あの『黒潮の錨団』を傷つけずに一瞬で倒しちまった!」 「見たかよあのハサミと定規の技! 只者じゃねぇぞ!」
ギルドのマスターが奥から歩み出て、ひよりの肩を叩いた。
「いやあ、見事な腕前だったよ、ひよりちゃん! 君のような優秀な冒険者がポルトーに来てくれて嬉しいよ。さあ、とっておきのBランク級・港湾護衛依頼があるんだが、受けてみないか?」
「ほんまに!? やるやる! うち、何でもやるよ!」
こうしてひよりは、港町の荒くれ者たちから一目置かれる存在となり、新たな依頼を獲得したのだった。
第5章:宿屋への帰路とぬくもりの時間
【PM 06:00 | 宿屋「海猫亭」】
ギルドでの大活躍を終え、夕食を済ませたひよりは、宿屋「海猫亭」の部屋でベッドの上に転がっていた。
「今日はヒヤヒヤしたけど、竹千代と糸吉のおかげで助かったわぁ……」
足元では、昭和レトロなトタン金属製湯たんぽの「ぬくもり」が、ポカポカとした心地よい熱を放っている。
「ぬくもり、今日もあたたかいねぇ……」
『ひより様、今日も一日お見事な立ち回りでございましたな』
机の上で、おみくじ箱が満足そうにカタカタと揺れる。
「明日からは本格的な護衛の仕事じゃね。みんなと一緒なら、どんな荒波も乗り越えられる気がするわ!」
潮風が窓を優しく揺らす夜、ひよりは頼もしい付喪神たちに見守られながら、すやすやと幸せな寝声を立て始めるのだった。
今回は学園を卒業してからのお話です。
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