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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。

 深夜の執務室に、陶器のカップがソーサーと触れ合う硬質な音が響く。

 ミシェルはギデオンと向かい合い、紅茶を飲んでいた。

 驚くべきことに、これはギデオン自らが淹れたものだった。


「どうだ?」


 茶葉の蒸らし時間など皆無のうえ、微妙なぬるま湯で淹れたお茶である。

 香りは薄く、お世辞にも美味いとは言えない代物だった。


「飲めますね」


 ミシェルは静かにカップを置き、決して不味いとは口にしなかった。


(さすがに、わざわざ淹れてもらった手前、不味いとは言えませんね)


 不器用ながらも自分を気遣ってくれるこの大男に対して、冷酷な言葉は吐けなかった。

 ミシェルは小さく息をつき、もう一口だけ生温かい液体を喉に流し込む。


「ふふ、そうか。美味いか」


 ギデオンはミシェルの言葉を最大の賛辞と受け取ったらしい。

 大型犬のように目を輝かせ、実に嬉しそうに鼻を鳴らした。

 そんな無邪気な姿を見せられては、ますます不味いなどと言い出せるはずもない。


「彼奴らは今頃、どうしているだろうか」


 窓の外の暗闇を見やりながら、ギデオンがふと呟く。

 妖精郷へと向かったティル達のことだろう。


「まあ、ふふっ。ミシェルが後ろで支えているのだ。何も問題はなかろう。絶対に安全に戻ってくる……もがっ」


 ギデオンの能天気な言葉は、途中で物理的に遮られた。

 ミシェルが身を乗り出し、彼の両唇を指でむにゅりと摘んだのだ。


「ふぁにふる……? (なにする……?)」


 ミシェルは極めて現実的な思考の持ち主である。

 目に見えない不確かなものや、根拠のない希望的観測は好まない。

 大丈夫だろうという楽観的な意識こそが、取り返しのつかない問題を生むことを熟知していた。


「遠征は、帰ってくるまでが遠征です」


「ふむ……まあ、そうか」


 ぱっ、とミシェルが指を離す。

 するとギデオンは唇をさすりながら、どこか不満げな表情を浮かべた。


「なんだ、終わりか?」


「終わりとは?」


「そのままキスでもしてくれ……いたたっ」


 言葉の途中で、ミシェルは無言のまま彼の頭をべしりと叩いた。

 ほんの少しだけ耳を赤く染め、鋭い視線を送る。


「馬鹿ですか、おまえは」


「うむ、そうだが?」


「何を堂々と仰っているのですか」


 呆れてため息をついた、まさにその時だった。

 執務室の重厚な扉が、そぉっと細く開かれる。


「みえう……ぎでおん……なかよちっ」


 隙間から顔を覗かせたのは、どうやらトイレに起きたらしいカイウスだった。

 目をこすりながらも、二人の様子を見て実に楽しそうに笑っているのだった。


【お知らせ】

※8/21(金)


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