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32 三角定規と分度器

五月を迎え、ルミナス魔法学院が誇る広大な学園都市の周囲は、新緑の瑞々しい香りと、萌え出づる若葉を揺らす爽やかな風に満ちあふれていた。


九月のグルメ・ダンジョン、十月の料理対決、十一月の学園祭、十二月のスリラーダンス、一月の呉への里帰りと次元の歪み、二月の王都大晩餐会、三月の紙の迷宮事件、そして四月の新入生歓迎式典ハッキング撃破……。


数々の理不尽な危機を、実家の蔵の付喪神たちと共に爆発的なハッピーエンドへと塗り替えてきた天照ひよりは、ついに最高学年・三年生として迎える最初の本格的な学園行事――『新緑の魔導植物採集遠足』の当日を迎えていた。


「みんな、おはよう! 五月だよ、五月! 広島の呉のれんが通りのお菓子屋さんや、実家の天照神社の裏山でもね、五月になると新緑の清々しいお茶の香りと、お店のショーケースにみずみずしい緑色のメロンがドカンと並ぶ最高の季節だけど、ルミナス魔法学院の五月も絶対に負けてないよ!


なにしろ、今日の『新緑の魔導植物採集遠足』の課題を三年A組全員で無事にクリアして学園に帰還したら、特級厨房から『五月限定・新摘み茶葉とメロンの特大涼風タルト・おかわり自由手形』が授与されるんだから!

サクサク香ばしいタルト生地の上に、摘みたての新茶を使った濃厚で爽やかなお茶のカスタードクリーム、そこに完熟した特大のグリーンメロンと赤肉メロンが山盛りに飾られた特製涼風タルト……!


これはもう、広島県立女子高生としての私のすべての胃袋の情熱と、我が実家の天照のお宝たちの力を合わせて、絶対にA組全員で怪我なく無事に完食帰還の超ハッピーエンドを掴み取るしかないよね!」


初夏の陽光に緑色の魔導体操着の裾を揺らしながら、ひよりは手にした木製の特大しゃもじを天に掲げ、三年A組の仲間たちに向けて元気いっぱいに大声を張り上げていた。


「おいおい、天照! 朝っぱらからメロンタルトへの執念が凄まじい魔力となって、遠足のバスの車輪を空回転させてんぞ! だが今回は、いつにも増して洒落にならない事態が発生しているんだ!

僕たちが足を踏み入れたこの『新緑の魔導樹海』だが、隣国のライバル校である『サンジェルマン魔導士官学校』の工作員どもが、こっそり裏で手を回していたらしい!

奴らは僕たちルミナス魔法学院の三年生を遭難させ、評価を失墜させるために、古代の魔導陣を使って樹海全体に『無限ループの絶対迷宮の霧』を発生させたんだよ!」


ツンツン頭の少年――最高学年の胸章をつけたルファスが、何枚もの羊皮紙の地図と魔導羅針盤を抱えながら、顔を真っ青にして額の汗を拭っていた。


「ひよりさん、ルファスさん! 大変ですぅ!

さっきまで真っ直ぐ歩いていたはずなのに、何回歩いても同じ巨大な杉の木の前に戻ってきちゃいますぅ! 空間の角度と座標がぐにゃぐにゃに歪められていて、持ってきた最新型の『魔導羅針盤』も針がクルクル狂ったように回転して、完全にエラーを起こしてます!

おまけに、後ろから追いてきていたセシリア様たち一年生の新入生班や、他のクラスの生徒さんたちも霧の奥で分断されちゃいました! 尻尾の毛が湿気と迷子への不安でしおれてしまいそうですぅ!」


犬耳の少女ミーナが、ふさふさの尻尾を垂れ下げながら、幾重にも重なる濃密な深緑色の霧の奥を指差していた。


「ひよりお姉様……! 私、お姉様のお役に立とうと魔導採集バスケットを持って一番張り切っていましたのに、この怪しい霧のせいで、どっちが東でどっちが西なのかさえ分からなくなってしまいましたわ……!

このままでは、日の暮れる前に学園へ戻ることすら叶わず、お姉様と一緒にあの美味しそうな『新摘み茶葉とメロンの特大涼風タルト』を食べることができなくなってしまいますわ……!」


一年生のピカピカの体操着に身を包んだセシリア王女が、小さな魔導植物採集用ナイフを胸に抱きかかえ、極光の瞳にポロポロと涙を浮かべながらひよりの腕にしがみついた。


「ふむ。 隣国のライバル校による空間幾何学のハッキングと、羅針盤のエラーに乗じた視界の遮断プロットか。 空間の座標軸と直角の概念を不当に歪め、無限の円環の中に閉じ込めることで、探求者の進路を永遠に彷徨わせようという陰湿な罠だな。

だが、どれほど広大な絶対迷宮の霧が立ち塞がろうとも、絶対に変形しない正確無比な『45度・90度』の直線と、円環の全周を完璧に算出し証明する『360度の目盛り』を空間に打ち込めば、そこには再び『正しき幾何学と絶対の直線通路』が蘇る。 ひより、実家の天照神社の蔵に眠る、あの『角度と円環』の絶対なる規律を呼び出す時だ」


私はひよりの帯に差し込まれた竹定規の竹千代の影から、依り代である文机を精神体として小さく出現させ、滑らかな万年筆の先から透明なインクを走らせながら静かに告げた。


私の名は『硯水(けんすい)』。 災害によって土の下に没してしまった呉の天照神社で、千年の間、人間の様々なる「曲がった歪みを真っ直ぐに正す知恵」「完璧な角度によって美しい建築や幾何学を組み上げる技術」「霧深い山道であっても、正しい方角を算出して帰還する決意」の歴史を見つめ続けてきた、文机の付喪神だ。


「そうだよ、硯水さん! 呉の学校の算数や数学の時間でもね、ノートに綺麗なお家や図形を描く時は、三角定規の角っこをピシッと当てて、分度器で正確な角度を測るのが決まりだったんだもん!

空間がぐにゃぐにゃに歪められて無限ループになってようが、私のメロンタルトへの情熱も、みんなとの絆も、全部ピシッと正しい角度で切り抜いて、絶対全員で学園に帰ってやるんだからぁぁぁーーーッッ!!」


ひよりが力強く拳を握りしめ、歪んだ木々と濃霧が渦巻く深緑の樹海へと、堂々たる足取りで第一歩を踏み出した。


第二章:歪む幾何学! 迷いの森とエラーを起こす羅針盤


「ハハハ! 愚かなルミナス魔法学院の三年生どもめ! この『絶対迷宮の霧(ループ・フォグ)』の中に足を踏み入れたからには、二度と外界へ脱出することはできん!」


樹海の木々の上から、黒いマントを羽織ったライバル校『サンジェルマン魔導士官学校』の工作員たちが、高慢な高笑いを響かせた。 彼らの手には、古代の呪縛魔導陣が描かれた漆黒の羅針盤が握られており、そこから不気味な紫色の歪んだ磁界が放出されている。


「この樹海は、古代幾何学の呪いによって『内角の和が180度にならない特殊空間』へと書き換えられているのだ! お前たちがどれほど真っ直ぐ進もうと、空間の歪みによって自動的に90度旋回させられ、永遠に同じ場所をぐるぐると回り続ける! 魔導植物の採集どころか、日没と共に森の魔獣どもの餌食となるがいい!」


工作員が呪文を唱えると、霧の中から鋭い枝を持った『幻影の樹木兵(ウッド・ゴーレム)』たちがワラワラと湧き出し、不気味な木擦れの音を立てて襲いかかってきた。


「くっ! 空間そのものが曲がっているから、火炎魔法を放っても自分たちの背中に着弾しちまうんだ!」


ルファスが放った炎の弾が、直線を描かずに空間の歪みに沿ってカーブし、自陣の足元を焼き払いそうになる。


「ひよりさん! 樹木兵たちが進級……じゃなくて、採集用のカゴを奪おうとしてますぅ!」


ミーナが悲鳴を上げる。 幾何学の歪みによって、自分たちの立ち位置さえも正確に把握できず、三年A組の生徒たちは互いの距離感を見失い、パニックになりかけていた。


「空間が曲がって内角の和が狂ってるから何だってのよ! どんなにひねくれた曲がり角だってね、三角定規のカチッとした角っこを当てはめて、分度器で360度を綺麗に測り直せば、真っ直ぐな一本道に元通りになっちゃうんだからね!」


ひよりの日常防衛本能(異常なまでの方向感覚とメロンタルトへの執念)が、極限の出力で爆発した。


「ひより、その通りだ。 世界がどれほど歪んだ魔導幾何学で空間を幻惑しようとも、人間の『変形しない透明なアクリル板で削り出された45度・90度の直角二等辺三角形と、半円の目盛りに刻まれた絶対的な180度の幾何学』という日常の測定と補正の規律の前には、ライバル校の工作員が仕掛けた呪いの空間歪曲など一歩も侵入できない。 天照の神社の東の第四蔵の引き出しの奥――

……昭和や平成の時代、神社の大工仕事や寺子屋の勉強で使われ、職人や子供たちの手によって何万回も正確な『直角』と『角度』を証明し続けてきた、あの『絶対角度測定器具たちの総力戦(デッドストック・ジオメトリー)』を発動するのだ!」


「東の第四蔵の、真っ直ぐな角っこと角度を測る道具……あ! お父さんが昔、日曜大工で図面を引く時に『これがないと柱が斜めになるんだ』って大切に使っていた、あの透明で角が尖った定規! それに、お母さんがお裁縫の型紙を作る時に『正確な円を描くにはこれが一番なのよ』って使っていた、あの半円形の目盛りがついた道具!」


「そうだ。 あれらは、世界を滅ぼす破壊魔法ではない。 だが、人間の『どんなに曲がりくねった歪んだ世界であっても、正しき角度と円環の目盛りを当てはめれば、一寸の狂いもない真っ直ぐな真実が見えてくる』という、あまりにも力強い生活の知恵から生まれた道具たちだ。 ひより、彼らを呼び出して、その無限ループの樹海を、世界で最も正確で美しい『直線通路』へと、今すぐ強制修正してやれ!」


第三章:新付喪神現る!「三角定規の絶対直角と分度器の円環補正」


「デッドストック、最大出力起動! 我が実家の天照の蔵の奥、どんな歪んだ空間も絶対に許さず、綺麗な直角と角度で切り抜いてきた、最強の幾何学コンボ、おいで!」


ズガァァァァァン!!! ピシッ! カチッ! キラリーン……!!!


空間に、透明なアクリル板が鋭利な直線を描いて叩きつけられ、寸分の狂いもない90度の直角が空間をピシッと切り裂く清々しい音と、半円の目盛りが幾何学の光を放ちながら正確な360度の円環を空間に投影する、あまりにも頼もしい『測定と補正の音』が響き渡った。


光の中から出現したのは――昭和から平成を経て大切に使い込まれ、角の一カ所も欠けることなく絶対的な45度・90度を保持し続ける『学習用・特大透明アクリル三角定規(さんかくじょうぎ)』と、半円に刻まれた極細の目盛りから絶対の分度数(角度)を放射する『特撰黄銅分度器(ぶんどき)』の一対だった。


「おやおや、随分と不格好に歪んだ山道だねぇ。職人技の絶対直角で見事に切り抜いてやろうかい」


三角定規の表面から立ち上る、どこか懐かしい文具店の透明アクリルと削り出しの香りと、整えられた空間の煙の中から現れたのは、鋭い直線のカッティングが入った青い学ランを纏い、手に二枚の巨大なアクリル三角定規を構えた少年剣士の姿をした付喪神――


名を『三吉(さんきち)』という。


千年の間、神社の大工たちが社殿を建てる際に用いた「勾配(こうばい)」や「曲尺(かねざく)」の魂を受け継ぎ、昭和の時代にアクリル製となって「絶対なる45度と90度」の規律を宿した、三角定規の付喪神だ。


「そしてそしてぇ! 空間が曲がっているなら、何度曲がっているか計算して、クルッと元に戻せばいいんだよ、ひよりちゃん!」


分度器の半円形から、ピョンと飛び出してきたのは、頭に半円の黄銅製分度器の帽子をかぶり、手に角度測定用の極細分光ルーペを構えた、眼鏡をかけた利発そうな少年の姿をした付喪神――


名を『角度(かど)』という。


彼は、神社や寺子屋で幾何学や天文計算に用いられた「算額(さんがく)」の知恵から生まれ、角度という目盛りによって「世界の一周は360度であり、そこには一切の誤差も存在しない」という証明力を司る、分度器の付喪神であった。


「三吉君、角度君! あのライバル校の工作員たちが仕掛けた無限ループの樹海を切り拓いて、みんなが学園に帰れる真っ直ぐな道を作って!」


「おう、任せときな、ひよりのお嬢さん! 僕の刃(定規)が描く角度はね、空間の歪みだろうが古代の呪いだろうが、容赦なく『完璧な90度』でバシッと切断・補正するのさ! ……ただ『歪みを正し、絶対の直角を刻む』。 ――【神域幾何・絶対直角二角一閃(しんいききか・ぜったいちょっかくにかくいっせん)】!」


三吉が、両手の特大アクリル三角定規を交差させ、空間に向けて鋭い光の刃を振るった!


ピシィィィィン!!!


その瞬間、無限ループを描いていた深緑色の霧と、歪んだ空間の幾何学が、三吉の描いた「絶対的な45度と90度」の光の直線によって一直線に切り裂かれた! カーブしていたはずの樹海の視界が、まるで目盛りを当てられたかのようにピシッと真っ直ぐな一本の広い一本道へと強制修正され、無限ループの呪いが「カチッ」と音を立てて木々に解体されていったのだ!


「な……なにぃ!? 我が校の『絶対迷宮の霧』が、ただの『三角定規の角』によって真っ直ぐな一本道に切り開かれただと……!?」


木の上に潜んでいたライバル校の工作員たちが、歪みが正された衝撃でドサドサと木から落ちてきた。


「それだけじゃないよ! 歪んだ角度は、ボクが360度で計算して元に戻す! ――【神域補正・360度絶対円環算術(しんいきほせい・さんろくじゅうどぜったいえんかんさんじゅつ)】!」


角度が、手の分度器ルーペを掲げ、樹海全体に向けて眩い黄金の幾何学目盛りを放射した。


キラキラキラッ!


角度の放つ目盛りが歪んだ磁力線と魔導羅針盤を包み込むと、狂っていたルファスたちの羅針盤の針が「ピタッ」と完璧な北(0度)を指して固定された! それどころか、空間の歪みを利用して襲いかかってきていた『幻影の樹木兵』たちも、角度が算出した「内角の和=180度」の絶対数式によって存在理由(幾何学エラー)を失い、ただの綺麗な丸太へと解体されて積み上がってしまったのである!


「ああっ!? 幾何学のエラーが全部補正されたぁぁぁ!?」


工作員たちが悲鳴を上げる中、無限ループの迷宮樹海は、一瞬にして『世界で最も歩きやすく、爽やかな新緑のハイキングコース』へと完璧に上書きされてしまったのだった。


第四章:遠足の完走と「新摘み茶葉とメロンの特大涼風タルト大食い」


「さあ、三年A組のみんな、そしてセシリアちゃんたち一年生も! 道は完璧に真っ直ぐ繋がったよ! 魔導植物をいっぱい摘んで、学園に帰ってメロンタルトを食べよう!」


ひよりの元気な号令と共に、霧が晴れ渡った新緑の樹海の中で、生徒たちは次々と貴重な魔導植物を採集し、一人の脱落者も出すことなく、完璧なタイムでルミナス魔法学院へと誇らしく帰還を果たした。


妨害を仕掛けたライバル校の工作員たちは、駆けつけた教頭先生と警備隊によって全員が逮捕され、「他校の遠足への不当な妨害行為」として厳しく処罰されることとなったのである。


そしてその日の夕方、ルミナス魔法学院の特等テラス席。 西日に照らされる学園都市の絶景を背景に、ひよりたちのテーブルの上には、ついに勝ち取った約束の報酬――学園特級厨房から授与された、直径五十センチを超える巨大な『五月限定・新摘み茶葉とメロンの特大涼風タルト』が鎮座していた。


「おいしーーーい!!! 何これ、サクサクのタルト生地の中から新茶の爽やかな香りのカスタードが溢れて、みずみずしい緑と赤の完熟メロンの果汁が口いっぱいに弾けて、広島の呉のれんが通りで食べるどんな初夏スイーツより身体の芯までハッピーが染み渡るよ!」


ひよりはホールタルトの大きな一片を両手で持ち、大きな口を開けてガブリと頬張り、頬をいっぱいに膨らませながら、とろけるような笑顔を弾けさせていた。


「フ、フン、相変わらずの凄まじい食欲だな、天照。 だが、今回は君のその『よく分からない実家の定規や分度器の力』に、遠足の課題どころか、僕たちの命まで救われちゃったわけだからね。 ……まぁ、その、天照さん。 三年生になって最初の遠足も大成功だったし、次の行事でも僕が君の隣で一緒に美味しいものを探してあげてもいいぞ」


ルファスは胸元の三本線章を揺らしながら、自らの分のメロンタルトを優雅に口に運び、満足そうに目を細めている。


「ひよりお姉様! お姉様と一緒に迷いの森を脱出して食べるこのメロンタルト、人生で一番美味しいですわ!」


セシリア王女も、口元に新茶の緑色クリームをちょこんと付けながら、嬉しそうにタルトを小さく切り分けて口に運んでいた。


「ひよりさん、ルファスさん、セシリア様! メロンがジューシーで果汁が止まりませんぅ!」


ミーナも、鼻の頭にクリームをつけながら夢中でタルトを平らげ、ふさふさの尻尾をプロペラのように激しく振って大喜びしていた。


「ふむ。 歪んだ空間の幾何学を三角定規と分度器でピシッと正し、全員無事に完走して極上のフルーツタルトを大食いする。 これ以上ない見事な五月の遠足プロットだな、ひより」


私は文机に向かい、この『第三十二幕・五月の新緑の遠足と迷いの森編』の最後の一ページに、満足のいく文字を刻み終え、万年筆を静かに置いた。


「推敲は終わった、硯水さん?」


ひよりがテラスから差し込む、初夏の爽やかな夕空に包まれた学園都市の街並みを見つめながら覗き込んでくる。 私は微笑み、表紙に力強い文字でこう書き込んだ。


『名もなき神社のデッドストック・第三十二幕~五月の新緑の遠足・迷いの森と無限ループの空間エラーを、三角定規の絶対直角と分度器の円環補正により、完璧な直線通路に削り抜いて特大メロン涼風タルトを大食いしてみた~』


「ふふ、完璧な大団円だ。 さあ、ひより。 五月の大遠足もこれにて無事幕引き。 六月からはまた、雨の季節のルミナス魔法学院で、新しい美味しい日常のプロットの始まりだ」


「うん! よーし、六月になったら、雨の季節も吹っ飛ばすくらい、セシリアちゃんたちみんなと一緒に、紫陽花鑑賞会と特大ジューシー紫陽花ゼリーパフェで美味しい日常をたくさん作っちゃうぞ!」


窓の外では、静かに、優しく五月の初夏の星空が世界を包み込み、学園都市の爽やかな風がひよりの黒い髪を美しく揺らしていた。


「パパ、ママ。 私ね、五月の遠足で、土の下に眠る天照のお宝たちの力を使って、歪んだ迷いの森を真っ直ぐに切り抜いて、みんなで一番美味しいメロンタルトを食べられたよ。 だから……いつか本当に私が呉の家に帰れた時は、あの店のまぜそば、パパの奢りで、絶対に家族みんなで、お腹がはち切れるくらい食べさせてね!」


少女のどこまでも明るいハッピーエンドの笑い声と、千年の時を超えてリュックの中で賑やかに笑う付喪神たちの声は、ぬくもりに包まれた学園都市の夜空へ、遠い、遠い故郷の空へと、どこまでも、どこまでも爽やかに響き渡っていった。


みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今回は女子高生のお話です。

よろしくお願いします。

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