豊原駅前観光案内所
土曜日の朝、豊原駅は旅行者で混み合っていた。
冬真は人の流れを避けながら東口へ向かった。
連絡通路のガラス越しに、駅前の街路樹が見える。赤やオレンジに色づいた葉が、秋の日差しを受けて鮮やかに輝いていた。
ミルカラ豊原の二階へ入ると、向かいの土産物店では開店の準備をしていた。店員が菓子の箱を積み直し、別の店員が床に掃除機をかけている。
冬真は案内所の入口で立ち止まった。
芽瑠萌が、少し先に来ていた。
「おはよう」
「おはよう。早いね」
「電車、一本早いのに乗れたから」
「俺も」
芽瑠萌は案内所の中を見た。
「富樫さん、いるかな」
「いると思う」
「じゃあ、今日──」
「うん」
アレクセイ・ヴォローニン。
背が高く、明るい茶色の短い髪。年齢はたぶん三十代。妙に愛想の良い笑顔。
西岸の道を尋ね、旭ヶ丘から橋と基地と空港を見下ろし、川上で炭鉱と山脈越えの道を探り、真岡で宝台への道と自衛隊の基地を観察していた男。
八月の偵察機。
馬に乗っているロシアの大統領。
真岡の歩道橋でヴォローニンを目撃してから、二人はそのことを何度か話していた。
二人が案内所へ入ったとき、富樫はカウンターの奥で、パンフレットの束を整理していた。
「おはようございます」
「おはよう。二人とも、今日は九時半からですね」
「はい」
冬真は鞄を持ち直した。
「あの、富樫さん。ちょっと……」
そのとき、背後から聞き覚えのある声がした。
「おはようございます」
冬真は振り返った。
入口に、アレクセイ・ヴォローニンが立っていた。
*
冬真は口を開きかけたまま止まった。
隣で芽瑠萌も固まっている。
いままさに富樫に話そうとしていた本人が、目の前にいる。
ヴォローニンは富樫を見て、軽く会釈した。
「お世話になりました。帰国する前に、一度ご挨拶をと思いまして」
「ああ、ヴォローニンさん。おはようございます」
富樫は穏やかに答えた。
「もうお帰りなんですね」
「はい。来週の便です」
「今回は長いご滞在でしたね」
「ええ。予定より少し長くなりました」
ヴォローニンはそこで冬真たちに気づいた。
「あ、先日は真岡でお会いしましたね」
「……はい」
「真岡はどうでしたか?」
「どう……」
ヴォローニンはいつもと変わらない笑顔を浮かべて答えを待っている。
冬真は、彼が肩から下げている茶色い鞄を見た。
真岡でも同じものを持っていた気がする。中に何が入っているのかは分からない。
そこに、富樫が口を挟んだ。
「いい記事になりそうですか?」
冬真は顔を上げた。
記事。
ヴォローニンは頷いた。
「はい。おかげさまで、必要な調査はほぼ終わりました」
「それはよかったです」
「では、そろそろ失礼します。今回もありがとうございました」
「こちらこそ。お気をつけてお帰りください」
ヴォローニンは冬真たちにも顔を向けた。
「それでは、お二人もお元気で」
「あ、はい」
「お気をつけて」
芽瑠萌が答えた。
ヴォローニンは軽く手を上げ、そのまま案内所を出ていった。
「あの、富樫さん……いまの人は」
「ヴォローニンさん? 旅行ルポライターの方です」
富樫はそれだけ言って、壁の時計を見た。
「では、二人とも着替えたら北樺太のパンフレットの補充からお願いします」
「あ、はい」
「分かりました」
二人は事務室へ向かった。
ロッカーの前で、冬真は鞄を下ろした。
「……旅行記事だって」
「うん」
芽瑠萌は制服のベストをハンガーから外した。
「だから、あんなにいろんなところ調べてたんだね」
「そういうことか」
冬真はボタンを留めながら、真岡の歩道橋を思い出した。
道路。貨物線。駐屯地の標識。
旭ヶ丘の双眼鏡も、川上の山道も。
「……なんだ」
冬真が言った。
「うん」
芽瑠萌は少し笑った。
「ずっと怪しいと思ってたのにね」
「な」
冬真も笑った。
「富樫さん、最初から知ってたんだな」
「そうみたい」
何週間も気になっていたことが、ようやく分かった気がした。
*
午前中、案内所には旅行者が何組か来た。
そのうちの一組は、本州から来た夫婦だった。これから鉄道で大泊へ向かい、着いてから市内を回る予定だという。
「駅からバスに乗りたいんですが、この時間で間に合いますか?」
夫が印刷した旅程表をカウンターに置いた。
冬真は列車の時刻を確認し、芽瑠萌は大泊のバス路線を調べた。
「この列車だと、乗り継ぎがちょっと厳しいですね」
冬真が言った。
「一本早い列車なら、余裕を持って乗り換えられると思います」
「そうですか。じゃあ、少し早めに出た方がいいですね」
妻が旅程表に書き込んだ。
芽瑠萌が旅程表の下の方を指した
「神楽ヶ岡公園にも行かれるんですね」
「ええ。景色がいいと聞いたので」
「それでしたら、港の北側から開港資料館の横の坂を上がってしまうと、遠回りになるので気をつけてください。駅からは少し歩くんですけど、エスカーを使うと楽ですよ」
「エスカー?」
「有料のエスカレーターです。亜庭神社のそばから150円で上れます。案内看板を見落とさないようにしてください」
芽瑠萌は大泊の街歩き地図を出して、エスカーの乗り場に印をつけた。
夫婦は礼を言い、駅の方へ歩いていった。
*
昼前には、栗色の髪をした若いロシア人女性が一人でやって来た。薄いベージュのスカーフを首に巻いていた。
「すみません。豊原の、いちばん大きい正教会に行きたいです」
「豊原ハリストス復活大聖堂ですか」
冬真がパンフレットを出すと、女性は頷いた。
「はい。生神女庇護祭なので。『チェリャビンスクの生神女庇護』のイコン、拝みに行きたいです」
女性はスマートフォンに聖母が白い布を広げているイコンを表示した。
二人で画像を見る。街歩きで正教会を見学したときには見た覚えがなかった。
「とても、とても、古いイコンです。革命のときに樺太に来たもの。今日だけ、聖堂の真ん中に出ると聞きました」
女性は続けてロシア語で何か説明したが、芽瑠萌には聞き取れなかった。コルチャーク、という言葉だけが耳に残った。
冬真は大聖堂の案内ページを開いた。祭日の礼拝とイコンの特別奉安について、日本語とロシア語で案内が出ている。
「ここですね。駅から歩いて行けます」
芽瑠萌が地図で道順を示した。
「Спасибо」
女性が礼を言った。
「Пожалуйста」
芽瑠萌が答えると、女性は地図を片手に歩いていった。
*
午後、菅原が二人を呼んだ。
「佐々木君、黒川さん。来週また現地確認、お願いできる?」
「どこですか?」
冬真が聞いた。
「鈴谷区。観光案内のページ、ちょっと古いところがあって」
菅原はパソコンの画面を見せた。
出てきた地図を見ると、ちょうど樺太縦貫道が西海岸道と分岐するJCTのあたりだった。冬真は小能登呂や真岡に行ったときのことを思い出した。
「この散策コース。バス停から公園までの道順と、案内板の位置を確認してほしい。去年、周辺の道路が一部変わったらしいんだけど、サイトの写真がそのままになってるんで」
「分かりました」
「写真も撮ってきて。こっちの米軍基地の方は撮っちゃだめだけど。あと、歩く時間も実際に測って」
芽瑠萌が画面を見た。
「ここ、バスで行けますか?」
「行ける。乗り換えなしで」
菅原は地図を拡大した。
「公園の入口が二か所あるんだけど、どっちを案内した方が分かりやすいかも見てきて」
「はい」
「昼過ぎに出ればいいと思う。戻ってから報告書は簡単でいいから」
冬真は頷いた。
「分かりました」
菅原は別の画面を開いた。
「それと、帰りに駅前の案内板も見てきて。文字が剥がれてるって連絡が来てるから」
「はい」
二人はメモを取った。
*
夕方、六十歳くらいの男性が一人で案内所へ来た。
灰色のジャケットを着て、肩から革の鞄を下げている。手には折り畳んだ地図を持っていた。
「すみません。白主土城について伺いたいんですが」
冬真は顔を上げた。
「白主土城、ですか」
「はい。西能登呂岬にある遺跡です」
冬真は聞いたことがなかった。隣の芽瑠萌も分からなそうな顔をしている。
「少々お待ちください」
芽瑠萌が端末を開くと、男性は持っていた地図をカウンターの上に広げた。
「ここなんですが、現地へのアクセスがよく分からなくて」
冬真が覗き込むと、樺太の最南端に歴史遺跡のマークと、『白主土城跡』という小さな文字があった。
端末に情報が出た。
「え、モンゴル?」
芽瑠萌が言うと、男性が頷いた。
「はい、白主土城はモンゴル帝国が樺太に勢力を拡大した時期に築かれたという説が有力です。いわゆる『北の元寇』です」
北の元寇なら、歴史の教科書にも載っている。
冬真は博物館で芽瑠萌と一緒に見た大きな地図を思い出した。
操作盤で『北の元寇』というボタンを押したときには、大陸からアムール川に沿って、樺太の南まで長い矢印が伸びた。
「こちらには、何かの調査で行かれるんでしょうか」
芽瑠萌が聞くと、男性は名刺を出した。北海道の国立大学の教授らしい。
「はい。東北アジアの中世史を研究していまして。文献上の地名の比定のために、現地状況の確認をしたいと考えています」
男性は地図を指した。
「樺太南線は泥川で終わっているので、レンタカーを使います。留多加の南までは縦貫道、その先は西能登呂道が繋がっていますが、肝心の最後の部分へのアクセスがよく分からない」
「岬自体は灯台と展望台が観光スポットになっていますね」
「そうです。ただ、遺跡は道から少し逸れています。車を停められる場所や徒歩でのルートについて、前回調査が十年以上前なので、最新の状況がわかればと」
芽瑠萌と冬真は顔を見合せた。内容が細かい。
「富樫さん、少しいいですか」
すぐに富樫が来た。
「白主土城ですね」
「はい。こちらへ行かれるそうなんですが、現地の詳しい状況が確認できなくて」
富樫はどこかに電話を掛け、メモを取りながら短くやりとりした。そのあと端末を開き、西能登呂岬周辺の拡大地図を印刷する。
「車はここの路肩に停められます。現地に案内板があって、遺跡まで歩くこともできます。ただ、雨のあとだと足元が悪いそうです」
「分かりました」
「観光客はほとんどいません。熊が出る可能性もあるので熊鈴を必ず準備してください。現地観光協会で猟銃を持ったガイドを手配することもできます」
「お願いしたいです」
「はい、明日ですか?」
「明日は豊原大学で文献調査をしますので、現地は明後日の午後になります」
「わかりました」
富樫の対応はテキパキとしていた。
「ありがとうございます。助かりました」
「お気をつけて」
「はい」
男性は地図を鞄へしまい、案内所を出る前に、もう一度振り返った。
「お二人は学生さんですか。機会があれば行ってみてください。面白い場所ですよ」
「はい」
「ありがとうございます」
男性は駅の方へ歩いていった。
冬真は芽瑠萌の端末を見た。樺太の南端が映っている。
「白主って、行ったことないよな」
芽瑠萌に聞いた。
「ないよ。大泊に行くまで南の海も見たことなかったし」
「俺も」
芽瑠萌が画面を少し拡大した。
「ここからだと、きっと北海道も見えるんだろうね」
「見えるだろうな」
冬真は地図の下の方を見た。
海峡の向こうに宗谷岬がある。
富樫が声をかけた。
「黒川さん、さっきの道路情報、菅原さんに渡してもらえますか」
「あ、はい」
芽瑠萌は画面を閉じた。
*
一週間後、冬真と芽瑠萌は豊原北部へ向かった。菅原に頼まれた現地確認の仕事だった。
バスを降りると、道路の両側に住宅が並んでいた。少し先には公園の木々が見える。その向こうでは鈴谷JCTの高架が交差し、遠くに鈴谷山脈と春日峠も見えた。
空は青く晴れ渡っていた。バスを降りると冷たい風が頬に当たり、芽瑠萌の吐いた息が一瞬白くなった。
冬真はスマートフォンの時計を見た。
「ここから測ろう」
「うん」
二人は歩き始めた。
最初の交差点を渡り、案内板の位置を確認する。
芽瑠萌が写真を撮った。
「これ、ちょっと見づらいね」
「木がかぶってる」
「夏だと、もっと見えないかも」
冬真はメモを取った。
公園の入口まで歩き、もう一つの入口も確認した。
「次は駅前だね」
芽瑠萌がそう言い、冬真は駅への道に目を向けた。大きな通りではない。
片側は普通の街並みだが、道の反対側には米軍基地の裏口があり、そこから高いブロック塀と有刺鉄線が続いている。
そのときだった。
冬真は基地の裏口のそばに、見覚えのある男を見つけた。
「あれ」
芽瑠萌が振り返った。
「どうしたの?」
冬真は道路の向こうを見た。歩道に二人の男が立っていた。
一人はアレクセイ・ヴォローニンだった。
もう一人は、四十代くらいの男だった。短い髪で、濃い茶色のジャケットを着ており、片手にハードカバーの本を一冊持っている。
ロシア人に見える。
二人は道端で地図を広げ、何かを話し合っていた。
ヴォローニンが基地の裏口の方を指さし、もう一人の男が頷く。何を喋っているのかは聞こえない。
冬真は足を止めた。
「……ヴォローニンさん?」
芽瑠萌も見た。
「ほんとだ」
二人の男は、こちらには気づいていなかった。
男が少し姿勢を変えたとき、手に持っている本のタイトルが見えた。
『国境のインテリジェンス 佐藤──』
表紙には、黒いスーツを着た男の横顔が大きく写っている。著者の名前は見切れたが、日本人の名前だった。
「国境? インテリジェンス?」
芽瑠萌が首を傾げた。
ヴォローニンが鞄から何かを取り出した。
開いた鞄の中に、別の本の背表紙が見えた。タイトルは『自壊する帝国』と読めた。やはり日本語の本。
「……何してるんだろ」
芽瑠萌が言った。
「さあ」
ヴォローニンは米軍基地から、遠くの山の方にかけて腕を大きく動かしながら何かを説明し、もう一人の男がまた頷いた。
相変わらず二人はこちらに気づく様子がない。
「──行こうか」
冬真が言った。
「うん」
二人は歩き出した。
少し先の交差点で、芽瑠萌がもう一度振り返った。
「……帰国するって言ってたよね」
「うん」
「来週って」
「先週の土曜だったから……今日帰るのかもしれないけど」
「うん」
「やっぱり、なんか変な人だな」
「そうだね」
信号が青になった。
二人はどちらからともなく手を繋ぎ、横断歩道を渡った。
*
夕方、二人は案内所へ戻って菅原に写真とメモを渡した。
「お疲れさま。どうだった?」
「公園までの道順は大丈夫でした。ただ、案内板が木で見えにくくなってました」
「なるほど」
菅原は写真を確認した。
「これ、管理してるところに連絡しておく。ありがとう」
「はい」
「歩く時間は?」
「バス停から七分くらいです」
「了解。サイトには余裕を見て十分って書いておこうかな」
菅原はメモを取った。
「二人とも、今日はもう上がっていいよ」
「分かりました」
ロッカーで着替える。
カウンターでファイルを並べている富樫に一言挨拶をして案内所を出ようとした時だった。
「あれ?」
芽瑠萌が止まった。
「どうした?」
芽瑠萌が向かいの土産物店を指さす。
「あ」
いつもの場所に、エトピリカがいなかった。
熊のぬいぐるみと、アザラシのぬいぐるみが並んでいる。トドもホタテも海鮮丼もある。
黒い鳥だけがいない。
「……売れたのかな」
芽瑠萌が言った。
「ついに?」
「ずっとあったもんね」
「六千六百円だぞ」
「誰か買ったんだね」
冬真は少し笑った。
「持って帰るの大変そう」
「大きいもんね」
そのとき、店の奥から男の店員が出てきた。
両腕に、大きなぬいぐるみを抱えている。
橙色の嘴。
白い顔。
黄色い飾り羽。
黒い胴体。
冬真は目を丸くした。
「……あ」
店員はぬいぐるみを台の上に置いた。
値札を整える。
六千六百円。
芽瑠萌が小さく言った。
「……同じの?」
「同じだよな」
二人はしばらく見ていた。
「……あれ、何個もあるんだ」
「そうみたい」
「ずっと同じやつがいるんだと思ってた」
「私も」
富樫が顔を上げた。
「何を見てるんです?」
「向かいのエトピリカです」
「ああ、エリカちゃん」
「エリカちゃん?」
「樺太エリカちゃん。けっこう売れていますよ」
冬真は富樫を見た。
「名前、あったんですか」
「ありますよ。観光協会のSNSでも紹介しました」
「知らなかったです」
富樫は笑った。
「毎週見てるのに?」
そう言って、書類を持って奥の事務所へ行った。
冬真はもう一度ぬいぐるみを見た。
芽瑠萌がスマートフォンで検索した。
「樺太エリカちゃん」
「うん」
「Xで暴言を吐き散らかすキャラとして、全国的に有名」
「えっ」
「全然知らなかった」
「ずっと見てたのに」
二人は笑った。
*
樺太エリカちゃんの前を通って連絡通路へ出ると、夕方の光がガラスに反射していた。
豊原駅の煉瓦の駅舎が見える。
人の流れは途切れない。冬物のコートに分厚いマフラーを巻いた観光客が歩き、制服姿の高校生が友達と笑いながら通り過ぎていく。
駅の構内放送が聞こえた。豊原空港行きのシャトルバスの案内だった。もしかするとヴォローニンもそのへんにいるのかもしれない。
「空港行きだって」
芽瑠萌が言った。
「うん」
「今日も人、多いね」
「土曜だからな」
芽瑠萌は、旅行鞄を引いて歩く人たちを見た。
「みんなどこに行くんだろう」
「さあ。札幌とか、東京とか」
「東京かあ」
「うん」
少し歩いてから、芽瑠萌が言った。
「私も、いつか樺太の外に行ってみたいな」
冬真は芽瑠萌を見た。
「……うん」
「雪が降らない冬って、どんな感じなんだろう」
「分かんないな」
「ね」
冬真は少し考えた。
「行ってみれば分かるのかもな」
芽瑠萌が笑った。
「そうだね」
二人はまた歩き出した。
連絡通路を抜けると、駅の中央改札が見えてきた。
冬真は少し前を歩く芽瑠萌の手を取った。
芽瑠萌が振り返る。
「どうしたの?」
「いや」
芽瑠萌は笑って、冬真の手を握り返した。
改札の向こうから、列車が到着する音が聞こえた。
二人は人の流れに混じって、地下街への階段を降りていった。




