142.
保守派たちは兵士たちに連れ去られていった。去っていく背中を見ながら、ミシェルは小さく息をついた。
(潰しても潰しても……きりがない……)
帝国へ嫁いでから今日まで、多くの政敵を排除し、あるいは懐柔してきた。
内部改革を進め、これで帝国は良い方向へ向かっていくと思っていた。
しかしこれが現実だ。
先代皇帝たちが残した澱は、いまだに根深く残っている。
(少し……疲れた。一体いつまで繰り返せばいいのか……)
軽い立ちくらみを覚えた。
それを支えたのは——ギデオンだった。
「ミシェル、すまない」
「え……?」
「俺がふがいないばかりに、おまえに迷惑をかけてしまっている」
「!?」
(頭でも打ったのだろうか、この人……)
しかしギデオンはどこも負傷している様子はない。
純粋に、皇妃の身を案じているようだった。
「本当に、すまない。俺にもっと頭があれば」
「ま、まあ……ないものねだりはしませんけれど」
(どうしてしまったのだろう、この人……。まるで人が変わったよう……いや)
今思い返せば、この大男はずっと自分に気を遣ってくれていたような気がした。
ギデオンがぎゅっと、ミシェルを抱きしめた。
「俺がおまえを支えるから」
「っ……」
不覚にも、胸が熱くなった。
一人で戦い続けているわけではなかった。
支えてくれる人がいる。
それが嬉しくて——ミシェルは柄にもなく、彼に身を委ねようとして……。
「ミシェル様ぁ~。倉庫の方で何か妙な……」
部屋の中で寄り添う二人の前に、ティルがやってきた。
「あ、あわ、あわわ……」
柔らかな空気はどこへやら、ミシェルは冷ややかな表情でティルを見やった。
「おまえ、学習という言葉を、母親の胎内に置いてきてしまったようですね」
「ひぃいい! て、天丼ぅ!」
「おまえ、正座」




