10 注連縄と神酒の樽と神楽鈴 後編
新作 第3弾目の投稿です。
題名 転生したらしいけどスキルデッドストックって何???
今回の主人公は海軍さんの街呉からの転生した女子高生のお話です
はちゃめちゃのスキルで異世界を乗り越えます。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
パラレルワールド編 ダビンチは世界遺産のナスカから謎の大陸ムーのお話です!
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
## 第三章:時空魔神の猛攻と「お神酒の樽」
自慢の時空停止を破られた魔神クロノスは、その巨大な時計の歯車を激しく回転させ、次なる絶技を発動した。
「ならば、時間の『加速』と『逆行』を同時に引き起こし、その結界ごと肉体を塵に還元してやるわ! 【因果崩壊】!」
注連丸の結界の外側で、時間が一秒の間に一万年も進んだかと思えば、次の瞬間には一万年過去に戻るという、凄まじい「時間の渦」が発生した。結界の強固な障壁も、外側からの極端な経年劣化と先祖返りの連続攻撃を受け、ギチギチと悲鳴を上げ始めた。
「うっ……さすがに世界の法則そのものの連続負荷は、我が縄の繊維を摩耗させますね。ひより様、結界の維持に、さらなる『神聖な活力』が必要です!」
注連丸が少しだけ表情を険しくする。
「神聖な活力!? 金蔵さんの金貨はもう古龍の時に使い切っちゃったよ! 硯水さん、どうすればいいの!?」
「慌てるな、ひより。神を、そして付喪神を最も効率よく『限界突破』させるものなど、我が神社には一つしか存在せん」
私は文机の前に座り、時間を動かせるようになった原稿用紙にペン先を向けた。
「本殿の神棚の下、秋祭りの度に神様へと奉納され、神職も、氏子も、全員がそれを飲んで神と一体になり、神がかり的な力を発揮してきた『あの聖なる液体』の器を呼び出すのだ」
「神様へのお供え物……あ! お祭りの時に、みんなが『ありがたや、ありがたや』ってガブガブ飲んで、神主のパパが真っ赤になって踊ってた、あの……!」
「そうだ。あれは、飲む者に神の依り代としての『爆発的な霊力』を与える、最強のドーピングアイテムだ」
ひよりは自身の魔力タンクの底を叩き、注連丸の結界の真ん中に、最大級のデッドストックの術式を展開した。
「デッドストック! 我が家の神棚の下に眠る、神様を一番元気にするお宝、ここに出てきて!」
ドォォォン!
と、威勢の良い音と共に現れたのは――美しい木目が施され、赤い飾り紐で結ばれた、超巨大な『お神酒の樽』だった。上部には「奉納」と力強い文字が書かれている。
「ガハハハハ! 待たせたな、お前たち! 祭りの時間だ! 神様も付喪神も、人間も魔物も、全員ワシの酒を飲んで、天まで踊り明かそうじゃねえか!」
樽の蓋がポンと跳ね上がり、中から現れたのは、紅白の巫女服のような衣装を小粋に着崩し、手には巨大な柄杓を持った、天真爛漫で豪快な少女の姿をした付喪神――名を『神酒』という。千年の間、神社の最重要儀式で「神の飲み物」として奉納され、人々の信仰と神の祝福を極限まで凝縮して蓄えてきた、お神酒樽の付喪神だ。
「神酒ちゃん! みんなに活力をちょうだい! あの時計の化け物を吹き飛ばす力を!」
「おうよ、任せとき! ワシの神酒はな、一口飲めば霊力が百倍、二口飲めば神様をも超越する『神がかり』を引き起こすんだから! ――【神威顕現・八百万大宴会】!」
神酒が巨大な柄杓で樽の中の無色透明な液体を掬い、結界の中にいる全員へと豪快にぶち撒けた。
その聖なる液体が霧となってひよりや注連丸、そして紅緒たちに降り注いだ瞬間、全員の体から、文字通り「天を衝くほどの黄金の神気」が爆発的に立ち上った。
「おおおぉぉぉ……!!
……力が、力が無限に湧き上がってくるでぇぇ!」
紅一文字(紅緒)の刀身が、通常の百倍以上の巨大な光の刃へと膨れ上がる。
「素晴らしい。我が繊維の強度が、一瞬で一万年分の時間の負荷に耐えるほどに強化されました」
注連丸の結界が、ダイヤモンド以上の硬度を持つ「神聖なる絶対障壁」へと進化し、魔神の因果の嵐を逆に完全に押し潰して消滅させた。
## 第四章:時空の狭間の決戦と「お神楽の鈴」
「な……何というデタラメな霊力だ……! 世界の因果の計算が、あの樽の液体のせいで完全に狂わされている……!」
魔神クロノスは、自らの時間操作が一切通用しないことに絶望し、最後の手段として、自らの本体である『時空の核』を露出させ、世界そのものを道連れに自爆しようと輝き始めた。
「おのれ、ならばこの世界ごと、数千年の時間の彼方へと消え去るが良い!」
「ひより、今だ! 奴の自爆のプロットを書き換える!」
私は文机に向かい、猛然と万年筆を走らせた。神酒の力で私の執筆速度も通常の百倍になっており、空間に浮かび上がる原稿用紙が、凄まじい光を放ちながら文字を刻んでいく。
「でも、硯水さん! 敵の核が、激しく次元を移動してて、私の現実改変の照準が定まらないよ! 奴の『存在の座標』を、この世界に完全に固定して!」
「ふむ。次元を跨ぐ神出鬼没の核か。……ならば、我が神社の『最も神様をその場に呼び寄せ、その魂を歓喜で固定してきた』、本殿の神楽殿に保管されていた『あの最高の楽器』の出番だな」
「神楽殿の楽器……あ! お祭りの時に、巫女さんがシャンシャン鳴らしながら、神様を降ろしてた、あの……!」
「そうだ。あれは、あらゆる次元に隠れた神や魔の魂を、その美しい音色で『現世』へと強制的に引き摺り下ろし、釘付けにする至高の誘導兵器だ」
ひよりは溢れる黄金の霊力を両手に集め、天に向けて放った。
「デッドストック、最後のお宝! 神様を呼び寄せ、その場に固定する、最高の音色をここに!」
シャン、シャン、シャン……♪
暗黒の時空の狭間に、あまりにも美しく、厳かな鈴の音が響き渡った。
光の中から出現したのは――金色の細い柄の先に、何重にも重なり合った小さな黄金の鈴がびっしりと取り付けられた、美しい『神楽鈴』だった。柄の下からは、五色の長い絹の布が、鮮やかに風に舞っている。
「……うふふ。皆様、お祭りの準備は整いましたよ。神様も、魔神様も、我が鈴の音の前では、美しく踊るだけの存在です」
神楽鈴の光の中から現れたのは、五色の衣を纏い、髪に美しい花の飾りを挿した、大変に気品があり、どこか神秘的な少女の姿をした付喪神――名を『鈴音』という。千年の間、神社の秋祭りで「神楽」を舞う巫女の手に握られ、神を歓喜させ、その場に留まらせるためだけに音を奏で続けてきた、神楽鈴の付喪神だ。
「鈴音ちゃん! あの次元を飛び回ってる時計の化け物を、この世界に完全に固定して!」
「お安い御用です。我が鈴の音は、魂の拠り所。――【天岩戸開・神楽舞】」
鈴音は優雅にステップを踏み、手にした神楽鈴を天に向けて、シャン、シャン、シャン……と、美しく振り鳴らしながら、神聖な舞を踊り始めた。
その美しい鈴の音が響いた瞬間、次元の狭間を高速で移動していた魔神クロノスの
『時空の核』が、「……ッ!?!?!?」
と、金縛りに遭ったかのように完全にその動きを停止させられた。それだけではない。魔神の魂が、鈴の音の快感によって
「あぁ、なんて美しい音色だ……。我が自爆など、どうでもよい……。ただ、この舞を見ていたい……」
と、完全にその闘争心を奪われ、ひよりの目の前の空間にガッチリと『座標を固定』されてしまったのである。
「よし、最高の舞台は整った! ひより、一気に書き換えるぞ!」
「いっけぇぇぇーーー、硯水さん!!」
私は神酒の霊力を乗せた万年筆で、原稿用紙の最後の一行を、力強く書き殴った。
『――世界の時間を狂わせし混沌の魔神は、神楽の鈴の音に魂を清められ、その自爆のエネルギーを、世界を修復する『純粋な因果の光』へと変換された。魔神は満足して元の次元へと還り、崩壊しかけた世界は、一瞬にして完璧な元の姿へと再生された。』
ドン!!!
と、最後のピリオドが打たれた瞬間。
原稿用紙が、世界のすべてを元通りにする「究極の再生の光」となって爆発した。
「おお……我が魂が、洗われていく……。美しい……この世界は、実に美しい……」
魔神クロノスは、この上なく晴れやかな表情を浮かべたまま、その巨大な時計の身体をキラキラとした黄金の光の粒子へと変え、崩壊していた灰色の空間を、元の色鮮やかなルミナスの街へと完璧に「修復」しながら、天の彼方へと消え去っていった。
図書室の窓の外には、再び、何事もなかったかのように穏やかに流れるルミナスの街の日常と、放課後の美しい夕焼け空が広がっていた。
世界の「時間と空間の崩壊」という、観測史上最大の危機を、「注連縄」と「お神酒」と「神楽鈴」という、我が神社の最高位の不条理コンボで完全解決したひより。
世界は救われ、セリアの持っていた紅茶も、一滴もこぼれることなく元のカップへと収まっていた。
「……え? ひよりさん、私、今、一瞬だけ『世界が灰色になった』ような夢を見ていた気がするのですが……」
セリアが不思議そうに首を傾げる。
「あはは、気のせいですよ、セリア様! ちょっとお疲れなんじゃないですか?」
ひよりは魔力を使い果たし、文机の上でヘロヘロになりながらも、満足そうな笑顔を浮かべていた。
「ふん、今回はウチの出番が少なかったが、まぁ、世界が元に戻ったなら良しとせなあかんな」
紅緒が元の刀の姿に戻りながら、少し寂しそうに呟く。
「皆様、お疲れ様でした。さぁ、世界が救われたお祝いに、ワシの神酒で、もう一回宴会といこうじゃねえか!」
神酒が大きな柄杓を掲げて笑い、付喪神たちは図書室の中で、楽しそうに賑やかな声を上げていた。
私は文机に向かい、この『第五幕』、いや、お主と我らの異世界放浪記の「第一部・完」にふさわしい文字を、表紙にしっかりと刻み終えた。
「硯水さん、今回のタイトルは?」
ひよりが頭を上げて覗き込んでくる。私は微笑み、表紙に力強い文字でこう書き込んだ。
『名もなき神社のデッドストック・第五幕~世界の時間を止めた魔神を、お神酒と神楽鈴で大満足させてお家に帰してみた~』
「ふふ、最高のエンディング(大団円)だ。さあ、ひより。次のお話のプロットを考えようか。お主の物語(日常)は、これからもこの世界で、どこまでも続いていくのだから」
「うん! よーし、これからもよろしくね、みんな! 私の大切な、実家の宝物たち!」
夕暮れ時のルミナス魔法学院の窓から、心地よい夏の風が吹き込み、ひよりの黒い髪を優しく揺らす。
「パパ、ママ。私ね、こっちの世界の神主として、世界の時間まで守っちゃったよ。だから……いつか呉の海軍の町へ帰ったら、私の大好きな焼き鳥屋さんで食べる鳥皮みそ煮の作り方、絶対……内緒で聞いといてね!」
少女の明るい笑い声と、千年の時を超えて集まった付喪神たちの賑やかな宴の歌声は、異世界の美しい夕焼け空の下、どこまでも、どこまでも響き渡っていった。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
今回は女子高生のお話です。
よろしくお願いします。




