冒険者編 ポルト−3:消えた高級食材と謎解き探偵
ひよりの冒険者編の始まりです。よろしくお願いします
学園を卒業したので、丁寧語ではお話ししません!
登場人物等も方言で物語が進んでいきます。
間違った方言も多数あると思いますのでごめんなさい!
これからもよろしくお願いします
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
これからもよろしくお願いします。
第1章:波止場の悲鳴と黄金エビの謎
【AM 09:30 | 港町ポルトー・中央魚市場裏手の搬入口】
冒険者ギルド「潮風の錨亭」で昨日の大立ち回りによる名声が高まった翌朝、ひよりは港の空気を感じながらぶらぶらと歩いていた。
「う〜ん、今日もええ天気じゃなぁ! 港町は朝から活気があってぶち元気になるわぁ」
リュックを背負い直し、軽快な足取りで歩いていると、前方の高級料亭「海龍亭」の裏口付近で、人だかりと悲鳴のような怒号が巻き起こった。
「ない! ないだばい! ワシの命の次に大事な『黄金エビ(ゴールド・ロブスター)』の樽が丸ごと消えとるーッ!」
頭を抱えて崩れ落ちていたのは、昨日『赤甲鎧タイタンタイ』の競り市でセリを取り仕切っていた土佐弁風の豪快な大将だった。その脇では、高級料亭の料理長らしき男が青ざめた顔でウロウロしている。
「大将! どうしたんねそんな大声出して! 何が消えたん?」
ひよりが駆け寄ると、大将は涙目になりながらひよりの手を両手で握りしめた。
「おおっ、昨日のお嬢ちゃん! 聞いとくれ! 今日、料亭の極上限定メニューとして納品するはずだった『黄金エビ』三樽が、鍵をかけていた搬入用倉庫から跡形もなく消えちまったんだばい!」
ひよりの耳元で、文机の付喪神・硯水がそっと浮遊し、眼鏡をかけ直すような仕草で知的かつ低音の解説を開始した。
『ひより殿、解説いたしましょう。『黄金エビ(ゴールド・ロブスター)』とは、満月の夜にしか深海から浮上しない奇跡の甲殻類にございます。その脱皮直後の殻は純金のごとき輝きを放ち、身はプリプリとした弾力と濃密な甘み、そして独特の香気を持つ至高の珍味。一尾で金貨一枚(約数十万円)を下らない超高級食材にございます』
「き、金貨一枚のおエビ様……!? ぶち凄そうじゃん……!」
ひよりがゴクリと唾を呑み込むと、料理長が切実な声で訴えてきた。
「もし黄金エビを取り戻してくれたら、お礼として余った極上の黄金エビのフルコースと、報奨金銀貨十五枚をお支払いします! 頼む、冒険者のお嬢ちゃん! 犯人を突き止めてくれ!」
「黄金エビのフルコース……!? 食べる! うち、絶対に犯人を捕まえて黄金エビを取り戻すよ!」
ひよりの食いしん坊魂に火がついた。
第2章:『おみくじ箱』の託宣と、探偵ひよりの捜査開始
【AM 10:15 | 現場の倉庫内部】
ひよりはまず、現場となった鍵のかかる搬入用倉庫の内部へと足を踏み入れた。
腰から『おみくじ箱』を取り出し、ポンポンと優しく叩く。
「おみくじ箱、この事件を解決するためのヒントを教えてつかぁさい!」
おみくじ箱はカコンと音を立てて小さな童の姿になり、可愛らしく木札を差し出した。
『ひより様、本日の御託宣は【吉】! 『水底の影を追え。見えざる足跡は清き水によりて浮かび上がり、知恵の文机が真実を語らん』にございます!』
「清き水と知恵の文机……! 洗三と硯水の出番じゃね!」
「お姉ちゃん、僕の番だね!」
三つ仕切りバケツの付喪神・洗三が元気よく実体化した。手には澄み切った清流を湛えたバケツを抱えている。
『ひより殿、まずは現場の状況確認です。鍵は破られておらず、窓も内側から施錠されたまま。いわゆる「密室」の状態にございます。しかし、人間や魔物が移動した以上、必ず痕跡(残光)が残るはず』
「洗三、お願い!」
「うん! 洗三の浄化水・痕跡抽出!」
洗三がバケツから聖なる水をすくい、倉庫の床一面に優しく撒き散らした。すると、ただの湿った木板だった床の上に、ボワッと青白く光る「足痕」と「引きずった痕」が浮き出してきたのだ!
「うわぁぁ! 足痕が光っとる!」
『ふむ……ご覧なされ、ひより殿。この足跡、人間の靴底ではございませぬ。つま先が二つに分かれ、かかとに鋭い爪の跡がある。これは……半魚人族か、あるいは湿地帯に生息する小型の泥魔物『泥泥鬼』の足痕です』
「泥泥鬼……? なんねその名前、ぶち不気味じゃね」
『ですがおかしいですな。泥泥鬼は陸に上がると数時間で皮膚が乾燥して動けなくなる弱点があります。それなのに、足痕は倉庫の破られた換気口から外の路地裏へと向かっている……』
「待ってチョキ! 換気口の鉄格子に、何か引っかかっとるよ!」
裁縫用糸切りバサミの糸吉がチョキチョキと飛び跳ね、換気口の角を指し示した。そこには、ぬめりけのある不気味な紫色の『皮膚の破片』と、青いぬめり成分が付着していた。
第3章:路地裏の追跡と硯水の冴え渡る推理
【AM 11:30 | ポルトー・東の暗黒路地裏】
洗三の「痕跡抽出水」を定期的に床へ撒きながら、ひよりと付喪神たちはポルトーの美しい街並みとは一変した、薄暗く湿った「東の暗黒路地裏」へと足を進めていた。
「うぅ……ここは日が入らんけぇ、なんかじめじめして寒気がするねぇ」
リュックの脇で、昭和レトロなトタン金属製湯たんぽの「ぬくもり」がポカポカとした優しい熱を放ち、ひよりの腰を温めてくれる。
「ぬくもり、ありがとね。ほんまに助かるわぁ」
路地裏の奥へと進むと、青白い足跡は巨大な廃棄船の船倉へと続いていた。
『ひより殿、立ち止まりなされ。犯人のアジトはこの船倉内部で間違いありませぬ。ですが、単なる泥泥鬼の仕業ではございませぬぞ』
「えっ? 泥泥鬼が盗んだんじゃないん?」
『ええ。泥泥鬼の知力では、鍵のかかった倉庫の換気口から侵入し、正確に「黄金エビの樽」だけを三つ盗み出すような高度な計画は不可能です。つまり……泥泥鬼を裏で操り、指示を出していた「黒幕(依頼主)」が存在します!』
「黒幕……!? 誰なんそれ!?」
『換気口に残されていた紫色の皮膚の破片。あれは泥泥鬼のものではなく、高級な「魔導塗料」の成分が含まれておりました。港町でその塗料を大量に輸入している人物……それは、料亭「海龍亭」のライバル店である「黒鮫亭」の悪徳店主・バルバロッサに他なりませぬ!』
「な、なんじゃとーっ!? ライバル店の店主が、嫌がらせと奪取のために泥魔物を使ったんか!?」
ひよりが驚愕していると、廃棄船の影からガサガサと不気味な音が響き、ヌメヌメとした紫色の巨体を持つ『泥泥鬼』の群れ五匹と、その奥で怪しい紫のローブを纏った男が姿を現した!
第4章:船倉の決戦と付喪神総力戦
【PM 01:00 | 廃棄船の内部】
「ヒヒヒ! バレてしまっては仕方がないだばさ!」
紫のローブを脱ぎ捨てたのは、コテコテの東北・仙台なまり風の怪しい男——ライバル店「黒鮫亭」の店主バルバロッサだった! その足元には、盗まれた黄金エビの三つの樽が置かれている。
「あの黄金エビさえ奪ってしまえば、海龍亭は信用ガタ落ちで潰れるだっちゃ! 邪魔するやつは、この泥泥鬼どもに喰わせて泥の塊にしてやるべ!」
「ゲコゲコッ! ドロドロ〜!」
粘液を滴らせた泥泥鬼たちが、鋭い爪を立ててひよりに向かって襲いかかってきた!
「ひより様、お下がりを! 愚者どもに神聖なる刀の裁きを!」
朱色の袴を纏った神刀・紅緒が静かに実体化し、鞘を解く。
「待って紅緒! 泥泥鬼は泥でできとるけぇ、切っても切っても再生するよ!」
『ひより殿の仰る通り! 泥泥鬼の弱点は「大量の清よらかな水」による泥の希釈、そして乾燥です!』
「任せて! 洗三のドバドバ大洗浄&飯蔵のハリセン乾燥アタックじゃー!」
「せいっ! バケツ三杯分の清流、大噴射ーッ!」
洗三のバケツから溢れ出た聖水が、襲い来る泥泥鬼たちに直撃する! 泥の身体がドロドロと崩れ、形を保てなくなっていく。
「カッカッカ! 仕上げだばい! 特大木製しゃもじ・大風圧叩き!」
巨大なしゃもじを携えた飯蔵が疾風のごとく回転し、強烈な風圧を巻き起こした! 希釈された泥泥鬼たちは、一瞬にして乾いたただの砂粒となって吹き飛んでしまった!
「な、なんだべぇぇぇ!? ワシの泥泥鬼ちゃんたちが一瞬で砂になったっちゃ!?」
バルバロッサが腰を抜かして後ずさりする。
「敵の逃走軌道、計算完了! 糸吉殿、足元を固定してください!」
竹定規の竹千代が精密に距離を弾き出す。
「了解チョキ! 因果の粘着糸・グルグル巻き!」
糸吉のハサミから放たれた透明な糸が、バルバロッサの全身をミイラ男のように一瞬で縛り上げた!
「うぎゃあぁぁぁ!? 痛い痛い! 助けてけろーッ!」
「捕まえたぁぁぁ! 探偵ひよりと付喪神たち、事件解決じゃー!」
ひよりは腰に手を当て、呉弁でドヤ顔を決めたのだった。
第5章:黄金エビの至高フルコースと幸せの余韻
【PM 06:00 | 高級料亭「海龍亭」の大広間】
バルバロッサは駆けつけたギルド警備隊に引き渡され、盗まれた三つの「黄金エビ」の樽は無事に海龍亭の元へと戻された。
夕刻、海龍亭の豪華な大広間には、約束通りひよりと付喪神たちのために準備された「黄金エビのフルコース」がズラリと並べられていた。
「お嬢ちゃん、本当にありがとだばい! お礼の報奨金銀貨十五枚と、板前が腕を振るった至高のエビ料理、存分に食べておくれ!」
大将と料理長が深々と頭を下げる。
机の上に置かれた料理は、まさに金の輝きを放っていた。『黄金エビのお造り』『姿焼き』『特製濃厚エビ味噌スープ』『エビのサクサク天ぷら』……。
「う、うわぁぁぁぁ……! ぶち綺麗じゃし、香りがすでに最高じゃん……!」
ひよりは、透き通るようなピンクと金色の身を持つお造りを箸で持ち上げ、口の中へ運んだ。
「んんんんんん〜〜〜〜〜っっっっ!!?? なんこれぇぇぇ!? プリップリで甘くて、とろけるようじゃわぁぁぁ!」
弾力のある歯応えの直後、エビ特有の芳醇な旨味と甘みが爆発するように舌の上に広がる。天ぷらの衣のサクサク感と濃厚なエビ味噌のコクは、言葉を失うほどの美味さだ。
「カッカッカ! ひより様、これはすごい! このエビ味噌の濃縮された旨味……料理人として震えが止まりませぬぞ!」
実体化した飯蔵も感動の声を上げる。
「僕もお水が美味しく感じるよ!」と洗三も大はしゃぎだ。
ひよりは腰から『おみくじ箱』を取り出し、ポンポンと叩いた。
「おみくじ箱、あんたの言った通り、清き水と知恵で大解決したよ! ほんまにありがとね!」
おみくじ箱はカコンと心地よい音を立て、小さな童の姿でひよりの隣に腰掛けた。
『ふふん! 拙者の占いに狂いはありませぬ! ひより様が諦めずに道具(仲間)を信じてくださるからこそ、吉運が引き寄せられるのですぞ』
「みんなのおかげじゃね! ほんまにみんな、うちの自慢の仲間じゃわ!」
神刀の紅緒、木製しゃもじの飯蔵、竹定規の竹千代、糸切りバサミの糸吉、バケツの洗三、湯たんぽのぬくもり、文机の硯水、そしておみくじ箱。
全員がひよりの周りで嬉しそうに音を立て、温かい雰囲気が大広間を包み込んでいく。
報奨金の銀貨十五枚を懐に納め、お腹いっぱいに極上の珍味を堪能したひより。
港町ポルトーの夜は静かに更けていき、ひよりと八百万の付喪神たちの絆は、また一段と深まったのだった。
今回は学園を卒業してからのお話です。
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