137.
「じゃーん、完成したよー!」
八宝斎が笑顔でミシェルの執務室に入ってくる。
その手にはガスマスクのようなものが握られていた。
顔を覆うマスク、そして背中にはボンベが取り付けられていた。
「凄いよこの魔道具! なにせ……」
べらべらと早口で、魔道具の仕組みを解説しようとする八宝斎を、ミシェルが穏やかに制した。
「これが優れたものだということくらい、語っていただかずともわかります」
「そう?」
「ええ、仕様書には目を通してありますので」
長時間の瘴気内での活動を可能とする、ガスマスクを、手に入れた。
「さらに! 防護服まで作っちゃいましたー!」
折りたたんであった服を、八宝斎は広げてみせる。
分厚い特殊な生地を使った服を前に、ミシェルとティルは目を丸くする。
「そこまで頼んでいないのですが」
「必要かなーって思ったから、勝手に作っちゃった!」
「そうですか。助かります」
ミシェルはふむ、とうなずく。
「製作コストはいかほどで?」
「試作品だもん、お金は取らないよ!」
(ひぇー! 八宝斎の魔道具っていえば、超高値で取引されるものですよ! それをただでゲットできるなんて、ミシェル様の詐術はとんでもないですよぉ~)
声には出さなかったが、表情には出ていたのだろう。
ミシェルがティルをにらみつけてきた。
(てぃるは賢い子なので、余計なことを言わない。てぃるは、学んだのですぅ)
もがもが、とティルが自分の口を手で押さえるのだった。




