136.
ティルはみっちりとお説教を食らった。
半日ほど。
「ひん……ひん……足の感覚がないですぅ~……」
「軟弱者」
ティルはミシェルの執務室に居た。
膝をがくがくさせながら、ミシェルの前に立っている。
(半日お説教ですんでよかったですぅ~……。命はないと思ってたのでぇ……)
「殺しませんよ。帝国の情勢がまだ安定していませんからね」
「それは帝国が盤石になったらティルはお払い箱ってことです!?」
「貴方次第です」
「ひぃん……鬼ぃ……悪魔ぁ……」
「なんとでもおっしゃい」
いくら罵倒されようと、ミシェルが動揺することはなかった。
「カイウス様に言いつけるですぅ」
「殺します」
「ひぃいい! 嘘ですぅううううう!」
(この人どんだけカイウス様に嫌われたくないんですかぁ~……)
裏を返せば、カイウスがいてくれるおかげで、自分の命が保たれていると言えた。
(ティルはカイウス様の側に居ないと命があぶないですぅうう……)
まだ幼いカイウスに恋心を抱いているわけではない。
しかしカイウスによって生かされているのもまた事実だった。
(あれぇ~? てぃるもうカイウス様と結婚するの、決まってるですぅ~?)
帝国で暮らしていくならば、生命維持装置が居なければいけなかった。
「おまえに大事なカイウスをやるわけないでしょうが」
「ででで、ですよぉねえ! わかってますよぉ! カイウス様はミシェル様が選んだ、良いお相手と結婚させるんですよね!?」
「おまえ、カイウスと婚約するのが、嫌なのか?」
(理不尽すぎない!?)
ミシェルは自分をカイウスと結ばせたいのか、そうでないのか、さっぱりわからなかった。
(てぃるは静かに暮らしたいだけなのにぃ~……)
「報告です。魔道具作りを、八宝斎に以来することになりました」
「ひん……」
「ふざけてるのですか?」
「はいぃい……あいたっ! このはい、は肯定のはいじゃないですよぉ!」
「わかってます」
「わかってるなら叩かないでぇ~……」
ティルは深々とため息をつく。
(就職場所間違ったかも知れないですぅ~……。ほかにハーフエルフのてぃるを雇ってくれるとこなかったけどもぉ……)
だから感謝はしているのだ。
一応。
「それにしても、八宝斎さん、引き受けてくれましたねぇ。お忙しいでしょう?」
(商会からの素材流入量や、在庫の動きから、八宝斎氏の仕事事情を割り出してたもんなぁ。加護なしでこれをやるなんて、信じられないですぅ)
本来ならば、多忙を極める八宝斎が引き受けてくれる可能性は低かったはずだ。
「快く引き受けてくださりましたよ。ピクシーの図面がよっぽど魅力的だったんでしょうね」
「ほんとにぃ? 仕事引き受けないと店潰すとか、そんな風に脅したんじゃ……あ」
その言葉終わるか終わらないうちに、ミシェルが立ち上がる。
そして、またも部屋の鍵を閉める。
「おまえは、優秀なのに、学びませんね」
「ひん……お手柔らかにぃ~……」




