98式噴進砲 その11(当てなくていい!)
やあやあポチです。
まだまだ派生するのかなぁ~?
お楽しみください。
開戦の日。
真珠湾には1隻の米空母もいなかったことは、この文章を読んでいらっしゃる方にはあまりにも有名なものであろう。
米太平洋艦隊にはそのころ、3隻の空母が配置されていた。
○エンタープライズ(CV-6)
ウェーク島へのF4F-3戦闘機12機の輸送を終え、真珠湾へ帰投中。
○レキシントン(CV-2)
海兵隊のSB2U-3ヴィンディケーター18機をミッドウェー島へ輸送中。
○サラトガ(CV-3)
ブレマートンでの整備を終え、サンディエゴへ到着したばかり。予定では翌日にウェーク増援用の海兵隊航空機を積んで真珠湾へと出航することとなっていた。
この三隻がいなかった理由が全て「島への航空機輸送」に関わっているのは偶然ではない。
艦隊をそれぞれの島々に常備できない現状において、航空機は防御兵器として有効であるという判断のためである。そう、既にアメリカは日本軍の侵攻に備えていたのだ。
ウェーク島。
小さな島である。太平洋の真ん中付近ではあるが、それぞれが小さな三つの珊瑚礁に囲まれた島々である。島というより、珊瑚礁の上へ細く土を盛ったような環礁である。ウェーク、ウィルクス、ピール。三つを合わせても大きくはない。
なぜこの島を日本海軍は狙ったのか?
再度地図を見ればなんとなく分かる、太平洋上の孤島(正確には三つの島)である。平和な時に民間飛行艇の中継地、せいぜいが米海軍の哨戒関連の基地にすぎない。これまではそれですんだ。ただその位置が強い。マーシャル諸島から1100キロ余り、ハワイから3000数百キロ。確かにハワイからは遠いが、アメリカとしてはウェークを太平洋への影響を西に、南にと広げる拠点と考えていた。そしてマーシャルから日本軍の陸攻がウェークへ届くということは?米軍がウェークを起点とすればウェークから航空作戦圏内に入るということに繋がる。いや、航空戦力だけではなく、潜水艦の基地として、艦隊の補給・整備ができるとすると、その価値はうなぎ登りである。だからこそ米軍は開戦直前にF4Fを急いで置く。そして日本軍は開戦するとマーシャルのルオットから陸攻を飛ばして潰そうとした。
両軍とも、ウェークを単なる珊瑚礁として見ていなかった。
開戦四日前、十二月四日には海兵隊のF4F戦闘機十二機は届いていた。
八日、マーシャルからの96式陸攻の第一次空襲の時には、たまたま四機は哨戒飛行中にあった。そして地上の八機のうち七機を喪失、一機も損傷した。飛行可能機は四機となった。米軍の災いは続く。その日の午後には事故により一機が損傷し、残存機は三機となる。が、翌九日には損傷機一機を修復し、戦える飛行機は四機となった。以後、飛行不能機からの部品転用、エンジン交換(所謂剥ぎ取り、共食いではあるが…)などによって航空隊はその四機という戦力を維持し続けた。
戦史ではよく「アメリカ軍(もしくはイギリス軍など…)は戦意が低下し、すぐに責任を放置し、使えない状態だった」などと宣っているが、どっこい、自己の責任を果たそうとしていた人々はどこにでもいたのである。
梶岡定道少将率いるウェーク島攻略部隊、旗艦は夕張。そして軽巡洋艦の天龍・龍田。その周囲には駆逐艦と哨戒艇。小さな島を取るためと考えればそれなりの戦力だった。(古いフネばかりだけれど…)
四機のF4Fは頑張った。本来載せれないはずの陸軍の爆弾を載せてまで、上陸しようとする日本軍と戦った。十一日、日本側は駆逐艦『疾風』『如月』をさえ喪失し、上陸作戦司令部は上陸をとりあえず断念した。
ではウェークを諦めたのか?
連合艦隊は攻略部隊に戦力補充という手段に出た。
次の攻略戦に真珠湾攻撃から帰投中の第二航空戦隊『蒼龍』『飛龍』が回された。
どこかの二次資料的な戦史には
「大きな仕事を成し遂げた旦那さんに、帰り際に買い物を頼んでいる奥さん」
という表現があった。笑った。確かにそうだ。
しかし、海軍としてはウェーク島攻略というのは、これからの戦いには必要なものであった。だから第二航空戦隊を送った。せっかく近くにいるもん…
コロッケを揚げたけど買い忘れたソースを、豆腐を買ったから足らない醤油を…
二十一日、第二航空戦隊による空襲が開始された。
せっかくのF4Fは一機ずつ数を少なくする。
そして二日後、ウェーク島守備隊は降伏し占領された。
ただ、第三十二号、第三十三号哨戒艇は確実な上陸のため海岸へ擱座せざるを得なかった。両艦とも旧駆逐艦を改装した哨戒艇である。上陸作戦用のかなりの改装を受け、これからの活躍、そして小艦艇であるからこその使い勝手の良さを海軍からも考慮されていたフネである。が、開戦時の初戦で失われた。
数日後。日本、海軍省軍令部。
ウェークの報告書が上がってきた。
誰でもそうだが、「成功談」は耳に嬉しく、「失敗談」は耳が痛い。
だから、無視したい連中が多かった、
だろう、だろうげど……。
上がその『無視』を当選と受け止めるか否かが、全てを決める。
報告書は整理されていた。淡々と書かれているように見えて、自分の責任をどうにか否定し、拒否し、そして自己の戦果だけが残っていた。
「何を言っているか分からん」
バサリと分厚い報告書が机の上を滑っていく。
「自分は頑張った、自分のフネは頑張ったしか分からん」
周囲は黙っていた。どう見ても怒っているよな。こっちに火の粉は来ないでね。ならば黙るしかない。
「敵戦力の分析不足…ですかね?」
誰かが言わないと先に進まない。いつも積極的に発言する一人が言う。
「それならば、いつもそうだ。だからこそこちらから出す戦力を強めにしている」
的確な答えがある。
上司はしばらく何も言わない。自由な発言、疑問こそがカギであり、大切だと思っている。まぁ、上司に恵まれている方なのだろう。
「沿岸砲…ですか?」
小さいつぶやきのような提案であった。誰かが言わないと先に進まない。
「それはちゃんと3隻の巡洋艦なりが対処してる」
別の人物が答える。
「私は、飛行機だと思ってますが、いかがです?」
周囲は再度報告書に目を通す。
『疾風』喪失、それは沿岸砲の影響であった。『如月』喪失、敵航空機による損害。 紙の上では、それぞれ別の欄に書かれており、二回目に2隻の哨戒艇を失う原因、哨戒艇が擱座上陸となるきっかけとなったのは…。
「敵戦闘機、何機だった?」
「当日、行動したのは四機程度と見られます」
紙は何度もめくられる。
「こちらは?」
答えなくても分かる。軽巡洋艦がいて、駆逐艦がいる。
それぞれに対空火器がある。
「撃ったんだろう?しかし、如月は沈んだ」
まだまだ初戦である、古いフネといえども損失の理由、必要でも沈んだ理由は明確にしたい。小艦艇といえども4隻の損害があった。現場はそれを許容した。そしてその後に中央では確認する。必要なものであったという空気が流れる。が、それを問う者もいる。
対空砲なり機銃なり…対抗するためのものはあったはずだ。
「爆撃機でさえない、戦闘機…」
「落とせなかったのか?」
肯定も否定も、ここでは何の意味もない。上司も黙ったままだ。
考える、その時、何が必要だったのかを…。
「落とせなくてもいいのでは?」
周囲はきょとんとする。真面目な反応だった。しかし、少し面白かった。
「フネに投弾する前に、投弾することを戸惑わせる、それでいいのでは?」
部屋がしばらくは静かになった。
「機銃で?」
「機銃でも高角砲でもいいのでは?」
「機銃の命中率ってどのくらいだった?」
「高角砲は何門あったかな」
ぼそぼそとした会話が続く。
少し考える。頭の中でイメージが広がる。自分が飛行機に乗って…爆撃をしようとしたら…(1回乗ってみるか…と思ったことはナイショ)
「もっと短い時間で、投弾位置で、あそこへ入ったら危ないと思わせるくらい、どしどしと弾を出せないのか」
誰もすぐには答えなかった。
そして、その時点ではそれだけだった。確かにそれだけだった。
報告書の最後に一行が増える。
『近接航空攻撃ニ対スル対空火力ノ増強ヲ要ス』
その一行は、軍令部だけに残ったわけではなかった。
対空火力を増やす。
言うのは簡単だった。
「機銃でも百載せるのか?」
「どこに載せるんですか? 第一、人員が……」
機銃を一挺増やせば、それだけでは済まない。銃架がいる。弾薬がいる。
海軍の主力対空機銃となりつつある九六式25ミリ機銃の必要人数は三連装時で9名。それに弾薬を運ぶ兵が多数いる。
艦は大きくならないし、急激に訓練された兵を増やすのは無理だ。
資料を見ていた一人が顔を上げた。
「陸戦隊のアレ……使えませんかね」
誰かが嫌な顔をした。アレを思い出したのだ。
「アレです。で、陸軍砲兵のやつ、六連装でしたよ、で、一斉射撃していた」
「……簡単に言うなぁ。でも考え方としては面白い」
「やってみる価値はあるな」
やっと上司が口を開いた。
「艦政本部に繋ぐか、それと平塚か…」
海軍では、すでに陸戦隊用として噴進弾の試験が続けられ、一部は採用されて太平洋各地に散っていた。その主力は『98式10センチ噴進砲』。いわゆる『筒』である。砲をほとんど持っていない陸戦隊ではかなり便利使いをされており、その消費量も多かった。もう一つ、量産され太平洋の諸島攻略にも使われ始めた、いわゆる『箱』(最初は『枠』とも言われていたがいつのまにかこちらの方に落ち着いた)、『零式20センチ噴進砲』である。
二つの発射台が並ぶ。
どちらも九六式25ミリ機銃の銃座を利用したものである。
一つには10センチ噴進砲の筒が4×3の12本。
もう一つには20センチ噴進砲の筒が3×3の9本。
どちらも空へと試しに撃つ。
一発。空へ白煙が伸びていく。飛んだ。間違いなく飛んだ。
「一発じゃ意味ないですね」
それぞれの発射台に散らばっていた兵が取り付く。
発射台の様子を確認し、温度を測る。弾体を補充し電線を繋ぐ。試作だから必要なことだった。
横一列の一斉発射、そして全弾一斉発射。試射は予定通り続いた。そして、分かっていたことではあったがある程度まとまって飛べば、空の一角へ短時間に弾を送り込むことはできる。
「精密に当てる必要はない」
これは大きかった。飛行機が通る場所に一定時間だけ危険な空間を作ればよい。そう割り切ればこの兵器は…。
「10センチでは数は多くできそうですが、飛翔距離が問題となります」
問題は炸裂する距離だった。燃焼時間を測っても高度1,000メートルには到達しない、なにせそんな兵器として作っていない。射角を変えてもさほど差が出ない。推進薬を増やす?
「20センチだと飛距離は十分ですし、威力もそれなり…しかし弾を補充する兵の負担が大きいです、重い」
狭いフネの中でアレを持って運ぶのは、そして筒に入れるのは確かに辛いだろう。連続した斉射ができない。
「ならば、陸軍の15センチ?」
「いや、うちにはすでに対空用の弾があります。8センチ(正確には3インチ、76.2センチ)、10センチ、12センチ、そして12.7センチ…以前より量産されてます」
すでにある弾頭。
すでにある信管。
すでにある生産設備。
新しく必要なのは、それを空へ運ぶ推進体だった。
「どうせロケット部分、推進体を新しく作るならば、なるべく早くできた方が良いですよ」
そう戦場は待ってくれない。『なるはや』案件なのである。
「何を推す?」
「量産の余裕があるのは12センチですが、12.7センチの方を推します。新しい方があっちにも良い影響がある」
で、発注された。
で、試射した。
で、人が集まった。使う側の人々が主であるが、検証のためには航空隊からも。
「使えるぞ、これ」
「いや、何だこれ、ひどいもんだ」
また撃つ。
「雷撃の時の距離は?高度は?」
「爆撃前にこんなのを浴びたら、逃げるしかない」
また撃つ。また撃つ。
次第に形が整い始める。九六式二十五粍三連装機銃の銃架。その上に機銃ではなく、二十八連装の筒が載る。最初から二十八発などという数は決まっていなかった、が、誰かが
「載せるだけ載せちまえ!」
と言った。最初、三十発が載った。そんなに載せてどうなるか、まだ誰も知らない。知らないからこそ、また撃つしかない。
白煙が発射架を包んだ。後方へ抜ける噴流も強かった。人間を置けない。ならばと、薄い鋼板を射撃員スペースに付ける。弾体補充員には耐熱服を着せ、ガスマスクをかぶせる。必要だからだ。
また撃つ。また撃つ。また撃つ。
白煙が問題となる。艦に載せる場所はどこに?
空母の場合は特に問題として扱われた。結局、舷側の後部寄り。飛行甲板より一段低い場所へ置くことになった。
『試製対空噴進弾発射機』
最初三十発だった筒は、外側二本が旋回時に何かへ干渉した、また防炎板との位置関係が悪かった、装填員が手を入れられなかった。結局、四列七本の二十八発となった。
まだ制式兵器ではない。射撃法も十分には決まっていない。が、数ヶ月の検証の結果として、それでも、実用試験を兼ねる形で第一航空艦隊へと持ち込まれた。
半年近く、太平洋のあちこちで、インド洋にまで出かけたフネはやっと母港へと帰り、その船体を休めていた。牡蠣落としと塗装の塗り替え、そして補充の航空隊、人員の定期異動。戦場と日常の境にその場はあった。
試作の兵器、それぞれ二基が搭載されたのは『飛龍』、そして『蒼龍』だった。
第二航空戦隊司令官の山口多聞は面白がった、新しいもの大好きな蒼龍艦長柳本柳作は使い道を考えた。そして常識人である(はずの)飛龍艦長の加来止男は少し呆れていた。
半年前にこの2隻はウェーク島へと行っている。
今度は別の島へ向かった。
慌ただしい、実に慌ただしい戦場である。
六月四日。
ミッドウェー。戦後、ヤマモトの意地で通されたとも称された作戦が始まる。
夜が明ける間もなく、日本側一次攻撃隊はミッドウェー島へと向かう。そして機動部隊は二次攻撃隊の準備を続ける。
その帰りを待つ間にも、米軍機は来た。最初は島からだ。雷撃機、爆撃機、そして無理矢理魚雷を載せた陸軍攻撃機。
零戦が迎撃し、高角砲が撃つ。もちろん機銃も撃ち始める。
試製噴進弾発射機の砲員も配置につく。
「まだだ、待つんだ」
これまで標的機を使った訓練はしている。砲架は止まらない。機体を追い続けても間に合わない。ならば訓練通り、敵機が通る場所へと先に向ける。
距離、仰角、方位。そして未来位置。
こちらに向いた機体だけに発射することを期待されていたし、班長はそれを守った。
「あ!」
誰かが叫ぶ。これまで低空ばかりを見ていた全員が指さす空を見る。
「回せ!」
班長が叫ぶ。未だ不十分、狙ってもいない。
「発射しろ!全部だ!」
二十八発が続けて飛び出した。飛行甲板の左舷後部が白くなる、そして煙は艦外へ流れていく。見張員が顔をしかめた。砲員からは、もう敵機が見えなかった。
数秒後。前方の空に炸裂が続く。あの爆撃機の左側ではあるが、二発、さらに数発。その爆発はまとまってはいない。それは標的機に対する試験でも分かっていた。
けれど、二十八発が一斉に白い花を開いた
「外れた!」
高空から進入していた米軍機が、その炸裂の後で機体を傾ける。進入方向が変わる。
投弾。
それは単に波立たせただけに終わる。
別の一機は再度高度を取ろうとした、爆撃のタイミングをまた探そうとしたのだろう。
そこに高角砲の砲弾が花開く。機銃が撃つ。さらに零戦が追う。
その日の戦闘は続く。
日本海軍にとって、噴進弾一基の試験結果などとは比較にならない出来事が起きた。
甲板の向こうで声がした。
「赤城、被弾!」
続いて、別の声。
「加賀も炎上!」
誰も返事をしなかった。
日本の大型空母がその終焉を迎える中で、発射架のそばでは、すでに次の弾が運ばれていた。
「赤城の機体、着艦します!」
「おう!」
飛行甲板は、真珠湾の時とはかなり違う様相であった。
「さっきの機体、レッコな!」
「え?」
「いくら帰ってくると思ってんだよ?!」
『飛龍』と『蒼龍』、この2隻で4隻分の帰還航空機を受け入れる。しかもあっちの方が定数は多い。いや、作戦前、航空機とパイロットが足りなくて陸上の現地基地から補充さえ受けている。損傷の多い機体を潰せばなんとなくなる。そして、パイロットは生き残る。
「責任なんか、上が取るさ」
「蒼龍は?」
「健在です」
「飛行甲板は?」
「使用できます」
「……二隻あるのか」
南雲はもう巡洋艦に避難している。第一機動部隊という名は残っている、が、そこには航空隊という戦力はない。…山口はどう動くべきか。
「ならば、もうひとあて行くか…」
米空母が1隻、炎上した。
この戦いの後、また戦闘詳細が軍令部へと届く。
「何が上手くいって、何が下手を出した…」
責任問題ではない。そんなのは、別の部署の問題だ。異動には関係あるだろうが…
「空母2隻損失、その他にもいろいろとあるが、まぁいい。で?」
「全ては偵察不足、監視不足と言えるでしょう。いずれにしても事前の敵戦力分析が十分でなかったかと…」
「その意味では、我が軍の作戦自体が稚拙であったかも?」
「山本大明神は、これで効力を失ったわけだ」
上司はうっすらと笑みを浮かべる。
「が、戦端を開いた以上、どうにかしないと…だれか意見は?」
「はい、『蒼龍』の報告です。いや、連合艦隊司令部はそれまで評価してませんが…間違いなく敵機を妨害してます」
「敵機を落としたとは言っていないよな?」
資料を繰りなおした別の部員が口を挟む。
「ですから…妨害です、赤城・加賀とほぼ同じ時に敵機の爆撃を受けてます。が…」
一呼吸置く。
「間違いなく妨害してます。で、蒼龍は助かっているのです」
報告書には
『発射装置ノ作動概ネ良好』
『発射煙大』
『飛行甲板上ノ視界ヲ妨害ス』
『噴流ニ対スル防護ヲ要ス』
『時限信管調整ニ時間ヲ要ス』
『射撃中ノ目標追随困難』
紙を置く。
「あ、別の報告書ですが…」
また別の部員だ。何かしらを思い出したらしい。
「第二水雷戦隊司令部からも報告が来ています」
「田中のところか?」
「ここ、ここです、タンカーです」
「タンカー?」
「機動部隊側ではなく、攻略部隊の方です」
全員がガサガサと資料をめくる。なるほど…
「『あけぼの丸』です」
前述のミッドウェーを巡る戦いの前、既にミッドウェーから出た4機のカタリナ飛行艇は攻略部隊率いる船団に夜間魚雷攻撃を実施した。夜間のことである。
そして『あけぼの丸』には、例の『試製対空噴進弾発射機』が載せてある。たまたまである。タンカーを守ろうとした、自艦でも対空能力を付けたいと、作戦前の入港時に旧式の8センチ高角砲、幾つかの小さな機銃。それは別のフネにも載せられていた。あけぼの丸だけに『試製対空噴進弾発射機』が載ったのは誰かの思いつき…その時はそのレベルのものであった。
「敵機!」
見えない。どこにいる? 音はなんとなく聞こえるが、見張員がエンジン音を拾い、そして、エンジンの排気炎を探す。照明弾が上がる。月明かりでようやくその影を追うことができた。敵飛行艇は低く、遅く、魚雷を落とすためにしばらく針路を保とうとしていた。
右艦舷の機銃が用意する、そして『試製対空噴進弾発射機』もその筒を向ける。
「投弾直前だけ、敵機に真っ直ぐ飛ばせなければいい」
「機首を向けさせるな!」
「撃て!」
二十八発が夜空へ上がる。カタリナはそれでもこちらに向いてくる。が、機首の直前で開く花、あちらからすればどこを飛んでいるのか分からない一瞬、機首がぐらりとした。
それでもこちらを狙っていた一機は来る。来る。
フネがぐらりと揺れる。やっとその進路を変えたのだろう。
が、魚雷は命中する。
で、爆発はしなかった。
命中時の角度が悪かったのだろうか、それとも投下時の高度? とりあえず信管が自分の役割を働かせなかったようだ。
フネは確かに傷ついた。が、航行は続いた。
まだ答えはなかった。
そして、また誰かの仕事が増えた。
いかがだったでしょうか?
飛龍も残したいけれど、実際に残したいのは蒼龍、加来艦長なのですよ。
『電探なくば…』
すばらしい先見性です。
でこのロケット兵器も上手く使ってくれるかと…
次も…なる早で 笑
ではでは。




