4鉄鍋とおみくじ箱 天鏡と丑の刻詣り 後編
新作 第3弾目の投稿です。
題名 転生したらしいけどスキルデッドストックって何???
今回の主人公は海軍さんの街呉からの転生した女子高生のお話です
はちゃめちゃのスキルで異世界を乗り越えます。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
パラレルワールド編 ダビンチは世界遺産のナスカから謎の大陸ムーのお話です!
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
## 第三章:大迷宮の罠と「鏡の目」
吉凶の不条理な確率操作によって、地下五階まで順調に進んだ一行だったが、迷宮の難易度はここから跳ね上がった。
通路の壁一面に、不気味な文様が刻まれている。
「ひより、止まれ。この先は……『空間歪曲の罠』だ」
セリアが鋭く指摘した。
「一歩でも踏み込めば、永遠に同じ場所をループするか、最悪の場合は壁の中に肉体を埋め込まれて即死する。現代の魔法が使えれば、罠の魔力フローを解析して解除できるのだが……」
「うわぁ、まさにダンジョンって感じの嫌がらせ。硯水さん、どうにかならない?」
「ふむ。私の『現実改変執筆』で『罠が最初から壊れていた』と書けば一発だが……やはり文字数が多くなり、お主の魔力が持たん。ここは、本殿の奥の院に安置されていた、万物の本質を映す『あの御神体』の力を借りるべきだな」
「えっ、奥の院の御神体!? そんな凄いもの呼んじゃっていいの!?」
ひよりはゴクリと唾を飲み込み、胸の前で手を組んだ。
「デッドストック! 我が実家の最深部、誰も見てはならぬと言われていた、秘密のお宝をここに!」
眩いばかりの後光とともに現れたのは――青銅製の、少し錆の浮いた『古鏡』だった。
それは、千年以上前に神社の御神体として奉納され、人間の嘘、偽り、そして世界のあらゆる隠された真実を映し出し続けてきた『真経津の鏡』の付喪神――名を『天鏡』という。
光の中から現れた天鏡は、着物を纏った、大変に物静かで気品のある大人の女性の姿をしていた。
「……お久しゅうございます、ひより様。このような、光の届かぬ異国の地でお目にかかるとは」
「天鏡さん! 綺麗……じゃなくて、この先の空間の罠を見破ってほしいんです!」
「お安い御用です。この世に、私の眼を欺ける偽りは存在いたしません。――【照魔鏡裏】」
天鏡がその鏡面を前方に向け、自らの身体を傾けた。
すると、鏡から放たれた透明な光が通路を照らし出した。その光に晒された瞬間、何もないはずの空間に、赤や紫の「複雑に入り組んだレーザー光線」のような罠の糸が、びっしりと可視化されたのである。
「見える……! これなら、どこを踏めば安全か一目瞭然です!」
セリアが歓声を上げる。
「それだけではございません。その罠の『核』は、左の壁から三番目のレンガの裏にございます。そこを、紅緒様の刃で突けば、罠そのものが崩壊いたします」
「よし、任せとき!」
ひよりの手が誘導されるように動き、紅一文字の切っ先がピンポイントで壁のレンガを貫いた。
パリィィィン!
とガラスが割れるような音が響き、通路を満たしていた不気味な魔力の歪みが、完全に消滅した。
「素晴らしい……。古代の超魔法文明が仕掛けた最高精度の罠を、こうも簡単に……」
セリアはもはや呆然とするしかない。
「ふふ、私の目は、どんな迷路も、どんな人間の隠し事も、すべてお見通しですから。――例えば、そこの生徒会長様が、実は昨日、お気に入りのドレスの裾を引っ掛けて破いてしまい、それを自室のクローゼットの奥に必死に隠していることも……」
「ひゃあッ!? な、なぜそれを!?」
セリアが顔を真っ赤にして自分の胸元を隠す。
「天鏡さん、味方のプライバシーまで暴かないであげて!」
ひよりが慌てて割って入る。天鏡はクスリと上品に微笑み、鏡の姿に戻ってひよりの懐へと収まった。
## 第四章:最下層の決戦と「呪いの藁人形」
ついに一行は、最下層である第十階層――『封印の間』へと辿り着いた。
そこに広がっていたのは、見渡す限りの広大な地下空間と、中央に鎮座する、山のように巨大な魔獣だった。
三つの首を持つ巨竜――『アンデッド・ヒュドラ』。
全身が腐敗した骨と肉で構成され、その周囲には、現代魔法を完全に無効化する【極大反魔障壁】が、黒い嵐のように吹き荒れている。
「グルゥゥゥゥ……ッ!!」
三つの首が同時に咆哮を上げると、その音圧だけで地下空間の天井が崩落し始めた。
「不味いな。あれは古代文明が迷宮の番人として配置し、やがて穢れを吸って不死の魔獣と化した存在だ。物理的な攻撃を加えても、三つの首を同時に、かつ完全に消滅させなければ、無限に再生するぞ!」
セリアが瓦礫を避けながら叫ぶ。
「三つの首を同時に完全消滅!? 紅緒姉さんの一閃でも、三箇所同時は無理だよ!」
「ああん!? ウチの腕を疑う気か! ……って言いたいところやが、確かにあのデカブツを一度に塵にするのは、この刀一本じゃ手が足りんわ!」
紅緒も流石に歯噛みする。
「ひより」
私は文机の前に座り、静かに万年筆を握り直した。
「お主の全魔力を私に預けろ。私の『現実改変執筆』で、ヒュドラの心臓を直接書き換える。――だが、それには条件がある。奴の動きを、完全に、一分間だけでいい、1ミリも動けないように『呪縛』する必要がある」
「ヒュドラを完全に一分間止める!? そんなことできる付喪神様なんて、うちの神社にいたっけ……?」
「いるとも。……お主もよく知っているはずだ。神社の裏の御神木。あそこに、夜な夜な『ある目的』を持った人間たちが打ち付けていった、あの最も怨念深く、最も強力な……」
ひよりの顔が、恐怖で引きつった。
「まさか……丑の刻参りの……!?」
「そうだ。我が神社のデッドストックにおける、最大最凶の禁忌。彼を呼び出すのだ」
ひよりは覚悟を決め、これまでで最も禍々しい、黒と紫の混ざり合った魔力を練り上げた。
「デッドストック……! 裏の御神木に眠る、人々の呪いと執念の塊……出てください!」
ドサリ、と地面に落ちたのは――五寸釘が胸に深く突き刺さった、一本の古びた『藁人形』だった。
空間の温度が、一瞬で氷点下まで下がった。
「キケケケ……キケケケケケ……ッ! 呼んだなぁ、新しい呪いの主よぉ……。誰を呪い殺せばいいんだぁ……?」
藁人形から這い出てきたのは、白装束を纏い、頭に三本の蝋燭を灯した五徳を載せた、髪の長い少年の姿をした付喪神――名を『五寸』という。
「五寸くん! あの三つ首の巨大な竜を、一分間でいいから絶対に動けないようにして!」
「竜ぉぉ? あんなデカいトカゲを呪うのかぁ? 骨が折れるなぁ……。でも、いいぜぇ、俺に突き刺さる『千人分の人間の怨み』、見せてやるよぉ……!」
五寸が不気味に笑い、自らの胸に刺さった五寸釘を、ギチギチと音を立てて引き抜いた。
そして、その釘をヒュドラに向けて投げつけた。
「――【丑時参・因果緊縛】!!」
放たれた釘は、空中で巨大な「影の杭」へと変化し、ヒュドラの巨体を地面ごと貫いた。
「ギャオォォォン!?」
ヒュドラが苦悶の声を上げるが、その巨体は、まるで空間そのものに縫い付けられたかのように、指一本、鱗一枚すら動かすことができなくなった。肉体が完全に「静止」したのである。
「キケケケ! 今のうちだぁ! 俺の呪いが解ける前に、早くやっちまえぇぇぇ!」
五寸が鼻から血を流しながら叫ぶ。ヒュドラの圧倒的な魔力に対抗するため、彼も限界を超えて呪いを維持しているのだ。
「ひより、いくぞ! 一文字も間違えるな!」
「はい、硯水さん!」
私は文机に猛然と筆を走らせた。ひよりの体から、文字通り「最後の魔力」が、光の奔流となって私の万年筆へと流れ込む。
『――古代の迷宮に君臨せし三頭の巨竜は、その魂の根源たる核を、一瞬にして内側から爆破された。肉体は塵となり、二度と再生することはなかった。』
サラサラサラ……と、最後のピリオドが打たれた瞬間。
原稿用紙が、世界の理を書き換える「神聖な白光」となって弾けた。
「オ……ガ、ア……ッ……!?」
ヒュドラの三つの首が、悲鳴を上げる暇すらなく、その内側から純白の炎に包まれた。そして、五寸の呪縛が解けるのと同時に、巨体そのものが完全にサラサラとした白い灰へと変わり、迷宮の床へと崩れ落ちていったのである。
【極大反魔障壁】が霧散し、迷宮に完全な静寂が戻った。
「やった……の……?」
ひよりは、魔力を完全に使い果たし、その場にバタリと倒れ込んだ。
「ひより!」
セリアが駆け寄る。私は人間の姿になり、倒れたひよりの頭を優しく撫でた。
「見事だ、ひより。お主の魔力の底力、そして我が神社の付喪神たちの結束の勝利だ」
懐の中から、紅緒も、蓑翁も、吉凶も、天鏡も、そして少し疲れた五寸も、みんながひよりの周りに集まり、その健闘を称えていた。
## 終章:王女の秘密と、さらなる日常へ
迷宮の氾濫を未然に防いだひよりは、今度こそ「国の救世主」として、王室から直々に勲章を授与されることになった。
だが、本人は相変わらず、ルミナス魔法学院の図書室の片隅で、私たちが淹れたお茶を飲みながらのんびりと過ごしている。
「いやー、一時は本当に死ぬかと思った。五寸くんの呪い、迫力ありすぎて夢に出そうだよ」
「キケケ、いつでも枕元に立ってやるよぉ」
「遠慮します!」
ひよりが藁人形の姿に戻った五寸を小突く。
「しかし、天照さん。君の操る『ツクモガミ』という存在は、本当に素晴らしいですね。現代の魔法学を根底から覆す、まさに奇跡の遺物です」
セリアが、すっかりひよりの親友ポジションに収まり、嬉しそうに焼き菓子を食べている。
「セリア様、ドレスの件はもういいんですか?」
天鏡が意地悪く鏡面を光らせると、セリアは「あうっ! そ、それはもう忘れてください!」と赤面して取り乱した。その様子を見て、紅緒や吉凶が大笑いする。
私は再び、文机に向かい、この『第二幕』の物語の最後のページをめくった。
「硯水さん、今回の本のタイトルは?」
「ふむ。そうだな。――『名もなき神社のデッドストック・第二幕~地下迷宮のおみくじは、大凶の味がする~』というのはどうだ?」
「センスが独特すぎるよ! でも、まぁ……悪くないかな」
ひよりは窓の外に広がる、剣と魔法の異世界の美しい青空を見上げた。
「パパ、ママ。私、こっちの世界で、実家の泥に埋まったみんなと一緒に、結構楽しくやってるよ。だから……呉の美味しいご飯、私の分までいっぱい食べててね!」
少女の祈るような言葉を、私はしっかりと原稿用紙の余白に書き留めた。
彼女たちの物語は、千年の歴史を持つ道具たちの賑やかな声とともに、これからも紡がれていくのだろう。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
今回は女子高生のお話です。
よろしくお願いします。




