冒険者編 ポルトー1:港町の巨大市場と絶品海鮮料理
ひよりの冒険者編の始まりです。よろしくお願いします
学園を卒業したので、丁寧語ではお話ししません!
登場人物等も方言で物語が進んでいきます。
間違った方言も多数あると思いますのでごめんなさい!
これからもよろしくお願いします
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
これからもよろしくお願いします。
第1章:港町ポルトーの冒険者ギルド「潮風の錨亭」と初給与
【09:00 | 港町ポルトー・西門】
迷いの森を脱出し、青い海と潮風が包む港町「ポルトー」に辿り着いたひよりは、視界一面に広がる白壁の街並みと大海原に「うわぁぁぁ!」と歓声をあげていた。
「見てみぃねみんな! 海じゃ! ぶちっかい海が広がっとるよ!」
リュックの横で、三つ仕切りバケツの洗三が小さな身体で実体化し、目を輝かせる。
「ひよりお姉ちゃん! お水がいっぱいあるよ! でも……ちょっと舐めたらしょっぱい!」 「あはは、海水じゃけぇね。洗三、飲んだらお腹壊すよ」
ひよりはまず、本日の第一目標である冒険者ギルド「潮風の錨亭」へと向かった。重厚な船の舵が掲げられたギルドの扉を開けると、そこには潮の香りと、巨大な魚の鱗やシェルアーマーを身に纏った荒波育ちの冒険者たちが溢れかえっていた。
「頼もう……! あの、常盤の街のギルドから来た天照ひよりです!」
受付の窓口へ向かい、道中で無事に完了させた「旧道・迷いの森の安全確認および『霧食い』討伐」の成果を申告する。受付の女性は羊皮紙の確認書と、ひよりが持参した『霧食い』の核(紅緒が一刀両断した際に残った綺麗な魔晶石)を見るや、目を丸くした。
「あの厄介な『霧食い』を討伐したのですか!? 新人のFランク冒険者様とお見受けしますが……素晴らしい功績です! 討伐証明と特別交通手当を含めまして、銀貨二十枚(約二十万円相当)をお支払いいたします!」
ジャラジャラと重みのある革袋がカウンターに置かれた。
「ぎ、銀貨二十枚!? ぶち大金じゃん! うち、こんなにお金持ったの初めてじゃわ!」
興奮するひよりの耳元で、文机の付喪神・硯水が低く囁く。
『ひより殿、浮かれるのは厳禁ですぞ。港町はスリや詐欺も多いと聞きます。まずは安心できる宿の確保と、身包みを剥がされぬよう管理を怠りなく』
「分かっとるよ硯水! よーし、まずはおすすめの宿屋じゃね!」
ギルドの受付嬢に紹介してもらったのは、港の路地裏にある老舗宿「海猫亭」だった。
第2章:港の宿屋「海猫亭」と『おみくじ箱』の御託宣
【10:30 | 宿屋「海猫亭」・客室】
「海猫亭」は、木造二階建ての温かみのある宿だった。一泊夕食付きで銀貨一枚と銅貨五枚。ひよりは二泊分の代金を気持ちよく支払い、案内された二階の部屋に入ると、ドサリとリュックを下ろした。
部屋の窓からはポルトーの港が一望でき、青い海に浮かぶ数々の大型船がよく見える。
「いやぁ〜、ふかふかのベッドじゃ! 野宿も楽しかったけど、やっぱり屋根があるのは落ち着くねぇ」
ひよりは腰から『おみくじ箱』を取り出し、愛おしそうに撫でた。
『ひより様、あまり撫でまわされるとくすぐったいですぞ』
からからと箱の中から声が響く。そう、このおみくじ箱自身もまた、ひよりに長く大切にされてきた立派な「付喪神」なのだ。吉胸を授けるだけでなく、時に自らの意思で木札を選び、ひよりを導いてくれる頼もしい仲間である。
「あはは、ごめんごめん! おみくじ箱、今日はぶちお金が入ったけぇね、美味しいものをいっぱい食べて、みんなで贅沢したいんよ! 今日の運勢と、おすすめの買い出しの方向を教えてつかぁさい!」
『承知いたしました! ひより様の旅の行く末、このおみくじ箱が占いましょうぞ! ささ、シャカシャカとお振りくだされ!』
ひよりがおみくじ箱を両手で包み、勢いよく振る。 シャカシャカシャカ……カコン!
小さな穴から跳び出した木札には、金色の文字でこう書かれていた。
「本日の運勢……『大吉』! 『南の活気に飛び込むべし。海からの授かりもの、赤き鱗の巨獣に眼福と口福あり。大盤振る舞いが更なる福を呼ぶ』!」
「大吉じゃ! 『赤き鱗の巨獣』……? なんかぶち凄そうな食材の予感がするね!」
『カッカッカ! ひより様! 料理人の血が滾りますぞ! 魚市場へ急ぎましょう!』
木製しゃもじの飯蔵が待ちきれない様子で実体化し、太い腕をぶんと振った。
第3章:大活気の巨大魚市場と豪快な競り市
【11:30 | ポルトー南港・巨大魚市場】
南港に位置する巨大魚市場は、まさに熱気の渦だった。水揚げされたばかりの見たこともない海の魔物や巨大魚が氷の敷き詰められた台に並べられ、威勢のいい商人たちの声が飛び交っている。
「いらっしゃい、いらっしゃい! 獲れたての『ダイソンイカ』だ! 吸盤の吸い付きが違うでぇ! 刺身でも煮付けでも絶品や!」
コテコテの関西弁を響かせるおっちゃん商人が、ひよりに向かって足をタコのようにくねらせる巨大なイカを突き出してきた。
「うわっ、なんねそのイカ! ぶち大きくて動いとるじゃん!」
「なんやねんお嬢ちゃん、その珍しいなまりは! 広島の方から来たんか? ほんならこのイカ、銅貨三枚で勉強しとくで!」
「ほんまに!? 買います買います!」
ひよりが珍しい海の幸に目を奪われていると、市場の中心部で一段と大きな人だかりと、怒号のような大声援が湧き上がった。
「さあさあさあ! 本日の目玉! 沖合の深海で揚がった超大物、『赤甲鎧タイタンタイ(赤鎧の巨鯛)』だばい! 重量なんと二百キロ! この巨躯、どこの店が競り落とすがかーっ!?」
土佐弁風の豪快な節回しで競りを取り仕切るセリ市の大将が、巨大な台の上に横たわる真っ赤な巨魚を指し指した。全身が強固な赤き真鍮のような鱗で覆われ、太い背びれはまるで神殿の柱のようだ。
「あれじゃ……! おみくじ箱が言うとった『赤き鱗の巨獣』はあれに違いないわ!」
ひよりが目を輝かせると、文机の硯水がそっと浮遊し、眼鏡をかけ直すような仕草で解説を始めた。
『ひより殿、あれはただの魚ではございませぬ。『赤甲鎧タイタンタイ』……その鱗は鋼鉄以上の硬度を誇り、並の包丁では歯が立ちませぬ。ですが肉質は極上、噛むほどに上質な脂と甘みが溢れ出すと言われる幻の高級食材にございます』
「ええっ、鋼鉄の鱗……? 料理できるん?」
「カッカッカ! ひより様、何を仰いますか! 我らには『あの御方』がおられるではありませんか!」
飯蔵がギロリとリュックの脇の『神刀・紅緒』を見つめた。
「む……飯蔵、また私を調理器具扱いするつもりですか? 私は神刀ですよ?」
鞘の中で紅緒が呆れたように揺れる。しかし、ひよりが手を合わせて「紅緒ぉ〜、お願い! うち、あの美味しいお魚食べてみたいんよ〜!」と呉弁で可愛らしく頼み込むと、紅緒は「……はぁ、ひより様にそう言われては断れませんね」と頬を赤らめて溜息をついた。
「よし! 競り落とすよ!」
ひよりは人だかりを押し分け、最前線へと躍り出た。
「銀貨一枚からスタートだばい!」
「銀貨二枚!」(地元の料亭の店主) 「銀貨三枚!」(大手ホテルのお抱えシェフ)
「銀貨五枚じゃーーーっ!!」
ひよりが威勢よく呉弁で叫ぶと、周囲の競り人たちが一斉に振り向いた。
「な、なんやあのちんちくりんのお嬢ちゃん……銀貨五枚やと!?」 「本気かよ、あのデカい魚、捌ける包丁なんてポルトーに数本しかねぇぞ!」
「銀貨五枚! ほかに手はねぇか!? ……決まりだばい! お嬢ちゃん、『赤甲鎧タイタンタイ』はおんしの物だ!」
ドカンと木槌が打ち鳴らされ、見事に巨大魚を競り落としたひより。市場中から大きな拍手と歓声が湧き上がった。
第4章:港の広場にて・紅緒と飯蔵の至高の一閃調理
【13:00 | ポルトー・南波止場の開放広場】
あまりに巨大すぎる『赤甲鎧タイタンタイ』は、宿の厨房にはとても持ち込めないため、ひよりたちはギルドから許可をもらい、海が見える波止場の広場で解体と調理を行うことにした。噂を聞きつけた市場の商人や街の人々が、好奇心から遠巻きに大勢集まってきている。
「さあて、準備はええかいね、みんな!」
ひよりの合図とともに、付喪神たちが一斉に実体化した。
竹定規の竹千代が、スッと巨大魚の前へ進み出る。
「体長二メートル四十センチ、胴回り一メートル八十センチ。外甲殻の最薄部は背びれ直下と推測。一刀両断の最適角度……三十五度!」
「竹千代殿、完璧な計測感謝する!」
朱色の袴を纏った神刀・紅緒が静かに実体化した。その手には、神聖な光を放つ鞘納めの刀。
「絶対切断の刻……我が刃の前に、斬れぬものなし!」
凛とした声とともに、紅緒が刀を解き放つ。
シューーーーッ!
閃光が走った。目にも止まらぬ神速の三連撃。次の瞬間、鋼鉄よりも硬いと言われたタイタンタイの赤き鎧鱗が、寸分の狂いもなく紙のようにハラハラと剥がれ落ち、中から宝石のように透き通った桜色の極上フレッシュな肉身が現れた!
「う、美しい……! 鎧鱗だけを完璧に削ぎ落としただと!?」 「どんな名シェフでも三時間はかかる作業を一瞬で……!」
見物客たちから怒号のような歓声が上がる。
「カッカッカ! お次はワシの出番ですぞ! 特大木製しゃもじ・絶技叩き締め!」
巨漢の童姿となった飯蔵が、特大しゃもじをぶんぶんと振り回す。叩く衝撃で肉の余分な水分を押し出し、旨みを極限まで凝縮させていく。
さらに、三つ仕切りバケツの洗三が汲んできた清らかな海上の湧き水で肉身を洗い、糸切りバサミの糸吉が「因果の粘着糸」を使って、巨大な刺身の柵を一本ずつ綺麗に吊るして熟成させた。
「ひより様! 解体完了でございます!」
「すごぁぁぁい! みんな、天才じゃね!」
ひよりは、飯蔵が手際よく切り分けた『タイタンタイの極上刺身』を醤油に似た地元の特製タレにつけ、口の中へ放り込んだ。
「んんんんん〜〜〜〜〜っっっっ!! うっま!!! なんこれ!!」
噛んだ瞬間に、プリップリの弾力とともに、濃厚で甘い脂がじゅわっと口いっぱいに広がる。生臭さは一切なく、まるで極上のトロとタイを足して二で割ったような甘美な味わいだ。
「美味しすぎるよ! みんなも食べてぇ!」
「カッカッカ! ワシもいただきますぞ……うむ! 弾力がすばらしい!」 「ひより様が喜んでくださるなら、包丁代わりの役目も悪くありませんね」と紅緒も微笑む。
第5章:街の人々との大宴会とおみくじ箱の満面の笑み
【15:30 | 波止場の大宴会】
二百キロもある巨大魚は、とてもひよりたちだけでは食べきれない。
「みんなー! 一緒に食べんかいね! まだまだいっぱいあるよー!」
ひよりが呉弁で周囲の街の人々や商人たちに呼びかけると、「えっ、ええの!?」「あの幻の魚を食わせてくれるんか!?」と、波止場は大盛り上がりとなった。
関西弁のイカ売りのおっちゃんも、土佐弁の競り市の大将も、みんな笑顔で刺身や、飯蔵が急遽作った『タイタンタイのカブト焼き』『特製海鮮あら汁』に舌鼓を打つ。
「う、うますぎるだばい! こんな美味いタイタンタイは食べたことがねぇ!」 「お嬢ちゃん、太っ腹やなぁ! ほんまに『大盤振る舞い』やで!」
市場の人々は、お礼にと自分たちの店から採れたての貝や海藻、珍しい果物をひよりの元へ次々と運び込んできた。
ひよりの周りには、たくさんの笑顔と美味しいご馳走が溢れていた。
【19:00 | 宿屋「海猫亭」・夜の静寂】
すっかり陽が落ち、満天の星空がポルトーの海を照らす頃。
大満足でお腹を膨らませたひよりは、「海猫亭」の部屋のベッドでゴロゴロと転がっていた。
昭和レトロなトタン金属製湯たんぽの「ぬくもり」が、じんわりとした温かさでひよりの足を温めてくれている。
「ふぅ……今日はぶち楽しかったなぁ。美味しいものもいっぱい食べたし、街の人らもみんないい人ばっかりじゃった」
ひよりは机の上に置かれた『おみくじ箱』に目を向けた。
「おみくじ箱、今日の大吉の占い、ほんまにぴったり当たったよ。ありがとね」
おみくじ箱は、カコンと心地よい音を立てて実体化した。小さな木製の着物を纏った、可愛らしい童の姿だ。
『ふふん! 拙者の占いに狂いはありませぬ! ですがひより様、街の人々に大盤振る舞いをしたことで、ひより様のお人柄がポルトーの街中に伝わりましたぞ。明日からは、さらに面白い依頼や出会いが舞い込んでくるはずです』
「ほんまに? 楽しみじゃねぇ……」
文机の硯水、竹定規の竹千代、糸切りバサミの糸吉、バケツの洗三、しゃもじの飯蔵、神刀の紅緒、そして湯たんぽのぬくもり。全員がひよりの周りで静かに温かい気配を漂わせている。
「みんな、明日もよろしくね……」
呉弁の少女・ひよりは、港町の心地よい潮騒の音を聞きながら、幸福感に満たされて静かに深い眠りについたのだった。
今回は学園を卒業してからのお話です。
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