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【連載版】加護なしの第八王女は、前世が社畜だったので王宮生活がイージーモードにしか見えない  作者: 茨木野


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【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。

 マデューカス帝国の次期皇妃、ミシェル。

 帝国は現在、補佐官ティルや賢者ピクシーら先遣隊を、妖精郷へと調査に向かわせている。


 大量の魔物がうごめく妖精郷への旅路だが、まったくと言って良いほど魔物と出くわすことはなかった。

 それどころか、食料も十全に積み込まれ、最新式魔道具を装備させている。


 過剰なほどの対策を練った状態で、ミシェルは彼女らを送り出したのだ。


 夜の帳が下りた執務室には、乾いたインクの匂いと、静寂が満ちていた。

 ミシェルは執務机の前に座り、淡々と書類仕事を片付けている。


 膨大な量の報告書類と決裁書類。

 羽ペンが羊皮紙を擦るカリカリという音が、規則正しく響いていた。


 コン、コン。


「帰れ」


 控えめなノック音が響いた直後、ミシェルは顔も上げずに短く告げた。

 こんな深夜に自分の部屋へやってくる人物など限られている。


 一番来る確率が高いのが誰か、ミシェルには痛いほどわかっていた。

 だからこそ、即座に帰れと言い放ったのだ。


 コツ、コツ、コツ。


「……珍しい」


 足音が遠ざかって行く。

 それはつまり、ミシェルの冷たい拒絶を、奴があっさり受け入れたということだ。


 ミシェルは羽ペンの動きを止め、無意識に小さく頬を膨らませた。


(まあ、良いのだけれど。帰れと言ったのだから。帰って、それで問題ないのだけれど)


 胸の奥底で、どうにもモヤモヤとした感情が晴れないでいた。

 そして、理不尽な怒りのようなものさえ静かに湧き上がってくる。


(何素直に帰っているんですか、馬鹿が)


 そのときだった。

 ガチャリ。


 背後で重厚な窓ガラスが開く音がして、生温かい夜風が室内に流れ込んできた。


「ミシェル、会いに来たぞ」


 楽しげな声とともにやってきたのは、ギデオンだ。

 ただ、入り口の扉からではない。彼はあろうことか、窓から侵入してきたのである。


「……おまえ、何をやってるんですか」


 ミシェルは細い指で眉間を押さえながら、呆れ返った視線を向ける。


「ふっ。帰れと言われたから、一度帰った」


 一度帰ったから、もう一度来てもいい。

 そう言いたいらしい、この図体ばかり大きい皇帝は。


「なぜ窓から入ってくるんですか」


「ふっ……。ドアから入ったら、きっとまた帰れと言われてしまうからな。窓から入るという意表を突けば、入れると思ったのだ」


 どうだと言わんばかりに、ギデオンが堂々と胸を張る。

 その姿は、テストの満点を自慢する無邪気な子供のようだった。


 ミシェルがここでもう一度帰れと命じる可能性も、十分にあり得た。

 だが、彼女は小さく息を吐き出し、静かに言葉を紡ぐ。


「まあ、もう部屋に入ってしまった状態で帰れと言っても、ここはミシェル……自分の女の部屋なのだから、帰れもなにもないだろう。そういう理屈で居座るつもりでしょ」


 やれやれと、ミシェルが呆れたように肩をすくめる。


「仕方ないので、良いですよ。居ても」


「え?」


「えってなんですか、えって……」


「いや、その理屈は頭になかった」


「っ、っ、っ」


 ミシェルは顔を真っ赤に染め上げると、立ち上がってギデオンの胸元や頭をべしべしと叩き始めた。

 硬い筋肉に当たって、小気味良い音が響く。


「ああ、そうか。俺に居て欲しかったのだな。素直にそう言えばいいのに。ふ……面白い女だ」


「黙れ」

【おしらせ】

※8/17(月)


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