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クズ勇者と決別した俺は、魔王軍で働くことにした  作者: 趙雲


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第12話 魔王の継承

夕陽が雲間を抜け、先代魔王カイザーの机へ差し込んでいた。


夢から目を覚ましたレインは、凝り固まった首を揉む。


それから机の上に並べた木彫りの獣、小石の首飾り、乾いた野花を一つずつ集めた。


壊れやすい聖遺物でも扱うように慎重な手つきで、元どおり引き出しの中へ収め、きちんと鍵をかける。


続いてカイザーの日記を手に取ると、衣服の内側へしまった。


胸のすぐ近く。


心臓へ重なる位置だった。


すべてを終えたレインは窓辺へ歩み寄る。


長い間そこに立ち、魔王城の向こうに広がる大地を静かに見下ろしていた。


「ぐうぅ……」


場違いな抗議の音が、部屋の静寂を破った。


レインは空っぽの腹を撫でる。


そこでようやく、まともな食事を取らないまま、ほとんど丸一日が過ぎていることを思い出した。


部屋を出ると、記憶を頼りに巨大な魔王城の中を右へ左へ進み、どうにか厨房へ辿り着く。


残り物でも見つけて、適当に腹へ入れるつもりだった。


だが厨房の扉を開けると、木製の調理台の上に、蓋をかぶせた皿が置かれている。


レインは近づき、木の蓋を持ち上げた。


中には、少し焦げた魔獣の肉が一枚。


大きさがばらばらの茹でたジャガイモが数切れ。


その隣には、小さな椀に入った野草のスープが添えられていた。


すでに食事の時間はとうに過ぎている。


広い厨房にも、人の姿はない。


それでも料理はまだ温かかった。


誰かが、レインのためにわざわざ残してくれたのだろう。


レインは調理台の前へ腰を下ろし、木のフォークで肉を一口食べた。


「この切り方に……この火加減か」


咀嚼しながら、心の中で思わず突っ込む。


肉の表面は焼きすぎて固いのに、中は危うく生焼けだった。


ジャガイモは獣に齧られたように不揃いで、野草のスープに至っては塩を入れ忘れている。


調理には、明らかに慣れていなかった。


それなのに、レインは一口ずつ、ひどく真剣に食べた。


最後には、味の薄いスープまで一滴残らず飲み干した。


拙い料理の中に、作った者の不器用な誠意と、精いっぱいの心遣いを感じ取れたからだ。


「ありがとな、名も知らない世話焼きさん」


満足そうにげっぷを一つ漏らし、レインは心の中で顔も知らない料理人へ礼を言った。


腹が満たされると、今度は厨房の食料庫を歩き回り始める。


ほどなくして、隅に置かれた麻袋の中から、気になるものを見つけた。


表面に皺が寄った、萎びた豆の莢だった。


状態を見る限り、亜人商隊から高値で買い取った規格外品なのだろう。


一本手に取り、乾いた莢を割ってみる。


中に入っていた数粒の豆は、まだ十分に膨らんでいた。


レインの瞳が、次第に輝き始める。


「豆か……乾燥に強くて、育つのも早い。しかも根で窒素を固定して、土まで肥やしてくれる」


途端に、両手がうずいて仕方なくなった。


今すぐ。


この瞬間に。


何でもいいから土へ植えなければならない。


レインは豆を一掴みすると、先ほど完成した魔力温室へ向かって駆け出した。


……


透明な魔力抑制陣の穹窿の下は、暖かく穏やかな気候に保たれていた。


レインは慣れた手つきで袖と裾をまくり上げる。


そして見栄も何もなく地面へ這いつくばり、指で浅い穴を一つずつ掘っていった。


豆を等間隔に埋め、丁寧に土をかぶせる。


頬にも爪の間にも泥が入り込んでいたが、本人はまるで気にしていない。


口元には、抑えきれないほど楽しそうな笑みが浮かんでいた。


夢中で種を植えていると、温室の外から足音が聞こえてきた。


長衣をまとったアシュリーアが、魔力抑制陣の穹窿へ入ってくる。


泥の上へ這いつくばり、全身を土だらけにしている大賢者を見て、どんな顔をすればいいのか分からなくなった。


「おお、アシュリーア! ちょうどいいところに来た!」


物音に気づいたレインは顔を上げ、ごく自然に手招きする。


「早く早く。水魔法でこの畑に水を撒いてくれ。遠くまで汲みに行く手間が省ける」


「ついでに、隅にある邪魔な木の実の茂みも抜いてくれ。場所を取りすぎだ!」


その言葉を聞いた瞬間、アシュリーアの思考が止まった。


この空間では、すべての魔法元素が法陣によって排除され、抑え込まれている。


ここで魔法を使えと言うのか。


普通の魔法使いが無理に魔力を動かせば、外部の抑制力と衝突し、魔力回路を傷つける危険すらある。


この場所で問題なく術を使えるのは、魔界の王である彼女だからこそだった。


アシュリーアは何とも言えない顔で、小さな手を伸ばした。


ざああ……。


穏やかな雨が生まれ、レインが種を植えたばかりの土へ降り注ぐ。


続いて柔らかな風が地表を這い、隅に生えていた何の罪もない木の実の茂みを根こそぎ引き抜いた。


そのまま温室の外へ放り出す。


「完璧だ!」


レインは立ち上がり、満足そうに両手の泥を払った。


湿った土に包まれた種を見つめる。


その脳裏には、遠くない未来、蔓が温室中へ広がり、たわわに実をつける光景がすでに浮かんでいた。


自分の成果をしばらく眺めた後、レインはようやく我に返る。


呆れた表情を浮かべる魔王へ目を向けた。


「そういえば、わざわざ温室まで俺を捜しに来たんだろ。何かあったのか?」


アシュリーアは魔法を止めた。


「亜人商隊に動きがありました」


「彼らは、メフィストが求めた価格の抑制を拒否しました」


「さらに半刻後、代表者を魔王城へ送り、私と直接会談するそうです」


アシュリーアの声がわずかに沈む。


「人間の教会による封鎖を盾に、冬を前にした私たちが関係を断てないと踏んでいるのでしょう」


「そこで……大賢者のお知恵をお借りしたいのです」


「あの強欲な商人たちへ、私たちはどう対応すべきでしょうか」


「代表者ね」


レインは鼻で笑った。


「最後通牒を突きつけて、魔族の動脈からもう一口血を吸うつもりか」


その瞳が鋭く細められる。


「助言するのは構わない」


「ただし、この亜人商隊について、できる限り詳しい情報が必要だ」


「資金の流れ、主な取扱商品、商隊を率いる者の個人的な趣味まで。細かければ細かいほどいい」


「商いの戦場じゃ、情報こそが相手の命を奪う武器になる」


「すでに手配しています」


アシュリーアはうなずいた。


「セシリアが現在、裏の情報網から集めた亜人商隊に関する資料を整理しています」


「間もなく、大賢者のもとへ直接届けられるでしょう」


「それなら問題ない」


レインは手についた泥を拭った。


「会談の準備をしておけ、魔王陛下」


「俺があいつらに、本当の交渉ってものを教えてやる」


自信に満ちたレインの姿を見て、アシュリーアの心にもわずかな安堵が生まれた。


小さくうなずき、間もなく始まる会談の準備をするため、その場を離れようとする。


「待て」


不意にレインが呼び止めた。


アシュリーアが足を止め、振り返る。


レインは懐へ手を入れ、カイザーの日記を取り出していた。


そのままアシュリーアの前まで歩み寄り、古びた日記を両手で差し出す。


「吸血鬼どもに会う前に……これを読んでほしい」


その声は、低く穏やかだった。


「お前が用意してくれた部屋で見つけた」


アシュリーアの視線が、黄ばんだ日記の表紙へ落ちる。


最初は戸惑っていた。


だがすぐに、それが何なのか気づいたらしい。


いつも感情の揺れを見せない瞳に、はっきりと動揺が走った。


「行ってこい」


レインは日記を彼女の胸元へ押しつける。


そして背を向けると、再び自分の小さな試験畑をいじり始めた。


振り返らないまま、片手だけを軽く振る。


「読み終えたら、カイザーが抱えていた悔しさも連れていけ」


「そのうえで、いつか必ず――」


「魔族が失ったものを、利子まで付けて取り戻してこい」


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