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31 プラスチック下敷きと金色画鋲

四月を迎え、ルミナス魔法学院の広大な敷地は、満開の魔導桜が舞い散る眩しい春の景色に包まれていた。


新学期。二月の晩餐会、そして三月の紙の迷宮事件……数々の激動を乗り越え、天照ひよりたちはついに最高学年である『三年生』へと進級を果たしていた。


そしてこの四月、ひよりを「お姉様」と慕うふたつ年下の第一王女セシリアも、新入生として晴れてこの学院へと入学してきたのである。


「みんな、おはよう! 四月だよ、四月! 広島の呉のれんが通りのお菓子屋さんでも、春になると新緑の綺麗な抹茶スイーツがたくさん並ぶけど、ルミナス魔法学院の四月も負けてないよ!

なにしろ、今日の『新入生歓迎式典』を最高学年として無事に成功させたら、学園の特級厨房から『四月限定・王宮特製・新緑の宇治抹茶生どら焼き・おかわり自由手形』が授与されるんだから!


ふんわり香ばしく焼き上げられた皮の中に、濃厚でほろ苦い特選宇治抹茶の生クリームと、ほくほくの北海道産小豆の餡子がぎっしり詰まった特製生どら焼き……! これはもう、広島県立女子高生としての私のすべての胃袋の情熱と、我が実家の天照のお宝たちの力を合わせて、絶対に三年生全員で新入生歓迎式典を大成功させて、最高のハッピーエンドを掴み取るしかないよね!」


春風に桜色の魔導制服の裾を揺らしながら、ひよりは手にした木製の特大しゃもじを天に掲げ、三年A組の仲間たちに向けて元気いっぱいに大声を張り上げていた。


「おいおい、天照! 朝っぱらから抹茶生どら焼きへの執念が凄まじい魔力となって、中庭の桜吹雪を逆流させてんぞ! だが、浮かれている場合じゃない! 今年の入学生の中には、王都の古い超過激派貴族の血を引く『新入生代表』のエリート貴族・ヴァルハイトが混ざっているんだ! あいつは昔から『天照ひよりのような平民上がりの落ちこぼれが最高学年の特異点気取りなど片腹痛い』と、君のことを激しく目の敵にしているらしい!」


ツンツン頭の少年――最高学年の胸章を誇らしげにつけたルファスが、何十冊もの新入生名簿と魔導セキュリティのスクロールを抱えながら、顔を真っ青にしてハチマキを締め直していた。


「ひよりさん、ルファスさん! 大変ですぅ! 式典の会場である大講堂に、セシリア様をはじめとする何百人ものピカピカの新入生さんたちが集まってますぅ! でも、新入生代表のヴァルハイトさんが、壇上のマイク型魔導具に怪しい黒い呪導スクリプトをコソコソ仕込んでいるのを見ちゃいました! あの呪いは、新入生代表の挨拶と同時に発動して、壇上に並ぶ私たち三年生上級生の魔力を逆流暴走させ、全校生徒の前で大恥をかかせようとする最悪の罠です! 尻尾の毛が静電気でパチパチになっちゃいそうです!」


犬耳の少女ミーナが、ふさふさの尻尾を毛立たせながら、客席の大講堂から伝わってくる不穏な魔力のノイズを指差していた。


「お姉様! 私が王女の権限を以て、あの不敬な新入生を即刻つまみ出させますわ! ……と言いたいところですけれど、式典の前に証拠もなく動けば、あ悪徳貴族たちが『新入生への理不尽な弾圧だ』と騒ぎ立て、お姉様の名誉に傷がついてしまいますの……! 四月から新入生として入学した私が、お姉様のお役に立てないなんて、悔しくて涙が出ますわ!」


ピカピカの制服に身を包んだセシリア王女が、漆黒のドレスから制服へと着替えた可憐な姿で、極光の瞳にうっすらと涙を浮かべてひよりの袖を引っ張った。


「ふむ。 新入生の慢心と増長、そして上級生への不当な嫉妬によるハッキング・プロットか。 挨拶の言葉に悪意あるスクリプトを乗せ、三年生の静かな魔力領域を乱して暴走させようという魂胆だな。

だが、どれほど陰湿な呪いのノイズが放たれようとも、絶対の遮断膜で弾き返し、慢心した新入生の鼻柱を掲示板の紙のごとくガチッとピンで固定してやれば、そこには再び『正しき上下の秩序』が蘇る。 ひより、実家の天照神社の蔵に眠る、あの『遮断と固定』の絶対なる規律を呼び出す時だ」


私はひよりの帯に差し込まれた竹定規の竹千代の影から、依り代である文机を精神体として小さく出現させ、滑らかな万年筆の先から透明なインクを走らせながら静かに告げた。


私の名は『硯水(けんすい)』。 災害によって土の下に没してしまった呉の天照神社で、千年の間、人間の様々なる「下からの無礼な干渉を退ける知恵」「間違った主張を壁にガチッと留めて固定する規律」「新しい季節を迎え、先輩として後輩を導く覚悟」の歴史を見つめ続けてきた、文机の付喪神だ。


「そうだよ、硯水さん! 呉の学校でもね、下級生が生意気な態度をとったり悪ふざけをしようとしたら、下敷きでパシッと遮断して、大事なお知らせは画鋲で掲示板にしっかり固定するのが決まりだったんだもん!

新入生の仕掛けた陰湿な罠も、私の抹茶生どら焼きへの情熱も、全部まとめてガチッと固定して、最高の先輩としてのハッピーエンドを見せてやるんだからぁぁぁーーーッッ!!」


ひよりが力強く拳を握りしめ、新入生の視線が集まる大講堂のステージへと、堂々たる足取りで第一歩を踏み出した。


第二章:新入生代表の罠! 暴走する呪導スクリプト


「新入生代表、ヴァルハイト・フォン・アーク! 登壇!」


司会の教師の声が響き渡り、金髪をなでつけ、高慢な笑みを浮かべたエリート貴族の少年・ヴァルハイトが壇上へと上がった。 彼は胸を張り、壇上のマイク型魔導具の前に立つと、仕込んでおいた不気味な黒い魔力を指先からコソコソと注入した。


「ふはは……見よ、あの壇上に並ぶ天照ひよりたち三年生の情けない顔を! このマイクから放たれる『音響魔力暴走スクリプト(ノイズ・バースト)』が起動すれば、上級生たちの魔力回路は過負荷を起こし、全身からダサい魔力花火を吹き出して全校生徒の前で失態を晒すことになる! 最高学年の威厳など粉々に砕け散り、この僕こそがこの学院の真の支配者として君臨するのだ!」


ヴァルハイトが不敵に口を開き、マイクに向かって声を張り上げた。


「――新入生を代表し、挨拶を述べさせていただきます! 我が輝かしい知識の波よ、不純なる上級生どもを飲み込め!!」


キィィィィィン!!!!!


その瞬間、マイクから超音波のような不快な黒い魔力波形が放射され、壇上に並ぶ三年生たちの魔力回路へと直接ハッキングを仕掛けてきた!


「ぐぬぬっ!? な、なんだこの頭に響くノイズは!? 魔力が勝手に暴走して、指先から魔法が暴発しそうだぞ!」


ルファスが頭を押さえて膝をつきそうになる。 他の三年生たちも、突然の魔力酔いと過負荷に顔を歪め、式典のステージは一瞬にしてパニックに陥りかけた。


「ははは! 見たか、これが僕の圧倒的な魔導計算力だ! 落ちこぼれの三年生どもめ、無ざまに地面に這いつくばるがいい!」


ヴァルハイトが勝ち誇った顔で嘲笑する。


しかし、その黒いノイズの波が天照ひよりの元へと到達したその時――。


「ちょっと待ちなさいよ! せっかくの入学式で、セシリアちゃんたち新入生がワクワクしてるのに、そんな陰湿なノイズで私たちの抹茶生どら焼き……じゃなくて、先輩としての威厳を台無しにされてたまるかぁぁぁーーーッッ!!」


ひよりの日常防衛本能(異常なまでの甘味への執念と先輩としてのプライド)が、極限の出力で爆発した!


「ひより、その通りだ。 世界がどれほど不当なノイズで空間を乱そうとも、人間の『プラスチックの下敷きを素早く擦り合わせて静電気の絶対遮断膜(バリア)を張り、鋭利な画鋲の針で相手の不当な主張(因果)を掲示板の木枠へガチッと刺し止め固定する』という日常の保護と掲示の規律の前には、調子に乗った新入生の呪いなど一歩も侵入できない。 天照の神社の東の第三蔵の引き出しの奥――

……昭和や平成の時代、地域の子供たちが学校で使い古し、神社の寺子屋で何百回も下敷きとして使われて摩擦の静電気を蓄えた『赤と青の特製プラスチック下敷き』と、歴代の神主たちが境内の掲示板にお知らせを留め続けてきた『金色の特撰頭部付き画鋲』を呼び出すのだ!」


「東の第三蔵の、ノイズを跳ね返して固定する道具……あ! お父さんが昔、学校の授業でプラスチックの下敷きを頭に擦りつけて、髪の毛を逆立てたり静電気で小さな紙くずをバチバチ弾いてた、あの下敷き! それに、おじいちゃんが神社の掲示板に『初詣のお知らせ』を、指でグッと押し込んで絶対に落ちないように留めていた、あの金属の押しピン!」


「そうだ。 あれらは、世界を滅ぼす破壊魔法ではない。 だが、人間の『どんなに嫌なノイズや無礼な干渉であっても、下敷きでパシッと跳ね返し、相手の慢心した主張を画鋲で壁に固定してしまえば、それ以上は一歩も進めない』という、あまりにも力強い生活の知恵から生まれた道具たちだ。 ひより、彼らを呼び出して、その調子に乗った新入生の呪いを、掲示板のゴミとしてガチッと固定してやれ!」


第三章:新付喪神現る!「下敷きの静電気ガードと画鋲の絶対固定」


「デッドストック、最大出力起動! 我が実家の天照の蔵の奥、どんな無礼なノイズも絶対に許さず、相手の慢心をガチッと刺し止めてきた、最強の遮断コンボ、おいで!」


ズガァァァァァン!!! バチバチバチバチッ!!! グサッ!!!


空間に、透明なプラスチック板が高速で叩きつけられ、猛烈な静電気のバリアが青い火花を散らす音と、鋭利な鋼鉄の針が頑丈な掲示板の木枠へと容赦なくグサッと深く刺し込まれるような、あまりにも頼もしい『遮断と固定の音』が響き渡った。


光の中から出現したのは――昭和の小学生たちが愛用し、表面に程よい擦れ傷と強烈な静電気保持能力を宿した、赤と青の二枚組み『学習用・特大プラスチック下敷き(したじき)』と、金の真鍮製キャップに極細の鋼鉄針を取り付け、一度刺さったら二度と抜けない威圧感を放つ『掲示用・特撰金頭画鋲(画鋲・押しピン)』の一対だった。


「おやおや、随分と生意気で、失礼なノイズをまき散らす新入生だねぇ。 これじゃあ、せっかくの四月の晴れやかな式典が、台無しになっちまうよ」


下敷きの表面から立ち上る、どこか懐かしい文具店のプラスチックと静電気の香りと、整えられた空間の煙の中から現れたのは、ツルリとした赤いブレザーに身を包み、手に一枚の青い下敷きを軽快に弄びながら、涼しげな目元を光らせる少女の姿をした付喪神――


名を『静子(しずこ)』という。


平成や昭和の時代、教室のデスクで無数の鉛筆の筆圧を受け止め、下からの突起や摩擦のノイズを全て滑らかに受け流してきた「絶対平面」の執念から神格を得た、下敷きの付喪神だ。


「そしてそしてぇ! ノイズを弾くだけじゃ、あの大口叩きの新入生は反省しないからね! ボクがこの金の頭の針で、あいつの慢心した鼻柱を壁にグサッと固定してあげるよ、ひよりちゃん!」


画鋲の金のキャップから、ピョンと飛び出してきたのは、頭に大きな金の画鋲の帽子をかぶり、両手に鋭利なピン状の槍を構えた、いかにも勝ち気で小憎らしい少年の姿をした付喪神――


名を『針太郎(しんたろう)』という。


彼は、神社の掲示板や学校の壁で、何百枚もの大雨や強風に晒されるポスターを、その小さな身体一本で「絶対剥がれ落ちない規律」として固定し続けてきた、画鋲の付喪神であった。


「静子さん、針太郎君! あの新入生のヴァルハイト君が仕掛けたノイズを弾き返して、あいつの慢心した罠をステージの壁にガチッと刺し止めて!」


「おう、任せときな、ひよりのお嬢さん! 私の身体(下敷き)が展開する静電気バリアはね、どんな嫌がらせのハッキングだろうが、一滴も通さずパシッと弾き返すのさ! ……ただ『平らな心で、不当な圧力を全て受け流す』。 ――【神域遮断・絶対静電気極薄バリア(しんいきしゃだん・ぜったいせいでんきごくうすばりあ)】!」


静子が、自らの本体である赤いプラスチック下敷きを両手で力強く構え、マイクから放たれていた黒い音響ノイズに向けて、宙を一閃するように叩きつけた!


バチチチチチッ!!!


その瞬間、三年生たちを苦しめていた黒い呪いの波形が、静子の下敷きが放つ「強烈なプラスチック静電気膜」に直撃し、まるで鏡に跳ね返された光のように、一ミリも通さずにそのまま180度逆流して、発信元であるヴァルハイト自身へと勢いよく跳ね返っていったのだ!


「な……なにぃ!? 僕の完璧なハッキング・スクリプトが、ただの『赤いプラスチック板』にパシッと弾き返されただと……!?」


ヴァルハイトが驚愕し、自分の放ったノイズをまともに浴びて「ぐはっ!?」と自爆の魔力花火を顔面から噴き上げた。


「それだけじゃないよ! はい、ボクの番! グサッ! ピンポンパンポンッ!! ――【神域固定・金頭一針絶対掲示(しんいきこてい・きんとういっしんぜったいけいじ)】!」


針太郎が、驚異的なスピードで宙を舞い、ヴァルハイトが仕込んでいた黒い魔導スクリプトの因果、そして狼狽するヴァルハイト自身の襟元を、壇上の巨大な『新入生歓迎掲示板』の木枠に向けて、ドスン! と金頭画鋲の針で力強く刺し留めた!


不思議なことに、針太郎の針がグサッと刺さった瞬間、ヴァルハイトの身体は物理的にも魔力的にも掲示板の壁へと完全に固定され、一歩も動くことも、追加の呪いを唱えることもできなくなってしまったのである! それどころか、彼が仕掛けていた悪意ある罠の内容が、掲示板の上に『※新入生代表による浅はかなハッキング工作の全貌』という分かりやすいお知らせ紙となって、ピン留め状態で全校生徒に公開されてしまったのだ!


「ああっ!? 僕の企みが、ただの『押しピン』で掲示板に晒し上げにされたぁぁぁ!?」


ヴァルハイトが叫ぶが、針太郎の固定は絶対に外れない。 新入生の陰湿なトラップが、あっけなくただの「掲示板の恥ずかしいお知らせ」として処理された大講堂には、あと数分で、歴史上見たこともない最高の歓迎パフォーマンスが幕を開けようとしていた。


第四章:圧倒的パフォーマンスと「新緑の生どら焼き大団円」


「さあ、新入生のみんな、お待たせしました! これが、ルミナス魔法学院が誇る最高学年・三年生からの、本当の歓迎のパフォーマンスだよ!」


ひよりの合図と共に、ハッキングから解放された三年生四十人が、一斉に壇上で華麗な魔導演舞を開始した! ルファスが放つ黄金の炎の鳥が天井を舞い、ミーナが駆け抜ける風の粒子が新入生たちの頭上を優しく撫で、エルフの生徒たちが放つ七色の光の粒子が、大講堂全体を幻想的な桜吹雪へと変えていく。


「す……凄い! これが最高学年三年生の圧倒的な魔力と絆か!」


「ヴァルハイトとかいう新入生は、押しピンで壁に留められて反省してるぞ!」


「三年生の先輩たち、かっこいいーーーッ!」


客席の新入生たちから、割れんばかりの歓声と大拍手が巻き起こった。 セシリア王女も目を輝かせ、壇上のひよりに向けて「ひよりお姉様、最高に格好良いですわ!」と手を振っていた。


「ぐぬぬ……完敗だ……。 僕の浅はかな呪いなど、先輩たちの足元にも及ばなかった……」


掲示板に固定されたままのヴァルハイトも、三年生の圧倒的なパフォーマンスと寛大な姿勢にぐうの音も出ず、涙を流して改心したのだった。


第五章:四月の風と、宇治抹茶生どら焼きの約束


こうして、四月の学園都市における「新入生歓迎式典ハッキング事件」は、実家の天照の蔵のすべての付喪神たちの遮断と固定の知恵により、完全なる大勝利とハッピーエンドで幕を閉じた。


春の柔らかな風が吹き抜ける、ルミナス魔法学院の特等テラス席。 ひよりはテーブルの上で、ついに守り抜いた最高の報酬――学園特級厨房から授与された、重厚なお皿に盛られた『四月限定・王宮特製・新緑の宇治抹茶生どら焼き』を前に、至福の時間を過ごしていた。


「おいしーーーい!!! 何これ、ふんわりした皮の中からほろ苦い抹茶クリームが溢れて、小豆の優しい甘さと合体して、広島の呉のれんが通りで食べるどんな和菓子より身体の芯までハッピーが染み渡るよ!」


ひよりは特大の抹茶生どら焼きを両手で抱えて頬張り、頬をリスのようにパンパンに膨らませながら、満面の笑顔を浮かべていた。


「フ、フン、当然さ。 今回は君のその『よく分からない実家の下敷きや画鋲の力』に、三年生としての僕たちの威厳どころか、新入生たちの未来まで救われちゃったわけだからね。 ……まぁ、その、天照さん。 三年生になっても、僕が君の隣で一緒に美味しいものを探してあげてもいいぞ」


ルファスは胸元の三本線章を誇らしげに揺らしながら、自らの分のどら焼きを大事そうに口に運び、どこか幸せそうに微笑んでいる。


「ひよりお姉様! 私もお姉様と同じ学院で、こうして美味しいどどら焼きを食べられて最高に幸せですわ!」


セシリア王女も、口元に緑色の抹茶クリームをちょこんと付けながら、嬉しそうにどら焼きを平らげていた。


「ひよりさん、ルファスさん、セシリア様! 抹茶が濃厚で最高ですぅ!」


ミーナも、お皿をピカピカになめる勢いでどら焼きを平らげ、尻尾を千切れんばかりに激しく振って大喜びしていた。


「ふむ。 新入生の無礼なノイズを下敷きで跳ね返し、画鋲でガチッと掲示板に固定して見事な大団円だな、ひより」


私は文机に向かい、この『第三十一幕・四月の新入生歓迎式典編』の最後の一ページに、満足のいく文字を刻み終え、万年筆を静かに置いた。


「推敲は終わった、硯水さん?」


ひよりがテラスから差し込む、温かい春の光に包まれた学園都市の景色を見つめながら覗き込んでくる。 私は微笑み、表紙に力強い文字でこう書き込んだ。


『名もなき神社のデッドストック・第三十一幕~四月の新入生歓迎式典・ハッキング暴走を、下敷きの静電気ガードと画鋲の絶対固定により、先輩の威厳を示して極上宇治抹茶生どら焼きを堪能してみた~』


「ふふ、完璧な大団円だ。 さあ、ひより。 最高学年三年生としての最初の大騒動もこれにて無事終了。 五月からはまた、このルミナス魔法学院で、新しい美味しい日常のプロットの始まりだ」


「うん! よーし、五月になったら、セシリアちゃんたち新入生も一緒に、新緑の遠足と特大メロンタルトで美味しい日常をたくさん作っちゃうぞ!」


窓の外では、静かに、優しく四月の満天の星空が世界を包み込み、王宮の暖かい春の魔導の光がひよりの黒い髪を美しく照らし出す。


「パパ、ママ。 私ね、三年生になって最初のお祭りで、土の下に眠る天照のお宝たちの力を使って、生意気な新入生の罠をパシッと弾き返して、最高にかっこいい先輩になれたよ。 だから……いつか本当に私が呉の家に帰れた時は、細いうどんとかき揚げトッピングで、それとカレイ南蛮も、パパの奢りで、絶対に家族みんなで、お腹がはち切れるくらい食べさせてね!」


少女のどこまでも明るいハッピーエンドの笑い声と、千年の時を超えてリュックの中で賑やかに笑う付喪神たちの声は、ぬくもりに包まれた学園都市の夜空へ、遠い、遠い故郷の空へと、どこまでも、どこまでも響き渡っていった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

リアクションボタンもよろしくお願いします

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

今回は女子高生のお話です。

よろしくお願いします。

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